元ゲームプログラマーの俺は異世界で何とか生きてます。

小豆餅

第1話転生

俺の名前は宇都光太郎。23歳にして過労死した元ゲームプログラマーである。

ブラックな仕事環境で文句一つ言わずに社畜魂で働きまくった。それもゲームプログラマーに憧れていたからだ。それがこんな形で終わりを迎えるなんて。


今、俺の目の前には自称神様が立っている。後光がさしてるから多分本物。

しかもやたらとすごいオーラを感じる。言外に私神様ですアピールが凄い。

「お主、何か失礼なこと考えておらぬか?」

「いや、神様のオーラが凄いなと」

「そうか?そんなに凄いか?」

「ええ」

俺がそう言うと神様は何やら嬉しそうにニヤつく。前言撤回、この神様すごくないわ。おだてれば何でもしてくれそう。


「宇都光太郎、お主は死んだ」

突然の死亡宣告。そう、俺は死んだ、らしい。

神様によると働きすぎよる過労によって心臓麻痺で死亡。寝ている間の出来事で俺は死んだことに気付かずに死んだ。

「お主は本来84歳で死ぬ予定だった。しかし、神でさえも未来を確定させることはできない。たが、予定というのはほとんどが予定通りに行くものだ。」

そして神とは絶対の存在でなければならない、と神は締めくくる。

つまりは予定通りに行けなかった者の救済措置として、違う世界で新たなる人生を歩ませるという事だ。


「なるほど、つまりは夢の異世界転生ですね?」


ゲームプログラマー、漫画家、ラノベ作家。アニメに精通する者やアニメオタクなら一度は夢に見る異世界転生。それが今自分の身に起こっていると考えると興奮が抑えられない。


「お主には前世での特技を一つ、異世界での能力として授ける」

「能力...」

「能力の詳細は行ってからのお楽しみじゃ」

それで説明が終わったのか、神様は俺に向かって指を一振。

「お?」

すると、今まで着ていた服が異世界風の物に変わっていた。

「そのままの服装だと目立つからの、異世界人の服じゃ。あと少しだけ若返らせておいた。成人からじゃと成長に限界がくるのが早いからの」

神の気遣い痛み入ります。


こうして、神様の恩恵を受けた俺は異世界で新たな人生を歩むことになった。






目を開くと太陽の光に照らされた世界が。暗かった視界が開け、脳に情報が流れ込んでくる。


「すげぇ...」

一番最初に浮かんだのはそれ。異世界に来てそれかよと思わなくなもないが、それだけ目の前の光景は言葉にし難い美しさがあった。


小高い丘の上。目の前には家々が雑然と、しかしなぜが調和の取れたような、見る人を引きつける美しい街があった。

街の中央には、真っ白な壁の荘厳な城が建っいる。


「ステータスオープン」

俺は神様が送還の間際に教えてくれた方法で自分のステータスを見る。


ステータス。自分の基礎能力を知るための、コマンドのようなものだ。


―――――――――

宇都光太郎 15歳 男 Lv1

体力50

敏捷50

筋力50

耐久50

魔法50


〈スキル〉

・バク修正...任意の対象に干渉する

・異世界言語...異世界の言語が話せる

・ステータス...自分の能力を視覚化する


―――――――――


今の俺のステータスはオール50。これが低いのか高いのか分からないが、スキルに関しては分かった。

しかし、文句は言いたい。なんで能力が”バグ修正”なのかについてだ。

前世でバグ修正に追われて過労死したのに、異世界に来てまでもバグ修正をしなければならないなんて、あの神様は実は性格が悪いんじゃないか?

今となってはここにいない神に文句を言いながら、諦めて街に向かう。

だが、俺はまだ知らない。この能力が後にチートと呼ばれるようになるなんて。




聖王国ホーロレン。宗教を重んじる王国だが、国教崇拝を強制している訳ではなく、信仰の自由は守っているようだ。

街は広く、実際に間近で見ると圧倒されてしまう。

街の入口、衛兵の検査を受けて街に入るのだが、身分証明書のような物は持っていない。どうするか...

定番だと街で仮証が発行されて、中で本物を作るという流れだが。とりあえずなるようになるか。

人の列はそれほどで、30分位で俺の番が回ってきた。

「次、ステータスプレートを見せろ」

言葉が通じる。どうやらステータスはしっかりと働いているようだ。

俺は用意していた言い訳を口にする。

「すいません、失くしてしまったのですが」

「そうか、見るところ何も持っていないようだが魔物にでも襲われたか?」

「はい、何とか逃げ切れたんですけど袋を落としてしまって」

よし、首の皮が繋がったぞ。

どうやらこの世界には魔物が存在するようだ。ナイス魔物!

この後、定番通りに仮証が発行され街の教会でステータスプレートを貰うということだった。


ホーロレンは宗教を重んじると言ったように、街の各所に教会が見られる。

その中でも一番大きい街の中央付近にあるオーレン神殿に俺は来ていた。

「でけぇ...」

オーレン神殿を前にすると、自分がいかに小さな存在か考えさせられる。

丘から見た時は城に目がいってあまり気にしてなかったが、神殿も中々の大きさだった。


いつまでもこんな所で立ち止まっている訳にもいかないので、中に入る。

「うわっ...」

中は、外にも負けないくらい神聖的なオーラが溢れていた。

入口から廊下を挟んで正面の部屋。天井まで広々と空間を使い、正面の壁には神の姿が描かれていた。

神様じゃん!

正面の壁画、そこには今日出会った神の姿があった。

神様はこれを見てもらうためにここに送ったんだろうか。ありえななくなは無いな。


神殿の内装は、中央に赤い絨毯が敷かれ、それを挟むように両脇に長椅子が並べられている。一度に200人は入れそうだ。

さらに、長椅子の横には柱があり、その奥にも部屋がいくつかある。

しかし、どこでステータスプレートを貰えるのだろうか。

俺がキョロキョロしていると、怪しいと思われたのか、一人の男性が声を掛けてくる。

「どうされました?」

「ステータスプレートを発行して頂きたくて」

「それでしたら右奥の部屋で行っております。案内致します」

とても丁寧な対応だ。この神殿の神官だろうか。優しい人がいて良かった。

神官の男について行くと、中には他の人もいた。

「こちらで座ってお待ちください」

「はい。親切にありがとうございます」

神官の男は一礼すると部屋の外に出て行った。

しかし、俺以外にもステータスプレートを発行してもらう人もいるんだな。この世界では意外とステータスプレートというのは失くすものなのかもしれない。


こうして椅子に座って順番待ちしていると、前世の病院を思い出す。

「次の方、どうぞ」

そうこうしていると俺の番がやってきた。

さらに奥の部屋に通されると中に二人の神官がいた。一人は女性で、もう一人は男性。

「それでは失礼します。アンカバー」

部屋に入るといきなり男の神官が何かした。

神官の手が少し光を帯び、その光が俺に向かって流れる。


「...」

「はい、大丈夫ですね」

光の流動が収まると、男の神官がそう呟き女の神官からステータスプレートが渡される。

「ステータスプレートは魔力を流すと表示されます。魔力を流す度に情報が更新されるのでこまめに確認することをオススメします。それと、身分証にもなるのであまり無くさないようにお願いします」

女神官からステータスプレートを受け取り、試しにも魔力を流してみる。

ステータスプレートには最初に見たのと同じステータスが表示された。


「ありがとうございました」

「いえ、神の御加護があらんことを」

神官たちは最後にぽいセリフを言って別れた。


しかし、ステータスプレートは俺にとっては身分証にしかならないわけか。自分でステータスが見れるわけだし。

ステータスプレートに着いているチェーンをネックレスのように首に掛けて落とさないようにする。


「そう言えばこの後どうしよう」

神様からは特に何も聞いていないし、教会でもこれからの事は聞かれてない。もしかして詰んでる...?

今の俺は無一文の放浪者。救いの手など誰も差し伸べる訳もなく。

いや待て、衛兵の人なら何か押してさえてくれるかも。

俺はそう思い、親切にしてくれた衛兵を思い出す。

俺がこの街に入ってきた北門の衛兵。あの人なら何か教えてくれるかも。


俺は一縷の望みに賭けて、来た道を引き返す。

門の前には相変わらず人だかりが出来ていたが、あの人は忙しいだろうか。


俺が門の近くでウロウロしていると、門近くの小さな建物から衛兵が一人、こちらに向かってきた。

「どうしました?」

「えと、この街で働きたいんですけど...」

「それでしたら街の西区の方にギルドがあるのでそちらで聞いてください。西区で迷ったら、神殿を出て左に行けばギルドと覚えておいてください」

「はい」

衛兵は丁寧な説明で道まで教えてくれた。これなら迷わずにギルドまで行けそうだ。しかし、ギルドということはやはり冒険者になるのだろうか。

期待通りの展開に心踊らせながらギルドへ向かう。


衛兵の説明がわかり易かったのと、ギルドの位置がわかり易かったのが功を奏し、一度も迷わずにギルドにつくことが出来た。


ギルドは木を基調にした三階建ての建物だった。

「よし!」

勇気と期待を胸にギルドの扉を開ける。これから始まる新しい仕事はブラックじゃないことを願いながら。

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