第159話 宴の開始と不調の原因!

「皆様、ようこそゴンド村へ!」


 村長が挨拶をして、後ろに村人が並んでいる。


「こちらこそ、お世話になる。 慣れない事で、迷惑かけるかもしれないが遠慮せずに忠告してもらいたい」


 ゾリアスが代表して挨拶を返した。


「まぁ、なんだ。 交流も含めて適当に楽しんでくれ!」


 俺の言葉で、宴が開始された。

 後ろから手を引っ張られたので、振り返るとシキブ達冒険者ギルドの4人が居た。


「この村って、ドラゴンだけじゃないの?」

「あぁ、今はラミアにハーピー、コボルト達も居るぞ」

「信じられない光景だな……」


 ムラサキは、目の前の光景が信じられない様子だ。


「そうですね、種族に関係なく住んでいる所があるなんて……」


 イリアも同様だった。


「まぁ、気にするな。 この村に文句を言う奴や、襲う奴達がいたら俺が全力で阻止する」

「魔王二人にお前だろ、それにドラゴン……中規模都市の軍隊が来ても敵わないぞ!」


 トグルが呆れた様子だ。

 この間も似たような事を、ゾリアスに言われた気がする。


「あぁ、誰が来ても負けるつもりは無い」


 俺がいつになく真剣に答えた事が珍しいのか、


「本当にこの村が王都に知れたら、大事よ!」


 シキブも真剣に忠告してくれた。


「どうなるかも分からないのを、今考えてもしょうがないだろう」

「タクトは、相変わらずなのね」


 言い終わると、シキブが笑う。

 四人と別れて、他の場所に移動する。



「師匠~、あの子なんなの~」


 ネロが俺の所まで来て、半魔人の娘の事を聞いてきた。

 半魔人とは言え、吸血鬼の血が入っているから、ネロには分かるのか?


「あの子は、吸血鬼との半魔人だ」

「そうなの~、あの子弱っているの~!」

「どういうことだ?」


 ネロが言うには、吸血鬼としての血と人間の血が体の中で上手く融合が出来ておらず、身体への負担が大きいそうだ。

 通常は、吸血鬼の血が人間の血を吸収するので、このような事は起きないらしい。

 陽の光への抵抗力の無さも、それが影響しているようだ。


「ネロの言う通りじゃな。 あの娘、あと一年が限界だろうな」


 知らない間に、アルも傍に来ていた。


「治す方法はあるのか?」

「……あるの~! でも、あの子は嫌がるの~」

「どういうことだ?」


 身体の中で融合させるには、どちらかの血を優先させれば良い。

 ただし、人間の血は弱い為、必然的に吸血鬼の血を優先する事になる。

 そうすると今迄、血を吸う行為が無かったとしても、今後はその症状が出る可能性がある。


「そうか、本人の意思次第だろうな」

「タクトも【魔眼】で見てみろ」


 アルに言われて【魔眼】で見てみる。

 たしかに、魔力の流れや大きさがよく分かる。


「寿命はどこで分かるんだ?」


 アルに質問する。


「あぁ、それは頭の上に目盛りのような物があるだろう。あれが寿命ゲージと妾が呼んでいるものじゃ」


 目を凝らすと確かにそれらしいものが見える。

 目盛りは一年単位だとすると、確かに目盛りは一を切る位の場所にある。

 動く度に、身体の中で黒い光を発している箇所があるが、あれは何だ?


「アル、黒い光は、なんだ?」

「黒い光? 何のことじゃ?」


 ……アルには見えていないのか?


 正確な場所を確認するが、背中のあたりだと分かる。


「アルにネロ、一緒に来てもらっていいか?」


 ゾリアスと一緒にいる為、背中を見せて欲しいと頼んでみる。

 半魔人の娘はゾリアスを見るが、ゾリアスが頷くと背中を見せてくれた。


「……これは、『封魔石』じゃな」


 アルは一目見て、それが何であるかを教えてくれた。


「『封魔具』を製作する際に使用される石じゃが、身体に埋め込むとはな」

「取り除けるか?」

「なんとも言えん」


 【全知全能】に確認すると、回答は可能だ。

 しかし、かなり難しいらしく封魔石を取り出す際に神経を傷つける恐れがある。

 また、大量の出血がある為、その補充も必要になる。


 質問を変えて、今ゴンド村にいる者で除去作業は可能かを聞く。

 俺とアル、そしてネロにシロであれば可能だ。

 続けて作業分担と成功確率を聞く。

 主作業は俺が行い、サポートでアル。

 輸血はネロ、治癒関係はシロになる。

 成功確率は六〇パーセント。

 ……思ったより低いな。


 ゾリアスに、状況を話す。

 除去方法と成功確率も含めてだ。


「ナタリー、どうする」


 ナタリーと呼ばれた半魔人の娘は、即決で除去作業を決断した。

 薄々は自分でも分かっていたのだろう。

 救って貰えるなら、その方法に託すのが当たり前だ。


 俺は、村長に部屋を借りてシロを呼び、アルとネロに説明をして除去作業に入る。

 心配するといけないので、ゾリアス以外には伝えてはいない。

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