第3話 ご都合主義かつリアル志向
渡された用紙を一通り記入し、カウンターのモリタの元へ持っていく。
俺:書きました。
モリタ:拝見します。どれどれ、『混迷の世界編』で放浪の冒険者として旅に出るんですね。難易度は普通と……システムは天の声のみOFFで、承知しました。ではあなたのチート能力は3つですね、いかがいたしますか?
俺:結構迷うんですけど、僕痛いのほんとダメなんで、攻撃とか魔法とか、とにかくダメージ受けないってできますか?
モリタ:可能ですよ。では一つ目のチート能力は『被ダメージ0』で登録します。
俺:お願いします。あと、なんか異世界のヤツって、刃に毒塗ったり、毒矢とか使ってくる人よくいるじゃないですか、そういうのも苦しそうで嫌なので、無効化してほしいんですよ。
モリタ:じゃあ『状態異常無効』という形でよろしいでしょうか?
俺:あ、でも野性動物とかと触れ合うだけで感染症かかったりなんかのはずみで破傷風とかなったらやだしな……そもそも異世界なんてどんなウィルスがあるかわからん……病気とかもカバーしてほしいんですけど……
モリタ:でしたら『状態異常無効』では足りないですね……もう一枠チートを消費していただくか、自分でチートを名付け創作していただく必要があります。
俺:なるほど……じゃあ『常に健康』で
モリタ:わかりました。常に健康……いいですね。病気も状態異常も防げると思います。では二つ目のチート能力は『常に健康』になりました。
俺:だいたいこれで無事に過ごせそうだな。3つ目かー。悩むなー
モリタ:はい。確かに無事には過ごせそうですが、あんまり読者の爽快感がなさそうですねー
俺:じ、じゃあ、めっっっっちゃ天才肌とかどうでしょう。魔法とか武術とかすごい早く習得するみたいな
モリタ:あー。ありがち。でも王道は大事ですからね、それで行きましょう。3つ目のチート能力は『めっっっっちゃ天才肌』で
俺:はい(なんでこの人編集さんみたいな感じなんだろ)
モリタ:では、設定終わったらお呼びしますんで、そちらの扉からお出になってください。
俺:はい
待合のベンチに戻る俺。
『被ダメージ0』で『常に健康』で『めっっっっちゃ天才肌』な放浪の冒険者として、ついに異世界での生活が始まるのか、楽しみだな。
ん?
放浪の冒険者……?
放浪してて金はどうなるんだろうか。放浪してたら転生しても生活費に困るのではないか?
異世界でお金を稼ぐ方法など思いつかない。現実世界でも思いつかなかったのに。
モリタさんに訊いてみよう。
俺:作業中すみません
モリタ:はい、なんでしょう
俺:放浪の冒険者って、お金もってるんですか?
モリタ:一銭もないですね。アイテムとかもないです。
俺:えっ、困ります。お腹減るじゃないですか。
モリタ:常に健康だし、被ダメ0なんで、雑草とかキノコとか食えばいいんじゃないですか?
俺:僕の前世は文明人なんで、結構そういうの抵抗あるんすよ。オムライスとか食べたいんすよ。
モリタ:えー、じゃあなんかチート変えます? 『お腹減らない』に
俺:なんでそんな汎用性ない奴なんだよ。露骨にめんどくさがるのをやめろ
モリタ:チート変える以外は方法ないですよ。
俺(どれも変えたくない……天才肌要らないっちゃ要らないけど、主人公の成長が遅いのは物語のテンポ感と関わってくる……あ、せや)
俺:……モリタさん、ここだけの話、何もしてないのに女の子にモテるといった類のチート、隠しスキルで入ってませんか?
モリタ:……お答えしかねます。
俺:否定しないということはあるんですね。僕はストーリー考えてチート一つ譲歩したんで、ハーレム作る奴のかわりに、所持金の操作みたいなの一つ、入れてもらえません?
モリタ:しかしハーレムがないと読者が……
俺:大丈夫です。著者には複数の魅力的な女子を描くスキルがないので、さしたる影響は出ません、僕が保証します!
モリタ:……わかりました。そこまで言うのなら特別に認めましょう。ハーレムの代わりに『所持金の操作』を加えます。
俺:よし。
モリタ:じゃあもう設定決まったんで、異世界どうぞ
俺:ありがとうございます。いってきます。
モリタ:3話と3000字以上かけてやっと旅立った……
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