第62話 商人ギルド昇級試験-3!

 時間にして二〇分程度か。

 トイレから試験場に戻ると、ロックスが笑いながら話し掛けてきた。


「棄権しますか? まぁ、『ドラゴンの髭』では仕方ありませんよ。ハハハハ!」


 この小馬鹿にした態度には、さすがに怒りを覚えた!


「おい、ロックス! うるせぇぞ、試験官が受験者を馬鹿にするのが、商人ギルドなのか!」


 脅しながら、目の前で【アイテムボックス】を使い『ドラゴンの髭』を三本出してロックスに投げつけた。

 既に【複製】で増やしてある。

 一本でも合格だが、力の差を見せ付ける為に、三本共投げつけてやった。


 いきなりで避けられずに、ドラゴンの髭の下敷きになる。


「これで、文句ねぇだろう!」


 下敷きにされたロックスが、驚いた顔をしている。


「……いったい何処で!」

「持っていたが、それよりもトイレに行きたかったんだよ!」

「……まだ、本物とは限りません」


 鑑定士が、その状態のまま鑑定を始める。


「ひっ!」


 鑑定士が悲鳴を上げた。


「やはり、偽物でしたか!」


 下敷きにされた状態でも、ご満悦な顔で俺をみる。


「いえ、本物です。しかも三本共、ドラゴン族最強と言われる『グランニールの髭』です」

「そんな、馬鹿な!」


 鑑定士の言葉で、ロックスの表情が一転する。


「ふふ、合格だな!」


 ローラが笑いながら言う。

 近くまで来て、小声で話す。


「しかし、本当にお前は面白い。研究材料としては申し分無いぞ!」


 それは、誉め言葉なのだろうか…

 そう言うと、首を捕まれ引き寄せられる。


「タクト、お前【転移魔法】を使ったな!」


 耳元で囁かれた。

 どうやら、シロの転移魔法に関しては計測器で調整終わっているが、俺の転移魔法では反応するようだ!


「はははっ!」


 誤魔化す事は出来ないので、笑うしかなかった。


「安心しろ、秘密にしておいてやる」


 完全に脅しだよな。

 ローラの玩具になるの嫌なんだが……。



「では、引っ越しの準備をしている間に、ギルドカードの発行を頼む」

「えっ、いやスグには」

「あれ? 出来ないのか!」


 脅しをかける。


「いえ、すぐに対応させて頂きます」


 ローラに部屋まで案内される。

 部屋の中は見事に散らかっている。

 研究者のイメージといえば、イメージ通りだが……。


「どこまでが持ち物だ?」

「これだけだ」


 トランクと二メートルほどの棚を指差していた。


「他は全てゴミだ!」


 やはり俺には理解出来ない人物だ。


 荷物を【アイテムボックス】にいれる。

 普通なら掃除していくのだが、ロックスへの嫌がらせも兼ねて、部屋はこのままにしておくことにした。


 受付に行くとロックスが立っていた。


 「こちらになります」


 ギルドカードを受け取った。

 ランクSだと金色なのか!

 なんか豪華だな!

 ランクSは、街の監査も出来るからあえて威厳のある色にしたのか?


「タクト様、御相談なのですが先程の『ドラゴンの髭』を、お売り頂くことは出来ないでしょうか?」


 希少価値の高いドラゴンの髭は、売れば莫大な金になるのは分かっている。

 しかもグランニールともなれば、一攫千金も夢でない。


「駄目だ!」

「そこをなんとか!」

「ロックス、お前しつこいぞ!」


 ロックスは何か言いたそうだったが、俺が言わせない雰囲気にした。


「おい、行くぞ」


 扉の前に居るローラに急かされる。


「いつまでギルマスで居られるかは、俺次第って事を忘れるなよ!」


最後に、ロックスを脅しておく。


「……はい」


「じゃあな!」


 帰る挨拶をして、商人ギルドを後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る