第546話また勝手に動き出しやがったァァ!

「いやいや、ちょっと待て、そして落ち着け」


「まったく貴様という奴は、少し目を離した隙に誰彼構わず力を受け取とって、節操というものがないのか」


「いや、完全に言い掛かりだよね? 見てたなら無理矢理だってわかるよね?」


「貴様に隙があるのが悪い。良いか貴様は己の眷属だという自覚を持て!」


「なんだその面倒臭いヤンデレ系彼女みたいなノリ!? キャラ変わってんぞ!」


「問答無用!」


「ギャーーー!!」


 なんて、感じで鬼神にまで神の力を流し込まれた。


 まあ、おかげで竜形態にも鬼形態にも、変身時に神属性が付くようになったから良いんだけど。


 ここで余談だが神属性というのは普段そんなに恩恵のあるものではない。


 だが魔族と戦う時にはありがたい力だ。


 魔族と戦う時、神の力を持っていると与えるダメージが上がり、受けるダメージが減るという効果がある。


 悪魔などにも有効で、基本的に悪しき者と戦う時に有利に働くのがこの力だ。

 逆に人間を含めたほとんどの種族に対しては大した効果がない。せいぜい神威という威圧に近い効果、浄化効果があるくらいである。


 そして何よりも大きな恩恵は邪神に対してだ。


 邪神というのは実に面倒な存在、相手からのダメージは上がり、こちらのダメージは半減という、厄介なパッシブ効果を持っているのだ。


 しかもそれを力推しでなんとかしても、特定の資格がないとすぐ復活するオマケ付き。


 仮に倒しても資格持ちが倒せば千年程は蘇らないものが、百年ほどで蘇り、早ければ十年程で復活を遂げるらしい。


 その資格の一つが神属性という訳だ。


 ただし邪神相手だと、お互いに有利な属性という扱いになり、相手からのダメージも上がる仕様となっている。


 その代わり神属性がある者は神殺しが出来る。これは神属性を持つ者だけの特有の効果だ。


 その他の資格は英雄や勇者という称号持ちだ。


 英雄の称号持ちは攻撃もダメージも等倍計算になる。ここでやっと普通に戦える土俵に立つことが出来る。


 そして……ずるいのが勇者だ。


 この称号持ちは相手へのダメージは上がり、受けるダメージは減る。


 しかも職業まで勇者となっている者はそれだけではなく、相手よりもステータスが低い場合、自分のステータスが跳ね上がり、スキルの威力まで増すのだとか。

 一回だけ、致死性のダメージから復活まで出来るらしい。


 くっそチート野郎なのが勇者様なのだ。ぐぬぬ。


 まあ、そんな事はあったが、神の力を注ぎ込まれた副次効果のおかげで、変身した時のエネルギー消費が抑えられ、活動時間が飛躍的にアップした。

 そして攻撃力が上がり、ダメージもちょっぴり軽減出来るようになったらしい。


 ……神の力でもちょっぴりとかね。ふへへ悲しい。


 そして問題はまだ続く。


 正式にマナビーストを倒したのが私という事になったおかげで、マナビーストから貰ったビーストコアが私の物になった。


 そしてそれを受け取った時、その事件は起こった。


 ビーストコアをおばあちゃんから渡され、その手に受け取った瞬間。


 ビーストコアが目の前から消え去った。


「へっ?」


 と、思わず間抜けな声を漏らした私はきっと悪くない。


 ▶ハクアのスキル【暴喰】が発動

 ビーストコアを取り込みました。


 そしてその現象に続いていつも通りの音声が頭に響いた。


 また勝手に動き出しやがったァァ!


 私の心の葛藤、怒りもなんのその、無情なアナウンスは次々に大事なことを告げていく。


 そして手に入れた効果がこちら。

【神獣化LV.4→LV.6】

日輪狼スコル化.新】

月光狼ハティ化.新】

日輪狼スコル召喚.新】

月光狼ハティ召喚.新】


 この五つだ。


 このうちの四つ、スコル、ハティは少し特殊なものだ。


 スコル化、ハティ化はそれぞれ神獣化の新しい変身形態。スコルは物理に秀で、ハティは魔法に秀でている変身形態だ。


 しかもスコルは太陽が出ている間、物理ステータスが更に上がり、ハティは月が出ている間、魔法ステータスが上がるスキルがそれぞれ付いている。


 しかも対魔族、邪神相手でなければ高い効果を発揮しないフェンリルと違い、その他の種族にも有効なのだ。


 しかしそれでは鬼化、竜化の変身と被るのでは?


 そう思いの皆さん、それは違うのだよ。


 鬼化、竜化はそれぞれ物理と魔法の特化型。

 一方のステータスを、もう片方のステータスに上乗せしているのに対し、スコル、ハティは純粋なパワーアップと考えて良い。


 その代わり鬼化、竜化よりも出力は低くなっているが、全体的なバランスが高い形態だと思っていただきたい。

 それにその他の種族に対して有効だが、その効果を真に発揮するのはやはり対魔族、邪神。


 その辺の棲み分けもちゃんと出来ている仕様となっております。


 因みにやはり対魔族、邪神特化形態ではあるがフェンリルも純粋にステータスが更にパワーアップした。


 こちらは鬼神、龍神の力の影響を強く受けており、変身時のエネルギー消費が大幅に減ったのは収穫だった。


 そして後の二つの召喚だが、こちらは成長型の眷属召喚が出来るスキルだ。


 成長型の召喚獣はLVがあり、独自に成長していく。


 しかしスコル、ハティは二体一対らしくLVは共有という、珍しい召喚獣なのだ。


 そしていくつかのルールがある。


 ・私がどちらかの形態に変身していると、もう片方しか召喚出来ない。

 ・変身と同じくスコルは太陽があると、ハティは月が出ているとパワーアップする。

 ・倒されても一週間で再び召喚出来るようになるが、その代わり召喚出来るようになるまでは変身出来ず、LVも下がってしまう。


 と、こんな感じだ。


 因みに余談だが、変身してみた結果、スコルは髪が赤くなり何故か髪が短く、ハティは髪が金色になり足元まで長くなった。


「本当に怒涛の展開だったね。連続で毎日驚いてたよ」


「いや、それは私が一番驚いた。というか、ただの被害者だし」


「うーん。同意しづらい」


「なして!?」


 理不尽な言葉につっこむが曖昧に笑って流された。


 解せぬ。私はどう見ても被害者だろう。


「でもまあ、一番ビックリしたのはあれかなぁ……」


「あれかぁ……」


 ミコトのいう『あれ』。


 それはもちろん恒例行事のようになっている毎度のあれだ。


 そう龍神の力の力に始まり、鬼神の力、そしてマナビーストから託されたビーストコアを取り込んだ連日の結果。


 またしても私は全ての変身、力の扱いが更に不安定になり、ここ最近やっとこさ追い付きつつあった力の制御が暴走。


 その結果、全身から血を吹き出して倒れるという失態を演じ、全員を酷く慌てさせ、二日程寝込む羽目になったのだった。


 力の暴走を初めて見たミコトやアトゥイ達など盛大に慌てたらしい。


「あれは本当にビックリしたなぁ……」


「すいません」


 なんか遠い目をして言葉を吐くミコトに素直に謝る。


 いやまあ、私もビックリしたけど。


 なんか慣れつつある自分が怖い。


 そしてなんだかんだと、寝込む度に復帰が早くなっていってる気がするのがなんとも……その内、次の日には修行始まりそうで怖いなぁ。


 そんなことを考え、私もまた死んだような目で遠くを見るのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る