第105話 写真機の取り扱いについて!

 部屋の前でノックをする。


「ローラ居るか?」

「いるぞ~!」


 承諾を貰い、部屋に入る。

 あいかわらず散らかっている。


「用件はなんだ?」


 余計なやり取り無しだな。

 合理的と言えば合理的だが……


「まだ秘密だが、領主が結婚する事になったので写真機を貸して欲しいのと、新聞社を紹介して欲しい」

「別に構わんが、それがタクトと何の関係があるんだ?」


 俺は、『四葉商会』として依頼を受けた事を説明する。

 そして、写真機の現像方法について聞く。


「別に良いが、写真機は一つしかないから、別の場所でする必要は無いぞ?」

「それは、俺が写真機を追加で作るつもりだからだ!」

「そんな簡単には作れる物ではないぞ。 高額過ぎて、私でも分解するのも躊躇する位だからな」

「それは、問題無い。 量産する前に試作機が出来たら、その内の一つはローラに研究用として譲る」

「それは、本当か?」

「あぁ、本当だ」


 ローラとは合意したが、現像という工程が無い。

 写真機の中にある『精霊石』と呼ばれる石に触れながら【転写】というスキルを使うと、紙に画像が移される。

 基本的には、暗い所で作業をした方が良いと言われたらしい。


 【転写】のスキルは持っていないな……

 そこまで必要なスキルでも無し。


「タクト、フランという娘と知り合いだろ?」

「あぁ、そうだ。 ゴンド村からこの街に一緒に来たからな」

「私の仕事で、彼女に文字写しの仕事を出しているから、彼女なら【転写】が使えるはずだぞ」

「それ、本当か?」

「あぁ、間違いない。 写真機にも興味を持っていたからな」


 そうか、フランが居たか。

 灯台下暗しだな。

 しかし、フランが写真機を使っても、それが仕事になるのか?

 俺の場合は、商人ギルドとして売り込むつもりだったし……


 よし、フランを『四葉商会』で雇おう。

 そして、写真を新聞社や必要な所に売れば、商売として成り立つか!


「ローラ、いい情報ありがとう」

「写真機に比べれば、安い物だ!」

「ついでに、新聞社の方も御願いできるか?」

「あぁ、すぐには無理だが連絡はしておく」

「助かる」

「シキブ達の結婚式の写真だが、いくらで売ったんだ?」

「あれは、金貨三千枚だ」


 一泊の宿代が、金貨五〇枚。

 一般的な店の食事は、金貨一〇枚~二〇枚位だ。


「高額だな!」

「確かに、そうだが写真を載せるだけで売り上げが全然違うから、元は取れるのだろう」

「そうか、確かにそうだな。 売り上げが上がれば安いものか……」


 相場が大体分かったので、今後の交渉はしやすいな。


「新聞社は、どうやって原稿を運んでいるんだ?」

「それは、私が開発した『物質転移装置』を使っている!」

「物質転移装置?」

「簡単に言うと転移魔法の応用だ。 基本、生物以外の物体であれば、装置間での転移が可能だ」

「便利な装置だな」

「その分、高額だ」

「その技術料は高いのか?」

「こればかりは、タクトでも教える事は出来ん」

「まぁ、そうだろうな」

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