第564話自分で掘り当てて隠すタイプ

「うーむ。これは……」


 皆が見守る中、言われた通りに神珍鉄を白打と比翼連理に食わせてみた。


 その結果がこちら。


 如意棒

 使用者の思いに答え自在に大きさ、長さの変わる武器。

 使用者の望む重さに適応し、それ以外には8トンの重さに変わる。


 スキル

【神聖】【竜特攻】【不壊】【魔特攻】


 こっちはまんま私の知ってる西遊記に出てくるような性能になり、スキルはなんか色々と特攻が付いた。


 この辺は神の力と竜の力が合わさった結果だろうとの事。


 特効攻撃って良いよね。ゲームのイベントで特攻があるかないかで、イベント上位に食い込めるかどうかの、篩いに掛けられる経験した私としてはとても嬉しいです。


 見た目も同じく、両端に金色の輪がはめらた棒だが、金属のような質感をしているが、妙に手に吸い付くように馴染む不思議な感触。


 ただ、私がイメージするのはやはり赤い棒なのだが、白打の影響なのか本体の色は白となっている。


 赤も派手だが、真っ白な棒に金の輪というのも中々に目立つ代物だ。


 言ってしまえばこれは、前に作ったダグダの大剣の完成版とでも言うべき物だ。


 折れず、曲がらず、膨大な質量を一本の棒に納めた如意棒は、正に私が目指した物の理想形と言ってもいい。


 打撃武器の攻撃力は、頑丈さと重さ、そしてそれを振るうスピードで決まると思っている。


 だが、実際にそれを全て満たすことはかなり難しい。


 重さを重視すればそれを振るうスピードが落ちる。そしてスピードを重視すれば重さを犠牲にしなければいけない。


 実際、ダグダの大剣は頑丈さと重さを基準に作ったが、その質量を固める事も中途半端、重さに使い手の私が振り回されるという失敗ぶり。


 あれからそれなりに研究を重ね、更に圧縮する事は出来たが、それでもまだ無駄に大きく、忙しさもあり計画は頓挫していた。


 そこに来てこの完成形とも言える如意棒である。


 嬉しい半面ちょっとジェラっとする。


「フッ!」


 軽く構え、上から振り下ろしビタリと止める。


 鑑定した結果の通り、私の望む重さが手の中にズシリとある。


 だが不思議な事に、動きを止めた際に感じるはずの重量の慣性は全くと言っていいほど感じない。


 恐らく私が力を入れなくても簡単にその場に静止させる事が出来るだろう。


 次にそのまま下に自由落下させてみる。


 すると如意棒は盛大な音を立てながら地面にめり込んだ。


「おぉ……」


 その結果に少し驚く。正確にはわからないが、やはり本当に本体の重さは8トンほどあるようだ。


 私が持つとそんなに重さを感じないのに本当に不思議である。


 あっ、やべぇ。試したのは良いけどどうやって取ろう。


 見事にめり込んだ如意棒は結構深く埋まっている。


 縦にすれば良かったのにわざわざ横にしたので均等に埋まって取り出せない。


 うーむ……どうしよ。


「手元に戻るように念じれば大丈夫ですよ」


「ほほう」


 考察する振りをしながら考えていたが、どうやらテア達にはバレていたようだ。


「如意棒」


 手をかざして名を呼ぶと、しっかり私の手の中に収まる。


 これは便利。さてさてそれでは……。


 手に持った如意棒をもう一度構え直し再び振るう。


 うん。棒術は久しぶりだなぁ。


 棒術の基本は円だ。


 円を描くように止まらず常に回転させながら、自身も回転させ、遠心力で澱みなく振るう。


「「「おお〜!」」」


 何故かそれを見る皆から感嘆の声が上がる。何故?


 簡単に動き続けるが、やはり素晴らしいのは如意棒の不思議感覚だ。


 手に吸い付くから握りやすく、どんなに振るっても遠心力に持っていかれる事もない。


 本当に私が振るうのに都合よく重量も常に変化しているようで、それは太さ、長さを切り替えても同じ。


 全くもって不思議な素晴らしい武器である。


「ハッ!」


 締めとして壁に向かって刺突を放つ。


 壁に埋まった如意棒の周りにはヒビ一つなく、全ての力が一点に集中している。


 うん、上々かな?


「流石ですね白亜さん」


「むっ、流石にこれくらいは私でも出来るよ」


 槍が得意な澪なら棒術でももっと凄いだろうが、私でもこれくらいは出来るのだ。


「そういう意味ではないのですが……まあ良いです。防具の方はどうですか?」


「なんか凄く嫌な納得された気が……まあ、いっか。えっとね。こんな感じ」


 比翼連理

 物理防御10000

 魔法防御10000

【ダメージ吸収】【鬼特攻】【呪耐性】【防汚】

【再生】【ダメージ減少】【物理耐性】【魔法耐性】

【堕竜の怨嗟】【竜鎧ドラゴンアーマー

【霊力耐性、新】【神力耐性、新】【神聖強化、新】

【物理攻撃反射、魔法攻撃反射→攻撃反射、新】


 ……遂に防御力一万超えて、私の追い付けない領域に行っている。今後私は装備の防御力に追い付く日は来るのだろうか? 突き放される気しかしないのはなぜなのだろう?


「おっ、ハクちゃんいい感じだね」


「いや、確実にやばい装備っすよ?」


「龍族ですらあんなの持ってないの」


「【霊力耐性】【神力耐性】が付いたお陰で格上相手でもダメージが減らせそうですね」


「いや、格上想定するのやめて欲しいんですが?」


「【神聖強化】は普段は効果がありませんが、神獣化した時の力が上がりますよ」


 あっ、スッキリ無視ですか。そうですか。わかりました。


「【攻撃反射】は受けたダメージの半分を相手に返せるし、ハクちゃん向きかな」


「私、ダメージ負いたくないんですが?」


 だいたい当たると死ぬのよ……。


「地竜の効果でダメージ上限あるから、ダメージだけなら大丈夫だよ。それにしてもこれ……」


「待ってその先は言っちゃダメだ!」


 危険が危ない!


「対邪神でも想定してるかのような感じだな」


「トリスが言うんかい!」

 

 クソ油断した!? 牽制する相手間違えた!


「いや、誰が見てもそう思うっすよ」


「うぐ」


 いやね。確かに私も同じ事は考えたよ? でもそれを言ったら今までの傾向からして、本当になりそうじゃん? 


「今更だと思いますが?」


「そこは希望を持とうよ!!」


 諦めたらそこで試合終了だって監督も言ってたもん!


「さて、それでは白亜さんの気も済んだようなのでそろそろ出ましょうか」


「えっ?」


「「「えっ?」」」


 あれ? そんな感じの流れなの?


 どうやら私以外は全員それに納得していたようだ。その証拠に驚きの声を上げた私の事を、これまた驚いた顔で見ている。


「まだなんかあるんっすかここ?」


「いや、ここから先は本当に行き止まりで、中は荒れ果ててめちゃくちゃな空間だけだ」


「うん。私も同じ感想。多分龍神様の修行場だったんだと思う」


 トリスとシフィーの言葉を聞いた全員が私を見る。


 しかし探索と言ったら最後まで、端の端、壁まで調べるのがゲーマーとしての性なのです。


 何よりまだ面白いもんありそうだし。こう……ね。そわそわってする。


「どうやらハクちゃんは奥が気になってるみたいですね」


「そのようですね。全く、これ以上何を掘り当てるつもりなのか」


 おいその反応はなんだ。私は地面に向かって吠えて小判を出す系の犬ではないのだよ。むしろ自分で掘り当てて隠すタイプ……って、そうじゃない。


「じゃあしょうがない。ここまで来たんだし見てみようか」


「そうですね。しょうがありません」


 あの……お二方? しょうがないとか口では言いつつなんかワクワクしてませんのこと?


 そうして進んだ洞窟の奥、少しだけ広くなった空間で私はまたしてもお宝を見つけるのだった。

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