誰もが知る昔話を下敷きにした物語。
怪談であり人情噺であり、そして──。
『分福茶釜』の話は、昔ばなしの定番とも
言える、ちょっと滑稽で楽しさのある
めでたしめでたしで終わる 怪異譚 だが
狸が紆余曲折の末に 茶釜に化ける 芸を
見せて終わる。
でも、本当に?
狸は里山にいる、所謂『獣』であり、嘗て
里山はきっかり『里』と『山』とに
分かれていた。
里は人間の領域であり『山』は神や妖の
テリトリーであったものが。
作者の優しい視点で描かれる狸の悲劇は
そこまで心を抉るものではないが、現実は
更に容赦なく、今も何処かで殺伐とした
悲劇が生じているのだ。
これは単なる昔話ではなく、恰も
禅問答の様である。
如何に生きるのか。
この有象無象の世界の中での自らの立ち居
振る舞いは、如何に在るべきなのか。
少なくとも性急な判断と行動が最善では
ない。それがわかるだろう。