第158話 便利な乗物!
ゴンド村に着くと村長や皆に、移民の件の礼を言い、今から連れて来る事を伝える。
村では、迎え入れるための宴の用意までしてくれていた。
受け入れ準備は万端だな
村長とロイドを呼び出して、村長には金を渡す。
いつもの通り受け取ろうとしないが、今使わなくてもこれから必要な時があれば使ってくれ!と強引に渡した。
ロイドには、ゾリアスという獅子人が護衛の任務をしてくれるので、引継ぎの作業を頼む。
「獅子人ですか! 初めて会う人種の方です」
嬉しそうで、どことなく緊張しているのが分かった。
ふたりと別れて、宴の準備をしているモモに、
「見た目は怖い奴らだが、優しい奴だから子供達が怖がったらフォローしてくれ」
子供達の事が気になり頼んでみるが、
「この村の人達は、見た目で判断する人はもう居ませんよ」
……確かにそうだな
「あっ、これ忘れないうちに渡しておく」
道具屋で購入した『HP回復薬』『MP回復薬』『傷薬』『解毒草』『万能薬』を渡す。
「こんなに、いいんですか!」
「あぁ、気にするな。 子供も増えるから世話頼んだぞ」
「はい」
子供が増える事が嬉しいのか、いい笑顔だ。
モモの笑顔につられて、俺も笑う。
村にちょくちょく遊びに来ている、アルとネロも呼ぶ。
暇人なので、「すぐに行く」と言う。
……本当に、コイツ等はいつも暇だと言っているな!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ゴンド村から【転移】をして森の中央で待っていると、ゾリアス一行が見えてきた。
シロに位置を連絡していたので、迷わなかった様子だ。
「無事に着けたようだな」
「あぁ、冒険者達のおかげだ。 俺達だけでは多分殺られていただろう」
ゾリアスは、シキブ達に感謝していた。
「シキブ、ありがとうな!」
「いえいえ、どういたしまして! それよりあそこ見て!」
シキブが指さす方向には、トグルと双子の鬼人ザックとタイラーが居た。
トグルがなにか困っているようだ。
「どうしたんだ?」
「実はね……」
ここまでの道中、何度か魔物に遭遇した。
その度に、先陣をきって魔物に向かって戦う姿を見て双子達は、えらく感動したそうでトグルに弟子入りを御願いしているらしい。
「それは、面白いな」
トグル達の場所まで行くと、
「おい、タクト! 助けろ!」
「兄ちゃんからも、師匠に頼んでくれよ」
「そうだ! 頼んでくれよ」
……既に師匠と呼ばれているのか!
「お前ら、トグルはジークの冒険者ギルドで三番目に強いんだぞ、だからトグル師匠について冒険者とは何かを学べ」
「はい!」
双子の返事とは反対に、トグルが俺を睨むが笑い返す。
「頑張れよ、トグル師匠」
「タクト! あとで殺すからな!」
中央に戻り、大きく手を叩く。
視線が俺に集まる。
「ゴンド村では、受け入れの準備をしてくれている。 あまり遅れるわけにもいかない」
「けど、普通に歩いても一週間は掛かるわよ!」
シキブが疑問を口にした。
「あぁ、だから乗物を用意した!」
「……乗り物?」
皆が不思議に思った瞬間に、【隠蔽】を解いて2体のドラゴンを登場させた。
子供達はひっくり返り、戦闘経験のある者は条件反射的に身構える。
「驚かせて悪い。 ドラゴンに乗れば、十分もあれば着く」
シキブが俺の手を引っ張って、
「あれが、ゴンド村のドラゴンなの?」
「あぁ、そうだ! 比較的小さいのを連れてきた」
「話には聞いていたけど、これは……」
ムラサキも恐怖か緊張かは分らないが、咄嗟に構えた大剣を持つ手が震えていた。
「怖くは無いから、背中に乗ってくれ」
俺の言葉に反応して、ドラゴン達は首を地面につけて乗りやすい体勢を変えてくれた。
恐る恐る皆が乗る中、イリアだけは楽しそうに乗り込んでいった。
イリアには以前、「ドラゴンに乗りたい」と呟いた事を思い出したので、『ドラゴンに乗る』という報酬を提案していた。
ドラゴンには皆が乗るので、イリアは無報酬という事になる。
全員乗ったので、ドラゴンに飛ぶように合図をする。
「皆、飛ぶから落とされるなよ!」
ドラゴンは、一気に空へと羽ばたいた。
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