第364話紙装甲だからな……
現在私は場所を食堂へと移し正座中なり。しかも何故か駄女神共まで集合している始末だ。解せぬ。
「で、何をやらかした?」
「おいおい。何も解らずこんな正座なんぞさせたのか? 私が何かやらかしたとは限らないだろ」
「いや、あの台詞だけでも十分だし。何よりも今の今までぶっ倒れて寝込んでた奴が何を言ってる。さっさと吐け」
くそ、完全に疑われて取り付く島も無い。私は悪くないのに!
「違うもん! 私は無実だもん!」
「はあ、じゃあテア。簡潔にこいつが何をやらかしたか教えてくれ」
これ以上私に聞くのは時間の無駄だと判断した澪がさっさとテアに聞き始める。
私よりも私の身体に詳しそうな奴に聞くのは反則だと思うの……。
「そうですね簡潔に……ですか。では簡潔に……白亜さんが神の領域に踏み込みました」
「おい、どうしてそうなった……」
「いや、その回答には私もビックリですわ」
えっ!? 何その神の領域に踏み込んだって!?
「まあ、驚くのは無理もありません。これは前代未聞、異例中の異例ですからね。白亜さんだからこそ……と言うか。白亜さん以外にはそんな事を思い付く筈が無いですし、思い付いても実行に移す事も、道理を捻じ曲げて成功させる事も普通は無いですからね。そんな訳でこちらをどうぞ」
と、そんな報道番組の司会者がフリップを出すような感じで見せてきたのは私のステータスだった。
名前:ハクア
種族:禍津鬼
魔法:幻覚魔法→幻惑魔法LV.6(新)
称号:
暗殺者(新)毒使い(新)悪逆非道(新)悪食(新)
竜殺し(新)竜喰らい(新)毒竜喰らい(新)
神の使徒(新)女神の寵児(新)
神に反逆する者(新)
スキル:戦闘系スキル
【雷装鬼LV.9、竜闘気LV.1(新)→竜装鬼LV.4(新)】
【追撃LV.2(新)】
【水枷(新)】【鬼火LV.1(新)→黒炎LV.2(新)】
【鬼砲LV.2(新)】【羽根弾LV.3(無)(新)】
【鬼種の種(新)】
変化系スキル
【魔装・変幻酒呑童子(新)】
【神装・神語りフェンリル(新)】
技能系スキル
【罠師LV.4、忍び足LV.3、暗視LV.6、危機察知LV.5、背後攻撃(極)、急所攻撃(極)、跳躍LV.5、特殊毒調合、解毒薬調合→暗殺術(新)】
【猛毒調合→竜毒(新)】
【鉄蜘蛛糸生成LV.7→鋼鉄蜘蛛糸生成LV.1(新)】
【飛行LV.5(無)(新)】
耐性系スキル
【気絶耐性、小(新)】
【女神の守り(新)→女神の守護(新)】
ステータスUP系スキル
【鬼力LV.2(新)、竜力LV.1(新)→鬼竜LV.2(新)】
攻撃ダメージUP系
【毒威力増加LV.1(新)】【ドラゴンキラーLV.1(新)】
属性スキル
【強酸(新)】
補助、その他スキル
【鬼珠LV.4→鬼皇核LV1(新)】【隠蔽(新)】
【水場適応(新)】【過食LV.4(新)】
【魔眼→魔王眼(新)】【解体(極)(新)】
【神獣化LV.1(新)】
と、言う訳でこれが私の新しく増えたスキル群。
スキルが多すぎて遂にレベルが上がった位では表示して貰えなくなりましたよ!! 私の努力……。
「な、なんか少し居なくなってる間にハクアがまた凄い事に……」
「どんな事があればこの短期間にこんな事になるのじゃ?」
「まあ、ハーちゃんですから」
「「「あー……」」」
ちょっと待とうか! なんで皆そんなので納得しちゃうの!?
「さて、ツッコミ所が満載だが、何処から手を付けるべきだ?」
「と、言うよりもどこから手を付けても驚く位しか出来なそうですね」
いや、知らんし。むしろスルーしてくれても良いのよ?
「てか、【神の使徒】とか【神の寵児】とかってなんなんだよ! 後半二つは別に良いが前半の二つはなんだ! 私は駄女神に屈した覚えは無いぞ!」
『私も貴女を使徒にした覚えはありませんよ!? そもそも貴女のせいなんですよ!』
「いきなり罪を被せてくるとは良い度胸だな」
「お前が言うなよ」
「確かにハーちゃんが言える事ではありませんね」
「……ご主人様」
うっ、視線が痛い。でも私は負けない!
「でもなんでハクアはこんな事になっちゃったの?」
「エレオノの言う通りですね。何か心当たりは無いんですかご主人様? ……あるんですね?」
何故バレたし!?
「同じく増えた【神に反逆する者】【神喰らい】もだな。そもそも前者の二つと後者の二つは全くの別物だろう? 何故同時に手に入れてるんだ?」
そんな澪の疑問で全員が私の事を見る。
なんの事か分からない。心当たりなんてなんにも無い。全身から冷や汗が出てるのはきっと気の所為に違いない!
「さっさと白状しろ」
「まあ白亜さん自身、詳細に説明しろと言われても自身に何が起きたのか正確には分からないと思うので、私が解説をしましょう」
「ああ、頼む」
いや、別にそんな説明なんてしなくても良いんすよ?
「では、スキル関連は後回しにして白亜さんに何が起こったのか……、端的に言えば自業自得ですね」
「やっぱりかい!」
「色々と端折り過ぎだと思うの!?」
そこからのテアの説明はこんな感じだ。
まず、今回私が長々と寝込んだのは、やはり神装・神語りが原因だった。
無茶を通す為に神職の者が、神との対話をし易くする為に使用する薬まで使って身体を慣らした。
が、それでも人間ですらその力に多大な負担が掛かるようなものを、モンスターである私が無理矢理使うには無茶が過ぎたらしい。
おかげで倒れた直後は身体の中がボロボロだったとかなんとか。
そして先程澪が言った本来なら同時に手に入れるのは不可能であろう称号。
これの取得には私が神語りを使用する為に行った非常識な方法のせいらしかった。
「「「非常識な方法?」」」
「はい。本来、神職にある者が神の力の一端に触れ、その力を借りるのは長い年月と才能があって初めて、奇跡のように生涯に何度か扱う事が出来るか、または神達の召喚に応じた特別な勇者などが、神の力を借り受けて扱うくらいです」
「因みにテアが言ったようにそうやって神が力を貸し与えた人間に付くのが、【神の使徒】等の称号だな」
「ならば何故マスターはそんな力を扱えたのですか?」
おお!? ヘルさんが質問する側に、少し機嫌悪そうなのは自分の知らない知識だからだろうか?
「それが今回の不具合の原因ですね。まず、白亜さんは神を降ろす為に神職の者がトランス状態になりやすくなる薬を、段階を分けて複数飲む事で身体を慣らし効果を上げました」
「ハーちゃんがドーピングを……」
「その言い方は違くないかな!?」
「次に白亜さんは創世教会の祝詞を唱えシルフィンとのパスを繋ぎ、祝詞を即興で改変する事で無理矢理契約を結びました」
「悪質なセールスマンみたいな奴だな……」
くそう。反論出来ない。
「しかし神に対して一方的に契約を結んだ所で、本来なら力の差によりすぐに契約は破棄されます。ただ、白亜さんはその一瞬の間に力押しで魔力を注ぎ込み無理矢理契約を維持すると、更に祝詞を改変して自分の格を一時的に底上げして、シルフィンから力の一部を奪い取ったのです」
「つまり、セールストークに圧倒されてる内に不利な契約を押し付けて金を巻き上げた……と」
「「ご主人様……」」
「ハクア……」
「あはは……」
「流石おねちゃん(ハクア様、ご主人様ニャ)」
……どうしよう、例えが絶妙過ぎて本当に反論出来ない。
「いやいやいやいや、何を皆して納得してるのよ!! 今言った事ちゃんと聞いていたの!? この子女神様から力を奪い取ったって言ったのよ!!」
「「「ハッ!?」」」
「……お前ら、白亜に毒され過ぎだろ」
所詮は駄女神。信仰なんてこんなものだよね!
〈……マスターのせいですよ?〉
すみません……。
「しかし、神の力を無理矢理奪い取ったのじゃろ? それならば何故称号が反逆だけではなく、使徒などもあるのじゃ?」
「ええ、ここからが今回の話の核心です──」
その後続いた解説によると、神の力を使うには神が気まぐれで助けるか、神から直接使命を帯びなければいけないのだそうだ。
魔王を倒す、世界を救う、最悪を回避する。そういう事に尽力させる為の手助けとして、神の力を借り受け《使徒》や《寵愛》を受けた者として力を振るう。
しかし今回、私は駄女神と契約を結びそこを頼りに力を奪い取った。
その事で力を受け取った人間=神の使徒となり、同時に神に危害を加えた人間=神に反逆する者と、二つの異なる称号を得る事になったのだそうだ。
因みに《寵児》は通常よりも神の力を多く授けられた者、【神喰らい】は神の力を奪い取った者に与えられる称号らしく、私が初めての取得者らしい。
何故なら神殺しをしないと普通は力を奪えず、そうやって奪っても経験値にはなるが神の力を奪う事にはならないのだとか。
そして今まで【神に反逆する者】の称号が得られなかったのは、単純に襲った事はあったが攻撃が届いていなかった為だと言われた。
ある意味駄女神に腹パン入れる夢に一歩近付いたとも言える。閑話休題。
その後、他の称号についてもちゃんと包み隠さず白状すると、呆れるやら頭を抱えるやらと皆さん何だかリアクションに困っていた。
私は一生懸命なだけだったのに。解せぬ。
「まあ、とにかく非常識が非常識な行動して非常識な結果になった……と」
「端的に言えばそうですね」
「異議あり!」
「却下だ」
「なん……だと!?」
しかも皆まで頷いてるし!?
「とりあえず……だ。他の物も上から処理していくか。禍津鬼とはなんだ?」
「禍津鬼とは厄災を運ぶと言われている鬼神の一種ですね。神の力の一端に触れ、その領域に踏み込んだ者と言われています」
「ここでも神か……」
「てへ♪ ギャァァー!? アイアンクローは止めてー」
ぬおぉぉお!? ミシミシ言ってる! レベルが上がって前よりパワー上がってるー!
その後も【竜装鬼】や【鬼砲】等の説明が続く中、遂に私が寝ている間に増えたスキルの説明に辿り着いてしまった。
「それではそろそろ皆さんが気になっているスキルへと移りましょうか」
私の方をチラッと見て笑いながらそんな事を言うテア。因みにヘルさんのアーカイブには存在しないスキルらしく、説明役がテアに移っている。
なので若干ヘルさんの機嫌が悪いっす!
「まず【魔王眼】ですが、これは【魔眼】が変化したものですね。元々白亜さんの中には魔王の欠片が何故だか紛れ込んでいました。それが今回、一定の力を手に入れ、神へと反逆した事で力の一部が引き出されたのでしょう。効果としては、魔力の流れを直視出来た【魔眼】の力に、モンスターの弱点部位や属性が分かる効果が追加されただけですね」
「……お前、神の領域に行くだけでは飽き足らず、遂に魔王にまで名乗りを上げたか」
「待って! 私に覚えは無いのだよ!?」
「むっ、我は応援するぞ主様」
こんな時だけ応援された!?
「次の【女神の守護】は、全ダメージが20%軽減されるスキルですね」
「あれ? ヘルさんの【魔甲殻】よりも軽減量少ないの? ただのスキルに効果が負けるとかクソの役にも立たねぇな。流石駄女神」
「いえ、ヘルの【魔甲殻】は物理ダメージのみ適用されるもので、こちらのスキルは魔法ダメージも適用になります」
ふむふむ。全方位だから効果が少し低めか……それでも十分だけどね。
『それよりも今の暴言について謝ろうとは思わないんですか?』
「ないな」
『流石ハクアさんですね』
「じゃあご主人様のダメージが大幅に減るんですね!」
「ハクア怪我多いから少し安心だね」
「紙装甲だからな……」
「うるさいよ!?」
「いやだって、神の領域に足突っ込んだにしてはステータスが平凡……」
「それは言ったらダメなやつだと思うの!!」
私だってそんな風になってるんだったら、もっとステータス上がってても良いじゃんって思ったよ! それでも……それでもやっとBランクレベルまで来たんだい!!
『シルフィン:ほら、それだと弱いまま強い敵と戦うってコンセプトからずれちゃいますから』
わざわざ頭の中に直接嫌なツッコミ入れてくんじゃねぇー!!
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