水ノ葉高校の365日
涼暮 憂灯-スズクレ ユウヒ
セカイ
騒音:1年4組 マツバ チハル
六時間目終了時刻まで残り15分と少し。
今日のロングホームルームの内容としては、来週の学年ディベート大会にむけての資料収集となっているのだが、いつの間にか教室には談笑に勤しむ声で溢れていて、その中に私の居場所を見出せてはいなかった。
コンピュータールームを見回せば、担任不在を良い事に持ち込んだ携帯端末のブルーライトに照らされるクラスメイトの瞳ばかりが並んでいて、机上で静かな起動音を立てるノートパソコンには目をくれている様子はほとんど無かった。
正直、パソコンも端末も大嫌いだ。毎日ブルーライトを浴び続ける人の神経が知れない。あんなの睡眠妨害にしかならないじゃないか。視力は落ちるし、目は疲れるし、明るすぎる。アナログ人間な私との相性は最悪の文明機器でしかない。世間体や人付き合いの上っ面を必死に取り繕うためのアプリだって、そんなの精神すり減らすだけ。そもそも電話とメールが出来れば十分だと思うのだが。
考えだしたら止まらない難点に、内心で苦笑する。どうにも私は生まれる時代を間違えたらしい。
自重出来ない代わりに溜息を吐いて、眼鏡をかけ直す。
後ろで聞こえる下品な女子の笑い声。端から対戦アプリを実況する男子の声。忘れられたルーター音。少数のタイピングの音。
この部屋はうるさいだけだ。
* * *
後で痛い目にあうクラスメイトに同情すら掛けられなくなった薄情な私。
距離を置かれていることは理解している。けれど、仕方が無いでしょ。上手く使いこなせない文明機器も、好みに合わない流行りの話題も、下手に取っつこうとしたら自分を殺すだけなんだし。そんなの馬鹿のする事でしょ。
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「せかい」に置いてかれた少女の話
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