第63話 何故、今まで気がつかない!
商人ギルドでギルド登録をして冒険者ギルドに戻る道中、後ろから声を掛けられた。
声を掛けたのは、先程の試験で試験官をしていた『鑑定士』だ。
「タクトさん、突然ですいませんが、今少し御時間ありますか?」
「別にいいぞ、ローラも一緒でも構わないか?」
「あの出来ればふたりっきりで御願いしたいのですが……」
ローラはニヤニヤしながら「先に戻っている」と言って去っていった。
冒険者ギルドに戻って、変な事言わなければいいんだが……
とりあえず、立ち話もなんなので近くの店に入った。
『鑑定士』の名前は『カンナ』と言い、王都よりこの街に派遣されている。
各ギルドや領主の依頼で『鑑定』をする事が仕事らしい。
「昨日今日と、立て続けにお疲れ様でした」
よく見ると、確かに昨日冒険者ギルドにも居たような気がする。
「いや、こちらこそ仕事増やしたみたいで、スマン」
「いえいえ、貴重な場面に立ち会えて面白かったです」
カンナは、笑いながら答えた。
「それで、話ってのは?」
カンナは、一気にテンションが下がったかの様に下を向き暫くしてから、
「タクトさん、スイマセン」
いきなり立ち上がり、頭を下げ謝罪された。
周りの他の客や従業員も一斉にこちらを見た。
何のことか分からない俺は
「とりあえず、頭を上げて説明してくれるか?」
「実は、先程商人ギルドでランク試験のスキル確認の際に、興味本位でタクトさんのステータスも閲覧してしまったんです……」
えっ、それってバレたって事。
確かに、俺が他の人のステータスが見る事可能であれば、同等のスキル以上であれば逆に俺のスキルは見る事も可能だ。
何故この事に気が付かなかったのか…
完全に失念していた。
「ステータスを見る事自体は犯罪行為ではありません。 私もたまに興味のある冒険者さんのステータスを見たりしてますし……」
鑑定士は、たまに人のステータスを確認したりしたりするのも仕事らしい。
実際、王族や貴族の婚約相手にふさわしいかの事前確認を、鑑定士がする事もあると説明された。
物だけでなく、人も鑑定しているのか。
「それで、別に黙ってても良かったのですが、ステータスがステータスなので、バレた時に報復されるかと……」
なるほど、興味本位でステータス覗いたら想像以上のバケモノだった為、ビビったという事か。
「出来ればで無く、絶対に口外はして欲しくない。 守ってくれるなら危害を加える事はしない」
少し強めでも約束させないと、カンナにも余計な問題が飛び火する可能性も考えられる。
カンナは何回も頷き「守ります」と答えた。
「俺のステータスを見れる奴って、たくさん居るのか?」
今後の事も含めて質問をする。
「そうですね、この街では私だけだと思います。 基本的にレベルが高ければ、覗けます」
なるほど! しかし、これはまずい。
対策をしないと今後、面倒なことになるな……
【隠蔽】のスキルを【オートスキル】にセットしてみた。
「カンナ、ちょっと俺のステータス覗いてみて」
「いいんですか?」
俺は頷くと、カンナはステータスを覗く。
「あれ? なんで、覗けない!」
よし成功だ。
カンナは何故だか分かっていないが、暫く考えて【隠蔽】を使った事を理解した様子だ。
「【隠蔽】であれば、ランクSSSでも見れませんね!」
カンナのお墨付きを貰ったので、多分大丈夫だろう。
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