第106話 一国一城の主!

 ローラから、フランが【転写】スキル持ちの可能性を教えて貰ったので、早速フランに連絡をする。


「フランか、悪いけど今から出てこれるか?」

「大丈夫だけど、急用?」

「あぁ、急用といえば急用だな。 俺の宿まで来てくれ」


 フランが急いで宿まで来た。

 相当慌てている。

 とりあえず椅子に座るように言うと、クロが出した飲み物を一気に飲んだ。


「それで、急用って何?」

「フラン、俺の所で働く気ない?」

「……はい? どういう事?」

「【転写】のスキル持っているだろう」

「えぇ、仕事で必要だったからって、なんでタクトが知っているの?」

「ローラから、聞いた」

「タクト、ローラさんと知り合いだったんだ……」

「あぁ、色々あってな」


 フランにとっては、仕事を貰っているローラの名前を出した事と、急用ということで変な空気になってしまった……


 気を取り直すように、机の上の写真機を置く。

 フランは、置かれた写真機をジッと見つめる。


「これって、写真機よね? どうしたの!」

「俺の所で働けば、これを自由に使っていいぞ」

「……えぇ~!」

「写真機での仕事がメインだ。 フラン自身で営業して仕事を取ってきてもいい」


 フランは俺の言葉より、写真機に触りたくて仕方がない様だ。


「触っていいぞ!」

「本当!」


 玩具を貰った子供の様に、色々な角度で眺めたり、ボタンやスイッチを触ったりしている。

 面白い光景だ。


 一通り触り終えると、


「私でいいの?」

「あぁ、フランに頼みたい」

「有難う御座います。 喜んで受けさせていただきます」


 丁寧にお礼を言う。

 親しき仲にも礼儀ありという感じか。


「早速、雇用契約だが」

「雇用契約って何?」

「働くにあたって、雇い主と従業員とで結ぶ契約だ」

「聞いた事ないよ?」

「いままで、どんな風に働いていたんだ?」


 フランによると、雇い主から期間を決められて、その期間内でも暇だと帰らされる。

 給料は日給制で、雇い主の言い値に近い。

 雇い主が儲かる様に出来ているのか?

 従業員は代わりがいるからどうでもいいのか?


「フランよく聞け!」

「はい」

「俺の方針は、よく働きよく休むだ!」

「はい」


 とりあえず、提案は簡易的な『四葉商会』の規約を提案する。

 ・八時間労働。

 ・週に一度は必ず休む。

 ・賃金は、一ヶ月で金貨三千枚。

 ・残業等は別途支払う。


「今後、改定はしていくが、これでいいか?」

「賃金ですが……」


 フランは、この街での労働者の平均で金貨二千枚程度だ。

 まだ、仕事もまともに出来るかも分からないのにそんなには貰えない。

 金貨二千枚でも貰い過ぎだと、賃金を下げる提案をしてきた。


 真面目だな。

 しかし、甘えて下げすぎるのは駄目だ。


 その他、フランの提案により最終的には、

 ・八時間労働。

 ・週に一度は必ず休む。

 ・賃金は、一ヶ月で金貨二千枚

 ・残業はフランの気分次第での追加。

 ・衣装は、賃金に含む。

 となった。


 これで俺も一国一城の主だな。

 フランに不憫な思いをさせないように頑張るか。


「ところで、タクトはこれからなんて呼べばいい?」

「そのままでいいよ。 変な肩書は必要無いから」

「分かったわ」



「主、提案が御座います」

「ん、なんだ?」

「フラン様に、四葉のシンボルマークを体につけて貰って、活動して頂くのは如何ですか?」


 たしかに、宣伝になるし認知度も高くなる。


「それいいな、フランもいいか?」

「えぇ!」


 協議の結果、腕章の様な物にした。

 俺は全身にマークがあるので、関係無いが……


「ところで、【転写】は何処でやるつもり?」


 そうか、やる場所が確かに無いな。

 部屋を暗くして、毎回やるのでも良いが……空き家でも探すか。

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