第173話 ライラとの一日!
昨夜は、結局問題解決出来ずに食事だけで終わった。
手探りでの営業なので、都度改善していかなければならない。
とりあえずは、午前中は受付のみとして、午後は写真撮影にする。
シロとクロには申し訳ないが、三日間は『ブライダル・リーフ』の業務に専念してもらう。
ライラが店の手伝いたいと言っていたが、リベラやユイも増えてシロ達がいるので、人手は足りている。
そもそも、まだ幼いライラを常時働かせるのは俺自身あまり気が進まないので、シロ達が手伝う時は休んで貰うように言う。
「うん、分かった」
子供は好きな事をやっていて貰いたいが、ライラと同世代の子でも働いている子は、この街での沢山いるのも事実だ。
ライラの意見も聞いて、今後どうして行くかを決める必要もあるな。
「お兄ちゃんは、今日何するの?」
手伝いも無く暇なので、誰かと一緒に居たいのだろう。
「そうだな……俺といろんな所に行ってみるか?」
「うん!」
嬉しそうに答える。
まず、カンナに連絡を取り師匠に贈る服のデザインを受け取る。
「本当に、御願いしていいんですか?」
アラクネの糸を使用する事は伝えているので、心配のようだ。
「あぁ、問題ない。 デザインもこれでいいんだな?」
「はい」
本当なら、カンナとアラクネで直接デザインの打ち合わせをしてもらうと良いのだが、アラクネの技術は秘密になる為、連れていく事は出来ない。
カンナが冒険者ギルドに用事があると言うので、ついでにギルド会館まで一緒に行くことにした。
ギルド会館に着くと、別れの挨拶をしてカンナはギルマスの部屋へと、階段を上って行った。
ローラにも会おうかと思ったが、ライラが「仕事の邪魔しちゃダメ!」というので止める。
「今日は、どうしたのですか?」
受付嬢のユカリが声を掛けてきた。
「ついでに寄っただけだよ!」
「そうなんですか、てっきりライラちゃんの冒険者登録かと思いましたよ」
……狐人族は、何歳から登録出来るんだ?
そういえばそもそも、ライラは何歳なんだ?
「ライラ、冒険者登録出来る年齢なのか?」
「うん。 二九歳だから出来るよ」
……二九歳!
今の俺よりは、年上じゃないか!
ユカリが簡単に説明してくれたが、人間族の一歳は狐人族にすれば三歳となる。
寿命が長い種族の場合は、普通のことらしい。
ということは、人間でいえば大体一〇歳くらいってことか。
そうするとローラは、いくつになるんだ?
「お兄ちゃん、冒険者登録していい?」
「ライラがしたいんなら、いいんじゃないのか?」
「ありがとう!」
いい笑顔だ。
「そうですか! 早速準備しますね」
何故かユカリも嬉しそうに受付に戻っていった。
「手伝った方がいいか?」
心配になり聞いてみるが、「大丈夫!」と答える。
「ライラのレベルは幾つだ?」
「今、七だよ。 だけど、強くなりたい!」
「そうか、じゃあ今日はライラの冒険者試験に付き合うよ」
「やった~!」
無邪気に喜ぶ。
クエストが貼ってある板を見てみる。
俺の単独討伐は、受付には注意勧告として知れ渡っているので、ランクBは実質受注出来ない……
ランクAかSになれば、単独討伐でも可能であれば、早めに上に上がりたい。
「用意が出来ましたので、こちらにどうぞ」
イリアが、ライラに声を掛けて試験会場に向かう。
ライラも、緊張しているようだ。
ライラの実力が分からないが、ランクFであれば、スライム等だから合格は出来ると思う。
暫くするとライラが出てきた。
「おつかれ! くじは何だった?」
「スライム五匹だったよ」
俺と同じだな。
「ひとりで大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
武器が無いので武器屋に行き、ライラの武器を選ぶ事にした。
「どんなのが、いいんだ?」
「よく分からない。 メイン職業を『魔法士』にしたので、魔法主体で考えている……」
「そうか、じゃあ杖とかになるのか?」
ライラでも持てるような杖の中で、一番気に入った物を購入する。
街の外に出て、草原でスライムを探す。
さほど苦労もせずに、一匹目を発見した。
「頑張れよ!」
「うん」
初めてライラの戦闘を見るが、やたらと距離を取っている。
本当なら、あの距離が魔法士の戦闘距離なのか?
「雷弓!」
魔法名を叫ぶと、一直線に雷の矢がスライムに向かって行った。
続けて「雷弓!」と叫び、
スライムはその場で溶けている。
「おめでとう!」
嬉しそうに
よく考えたら普通の戦闘を見るのは、これが初めてだな……
アルとネロは、参考にならないから……
「ライラは、狐人の里でも戦闘をしていたのか?」
「うん、たまにだけど! いつも爺が五月蠅いので、なかなか外に出してくれない……」
……爺って言葉、初めて直接聞くと新鮮だな。
やはり、次期頭首候補だけあって大切に育てられているんだな。
その後も、順調にスライムを討伐していく。
のんびりしたこういう日常を、本来転移前に求めていた筈なのだが……
「お兄ちゃん、終わったよ!」
「御苦労様」
頭を撫でて欲しそうなので、撫でてやると九本の尻尾を左右に振っている。
街に戻る途中に、色々と聞いてみる。
「ライラは、何の属性魔法が得意なんだ?」
「ん~、雷属性や火属性は好きだよ!」
「どこまで、魔法は習得出来ているんだ?」
「初級魔法は全部覚えてる。 中級魔法の轟雷系や炎系も少しだけ覚えたかな」
「そうか、ライラは小さいのに凄いな!」
褒められると嬉しそうに笑う。
娘を持つというのは、こんな感じなのだろうか?
しかし俺の場合、中級魔法や上級魔法は習得しても、ユニークスキルの生贄にしてる事が多い為、使う機会があまり無い。
純粋に魔法を使えるライラが、羨ましいと思った。
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