@hhh0101

第1話


会社の帰り

今日は早い。

人並みの時間。

人並みの足並み。



駅の前で雨が降り出した。

小さな傘は持っていた。


確かにそれは雨だった。


雨。

しかし針金のような雨。


ビルの壁さえも傷と化し染みていく…。

前からあったんだけどな…あの傷…。

だから、軽い雨。








けれど本当は重い雨。

路の表面は、大きな水の流れと化し

川となって、濁流へと変わる

それは、やがて大樹の麓へ流れるべく地下へ轟く。





私の足元はすでに水の中。けれどそれがまた心地よい。

この濁流の、地下へと流れる大河が、いつか私のすべてを洗うのだ。

今日はない稲妻が私を古の大樹まで導くのだ。



そして今、

かさを静かにとじて歩くわたし。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

@hhh0101

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る