第9話 中級神登場!

(タクト、エリーヌがとんでもない事したみたいで、ゴメンなさいね)


 話をしている相手は、『中級神:モクレン』だ。


(何とかなりませんか?)


 一応、【神との対話】では敬語は使える。

 エクシズでのみ【呪詛】の効果が適用されるようだ。


(ゴメンなさいね。こればっかりはどうしようも出来ません)


 ……期待していた分、落ち込みは激しい。


(酷な話だけど、現状で頑張って貰うしか無いのです)

(無職で敬語が喋られないって、厳しく無いですか?)

(そうですね、通常生活するうえでは、かなり厳しいかと思います)

(でしたら、何故)

(本来【呪詛】と言うのは必ず『解除方法』とセットでかけるのが常識になります)


 その通りだ。

 解除方法が無いのであれば『呪術師』が無敵だ。


(エリーヌは無意識に施した為、『解除方法』が本人でも分からないのね)


 ……ポンコツ女神め!


(思いだして貰う様に努力はしているみたいですが、本当に偶然的に『施術』をしたので、どの内容を『解除方法』にしたのか思い出せないみたいなの)


 ……絶対に思い出す努力なんかしていない。

 俺には直感的に分かる。


(状況は分かりましたが、その【呪詛】を施した本人はどこに居ますか?)

(別室で、今も必死に思いだそうしてますよ!)

(モクレン様、内緒でその部屋を覗いて頂けますか? そしてその状況を私にも見せて頂けますか?)

(はい、構いませんよ)


 俺の目の前に映像が流れた。

 エリーヌは寝転んで菓子を食べながら、なにやら雑誌を読んでいる。


 ……思ったとおりだ。

 アイツが真剣にやっているとは思っていない。

 突然、エリーヌが消えて映像が乱れた。

 モクレンの仕業だろう。

 暫くしてエリーヌと、もうひとりの女性が映し出された。

 もうひとりの女性は、モクレンだと思われる。


(御見苦しいところをお見せしました)


 焦るモクレンと、意気消沈のエリーヌ。


(とりあえず、タクトにはこのまま続けて頂くしかないのです)


 ……ハードルが上がりすぎだ。

 人間関係を上手く築くことが、最低条件の世界で第一印象から最悪って……詰んだかも。


(タクト、無理は承知で御願致します。今後出来るだけ、エリーヌのフォローは致しますので)

(モクレン様に神の変更は出来ないのですか?)

(ちょっと! タクト、それは酷くない!)


 大声で反論してきた。


(私としても、そこのポンコツな神より優秀な神に従いたいと思います)

(……また、ポンコツって)


 エリーヌが怒っているが、そんなのは関係ない。


(残念ですがそれは出来ません。エリーヌを神として布教頂く様御願い致します。それに……)


 モクレンは微笑みながら、


(転移の際、タクトも上手に恩恵ユニークスキルを手に入れてますよね)


 ……脅されているのか?


(私は忘れっぽいので、すぐに忘れてしまいますけどね)


 モクレンの笑顔が怖い。


(もう何を言っても無理なのですね)

(分かって頂けたのですね!)


 笑顔で人を殺すってこういう事なんだな……。

 落ち込んでいる俺に対してエリーヌが、嬉しそうに話す。


(さすが、タクト! 物分かりいいね)


 いや、お前が言うなよ。


(エリーヌは後で、私の部屋に来て頂戴ね!)

(は、はい!)


 エリーヌも説教されるのだろう。

 ざまあみろ! 胃に穴が開くまで説教されろ!


(わざわざ、御越し頂いてありがとうございました)


 モクレンにお礼を言う。


(いえいえ、こちらこそ部下の管理不足で、迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした)


 返礼する。


(とはいえ、これでは神に対して納得出来てませんよね?)


 納得なんて到底出来るものでもないが、どうしようもない。


(話を聞く限り、エリーヌの眷属をお供にしましたよね?)

(はい、先程の白猫ですね)

(お詫びと言っては何ですが、前任者のガルプの眷属がまだ三匹そちらの世界に残っています。そのうちの一匹をお供につけさせます)


 ……白猫の次は黒犬か? まぁ、断る理由も無いので受け取るとする。


(ありがとうございます)


 再度、お礼を言い頭を下げる。

 さすが、中間管理職。『アメとムチ』の使い方を心得ている。


(では、頑張って下さいね!)


 モクレンは笑顔で手を振り、映像は切れた。


「大丈夫ですか?」


 二本尻尾の白猫が、心配そうに声をかける。

 エリーヌの眷属なので、それなりに感じ取れるのだろう。


「ありがとう!」


 白猫の頭を撫でる。

 とりあえず、ガルプの眷属と合流してから考えるか!

 それにしても、この現実を受け入れて、立ち直るのにどれ位かかることやら……。

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