第157話 移動と護衛!

 スラムに行く入口の少し奥付近で、ゾリアス達は出発の準備が終わり待機していた。

 吸血鬼の半魔人は布を被っていた。

 ゾリアスに聞くと、本人は大丈夫と言っている。


 大人数を一度に【転移】した事は今までにない。

 この間の魔族をゴンド村へ送った時が最大だ。


 安全の為に【全知全能】に俺が転移可能な人数を確認すると、一〇人と回答があった。

 そうすると三回になるな。


「タクト、俺達は歩いていくから気にするな!」

「この人数だぞ! 無理だろう!」

「そうだな。 しかし、お前への負担が大きくなるだろう」


 【転移】を出来る限り秘密にしたいのは、お見通しか……

 しかし、常識的にこの人数での移動は無茶だ。


「厳しいかもしれんが、俺達が選んだ道だ」

「しかしだな!」


 ゾリアスの眼を見たら、それ以上は言えなかった。

 何か他の方法があれば、移動時間を短く出来る方法……あった!


「ゾリアス、街を出て少し行った所に、森があるだろうそこまで皆を連れていく事は可能か?」

「多分、大丈夫だ……」


 やはり、そこまでもこの人数だと厳しいだろう。

 ましてや、ゴンド村まで行くとなると自殺行為に近い。


「私達が護衛してあげるわよ!」


 後ろから声がするので、振り返るとシキブとムラサキ、トグルが居た。

 そして、何故かイリアも居る。


「どうしたんだ、お前ら?」

「俺とシキブは、そのなんだ……この間の詫びみたいなもんだ」


 ムラサキは照れて答える。


「トグルとイリアは、どうして一緒に来たんだ?」

「お前が、悪さしないように見張りをする為に来たんだよ!」


 ……なんで、相変わらず喧嘩口調なんだ?

 多分、照れ隠しなんだろうと思うことにする。


「私は、正式に依頼を受けていない護衛について、文句を言いに着いてきただけです」

「そうか、では俺がイリアを含めた四人に、指名クエストを発注すれば問題無いな」

「おい、タクト!」


 ゾリアスは、止めようとする。


「気にするな。 どうせ大した報酬を要求するわけじゃないからな!」


 四人を見ると口々に、報酬を言い始める。


「私は、領主様達のドレスでムラサキと写真を撮る事で勘弁してあげるわ!」


 シキブの報酬内容に、一瞬嫌な顔をしたムラサキが、


「俺は、ゾリアスとの戦いを希望する!」


 ムラサキらしい報酬だな。


「俺は、タクトとの戦闘での勝負だ!」


 トグルもムラサキに感化されたのか?


「私は、シロ様と一日過ごす…」

「それは却下だ!」


 イリアが全て言う前に断る。


「なんで、私だけ却下なのですか!」


 怒っているイリアに手招きをして、耳元で俺からの報酬を提案する。

 そもそも、イリアは冒険者でなく受付なので、関係無いのだが……


「それは本当ですか!」

「あぁ、満足いく報酬だろう」

「勿論です」


 とりあえず、クエストの報酬は了解したので、正式に依頼をする。


「クエスト内容は、ここにいる者達の護衛だ」


 正門からでなく、裏門から街の外に出ように指示する。


 ゾリアスが、「ハーセミッツ達が今朝から居ない」と言うので、昨夜のうちに金を持って街を出たと説明したら、納得していた。


 シロとクロに護衛の手伝いをするように頼んで、俺は独りでゴンド村に【転移】した。

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