第23話 堤

 - 遡ること数分前NOBモニター室 -


「所長。ライギョマンスーツが、ここまで強力とは、嬉しい誤算ですね?」


「誤算やありまへんでー!わいの実力ですがなーワハハっ」


「しかし、このまま彼らを生かしてここから帰す訳にはいきません。」


「おっと、せやったせやった。余裕ぶっこいてるところへ、真打ち登場ですな~。」


「グレイト・ワン。どれ程の実力か見定めさせてもらいます。」


「お任せ下さい!それでは行きまっせー!ポチっとな!」


ゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォ。



 巨大生物が出現して僅か1分。


 最初の一撃でライギョマンが倒された……。


ドッスッん!


バキッ!バキバキッ!

ボキッ!


「いやー、参った参った…ロメオの最高傑作の9番をこう易々とへし折ってくれるとは…フロッグマンに変身してなかったら、体中の骨がバキバキにされるとこだった…。」


「綾野くん!ここは一旦退こう!」


「田森さん!ちょっと深く踏み込みすぎました!もう逃げる体力も残っていません!」


「何をバカなことを!今行く!」


 ガシッ!


「ダメです!田森さんまで殺られます!ここは堪えて下さい!」


「上田くん……。」


「まだです!まだライギョマンが!飯見さんが残っています!」


「ライギョマンは最初の攻撃で殺られてしまっているじゃないか!」


「いいえ!あの人は、飯見さんはまだ死んでいません!必ず立ち上がってくれます!飯見さんを信じて下さい!」


「くそっ、僕にはどうすることも出来ないのか………。」


 俺は悪い夢を見ているんじゃないか?

 朝が来て、目を覚ませば、ごく普通の一日が始まり、また児玉とバカなやり取りをして、夜はキャバクラに行っておねーちゃんの尻を触り、終電を逃して、タクって、かーちゃんに怒られ……。

 いやいや?またか?またいつものように現実から逃げるのか?

 堤亮太よ!

 児玉にはいつも偉そうなことばかり言っていたのに、当の本人は、自分に言い訳して、屁理屈こねて、辛いことから目を反らし、グータラグータラ生きてきた。

 お前は、児玉の死を目の当たりにして、生まれ変わろうと思ったんじゃなかったのか?

 それがどうだ?目の前にピンチの仲間がいるのに、ただ呆然と立ち尽くすだけ、それでも元ライギョマンか?

 ん??

 忘れかけていた。

 そういえば、俺も昔は一端のライギョマンだった。

 ライギョマンは、決して仲間を見捨てない。

 児玉よ!見ていろ!

 これが本当の堤亮太の生きざまだ!


「田森さん。俺にその竿を貸してもらえませんか?」


「堤さん、わかってると思いますが、あなたの腕とこの竿では、万が一にもヤツには歯がたちませんよ!」


「わかっています。自分の実力は!俺に出来るのはこれだけだ!」


 まずは、ライギョマンから救出だ!


「いけっ!」


 よし!一投目で上手く掛かった!外れるなよ?


「うりゃ!」


 ドスン。


「上手くいった!」


「堤さん!凄いじゃないすか!」


「上田くん。まだだ、後フロッグマンを!」


フロッグマン待ってろ!今助ける!


「うりゃ!フロッグマン!掴まれ!」


「堤さん!僕の体重では、あなたがもたない!」


「いいから早く!」


「すまん、堤さん。」


 グイ……。


 うっ、動かない…。

 あと、五メートル近づいてバットで抜きあげないと…しかし、五メートル近づいては…。四の五の考えてる暇はない!


 タタタッ!


「う、うりゃーーーー!」


 ドスン。


 やったぞ!予想通り上手く、救出できた。

 でも…こりゃ少し深く踏み込み過ぎたかな?(笑)児玉!約束守れなかった。もう少しで、お前の元へ行く。


「つっ、堤さーーーん!」


「上田くん。みんなの事頼んだ!」


 バキバキバキバキ

 グシャグシャグシャグシャ


「つ、堤さんまで…、う、ううう…駆逐してやる。一匹残らず駆逐してやる!うわぁぁぁぁー!」


 ガシッ!



 堤さんの元へと駆け寄ろうとした僕は誰かに止められた。


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