第6話 そろそろチートを活かす

 異世界には数多くのモンスターや空想上の生物が登場するが、危険な生物というのは現実世界にも存在する。

日本に生息しているエゾヒグマもそのうちの一つで、何人もの犠牲者を出す獣害事件を起こし、その討伐隊は数百人規模で編成されるという。

しかし、日本に生息するエゾヒグマなどは実はヒグマの亜種で、寒冷地に行けば行くほどその体は大きさを増し、危険度を増していく。


 そのような生物が、もし、ファンタジーの力でモンスター化され、より強くなっていたらどうだろうか……。

獰猛で強力な爪と牙を持ち、寒冷地に対応する分厚い皮膚と体毛、攻守兼ね備えていて尚且つ、ヒトより素早く、火をも恐れない獣が、さらにタフで狡猾になり、人間への敵意を持って、襲い掛かってくるのである。

さらに、中世ファンタジー異世界では現代ほど衛生や医療が発展していないこともあり、少しの傷でも、狂犬病を始めとした感染症になるリスクも高い。

ブラッドウルフやおばけネズミは、所詮は魔物化した野犬やドブネズミである。しかしそのような魔物ですら、新米の冒険者では退治するのに危険が伴う。

まして、それが魔物化したグリズリーだった場合は、中堅の冒険者がパーティで討伐してやっと安全性が担保される。魔物化した動物駆除のカテゴリーに属するため、冒険者のランクが最低でも受けることはできるが、帰還率は著しく低いため、熊類が魔物化した場合は『デスグリズリー』と呼ばれている。


 しかし、チートスキルを持っているような転生者に対しては、さすがのデスグリズリーも手も足も出なかったようである。

冒険者の登録から1週間で、たった1つの掠り傷も負わずに、デスグリズリーの討伐を果たした彼を、人々は『剣聖の再来』と呼んだ……。

 そして、この文体で出来事を記録するのは難しいし、めんどくさい。


文責:モリタ

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