第26話 グレイトワン

 ここはどこだ??

 

 暗い、

 狭い、

 苦しい、

 怖い、


「所長!実験成功です!」

「おー!これが新しいビーストの幼獣か!なんかえー面構えしとるように見えるなぁ!」


 誰だ?この人達は??

 僕は何かの容器のようなものに入れられているのか?


 なんだ??何か入ってきた。


「よーし!早速、B501号と戦わせてみよう!わはは!」


え?何??何??この奇っ怪な生物は??僕を狙っているの??


 グワーー!


 こっ、こないで!助けて!怖いよー!あっち行けー!


 ガブっ!


 痛い!痛いよー!何で僕が食べられなきゃいけないの!助けてよー!


 ガブっ!


「なんや?えらい大人しいやっちゃのー??食べられてまうでー!」


 なんだ?この人間は??僕が食べられのを楽しんでいる??

 イヤだ!食べられたくない!


「失敗作か??」


「所長、そんな事はない筈なんですが?」


「おっ、おー?反撃し始めよった!」


 何がおかしいの?僕が虐められるのを見て、こんなに喜んで?だんだん腹がたってきた。こんなバカ面の連中におもちゃにされてたまるか!やってやる!


バクバク!


 ギィーヤーッス!


「おー!やれば出来るやないか!」


 バクバク!


 食べたくない。でも食べなきゃ、僕が食べられる。


 バクバク!ゴクン。


「こいつ中々やりよるで!よーし!お前をグレイト・ワンと名付けよう!」


 それからというもの、僕は色々な実験器具で体をいじられ、怪しい薬を投与され続けた。毎日毎日。


 やめて。その薬はイヤなんだ!その薬を使われると、意識が遠退いていく…。

 いっつも、意識が戻ると、僕の回りには、死骸が転がっている。

 これは僕がやっているのか??

 全然覚えていない… 。


「こいつもだいぶデカなってきたの~!そろそろ実践投入やな!」


 実戦投入??何をさせられるの??

 やめて!僕は食べたくないんだ!


 - それから数日後 -


「よしゃ、グレイト・ワン!お前の真価を見せてみー!」


 え?あれを食べなきゃいけないの?あれは人間じゃないか?食べたくない。食べたくないよー。


 そして、薬を投与され、気がつくと、僕の横には人間の死体があった。


 僕が食べちゃったの?人間を?

 もうイヤだ……。


「これでお前も立派な怪物の仲間入りや!!グレイト・ワンよ!」


 怪物になんかなりたくない。怪物になんか。


 薬を投与されて、人間を食べ、体が大きくなるにつれて、記憶が薄れてゆく。


 あと数回も繰り返せば、僕は理性を完全に失ってしまうだろう。


 イヤだイヤだ……。

 怪物になんかなりたくない!

 怪物になんか……。


「さー!これが最後の薬やで!」


 嫌だ!やめて!


 そしてとうとう僕はホンモノの怪物になった。


 グレイト・ワン


 その名前で僕を呼ばないで。

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