第239話ご主人様~~~~!
常識、常識かぁ~。無かったんだ、私。ん? と言うか常識?
常識が足らない事が露呈した私は引き続き落ち込んでいたが、そこでふとある事に思い至り一人首を傾げる。
「どうした白亜そんな首を傾げて? 遂にバカを拗らせて大バカになったか?」
それってクラスアップするもんじゃ無いよね?! って言うか拗らせたとか酷くない?!
「ちょっと常識に付いて本気出して考えてみた」
「何でいきなりJ-POP調で言った?!」
「いや、よくよく考えたら私には一切合切常識が無くなったんだなぁ~。と」
「うん。本当にどうした? そこまで落ち込む事でも無いだろ?」
澪が少しオロオロしつつ私に言って来る。
いや、そうでなくてね?
「う~ん。良く考えたらこの世界の事だけで無く、テアや駄女神から聞いた事まで含めると元の世界の常識も無かったんだなぁ~。と」
神が居て、人外の存在が居て、妖怪も化け物も果ては漫画の様な組織も警察にあって、オマケに身内が深く関わっていた。
私がそう話すと澪や瑠璃、結衣ちゃんまで「常識って一体……」と、遠い目をして、女子高生四人が常識とはなんぞや? と考え込んでしまっていた。さもありなん。
「しかし、知らない内に随分と人族は荒れている様ですね」
「そうなんですかテアさん?」
「ええ、私がまだこの世界に居た頃は、魔王を倒す為に人間全てが協力していましたから……。それが今は王政は乱れ、教会とは互いにいがみ合い、挙げ句に勇者優遇策、極まった。と、言う感じですね」
「いやに詳しいな?」
「確かにね。何か特別なソースが在るの?」
「いえ、一緒に来た方達に今のアースガルドに付いて調べて貰っただけですよ。何故こんなに勇者召喚が起こってしまったかも含めてですが」
「それで理由は何なんですかテアさん?」
「王権の失墜と教会の台頭、力在る騎士達にすり寄った結果……ですかね」
「私の獲ている情報以上に教会と騎士達は力を持っている様だな」
「ええ、一番最初は貿易を考えてあそこに王都を作り、魔族や魔物に対する備えとして騎士団を魔族領の近くに砦を建て駐屯地にしました。ですが時代が下がるにつれ、直系の者達がそれぞれで小国を作り、安寧が人々に宗教という癒しを求めさせ、暮らしの向上で商業が発展し、騎士は自らの力を誇示する様になって行った様です」
「どうしようも無いな」
「耳が痛いわね。大きな問題としては貴族と平民の格差が問題ね。権力に慣れすぎたせいで自分を特別と思い込み、平民相手なら何をしても良いと思っている者が多いわ。しかも、騎士になるには貴族もしくは貴族の紹介が必要だから、ここ数十年騎士のプライドは無駄に高くなるばかりだそうよ」
「そのようですね。しかも教会も独自の力を持ち始めた事で王政から離脱しつつあります。小国も自らの呼び出した勇者が魔王を討てば地位が上がる。と、思い込んでいるようですね」
なるほど、それで色んな所で勇者召喚が起こってるのか。しかも、直系から傍系まで無駄に召喚方法が伝わってるみたいなのがまたなんとも。
まあ、でも。
「そんなにいっぱい国が在るの?」
でっかいのは東西南北のアリスベル、フレイス、カリグ、ロークラじゃ無いの?
私の言葉にまたもや皆が固まる。
「そう言えばさっき見た記憶で、白亜さんは東西南北の大都市四つしか知りませんでしたね」
フープ見た時思ったけど以外にここでかいよね? まだ沢山在るの?
「そこも含めて要勉強ですね」
「だって図書館で地図調べたらそんなに沢山無かったし……」
「え~と、ご主人様? この間はアリスベルに行くのが決まっていたから、その周辺と大きな都市だけ調べたんじゃ無いんですか? てっきり私はそうなんだと……」
「私も同じですね。まさかあの地図だけで把握した気になっていたとは思いませんでした」
おふ! マジですか? 私はあの地図で全部だと思ってたよ!? 意外に小さい世界で国は少ないんだな~。位に思ってたんですけど!?
「あぁ~、これは私と瑠璃のせいも在るな。こいつの言いたい事は大体分かるから皆まで聞かないし、それで通じると思い込んだか」
「確かにそうですね。ハーちゃん途中抜けて答えだけだったり、疑問部分しか言わないですから」
私の言葉足らずな事を二人して反省し始める。
止めて! そんな反省されたくないから! くっ! まさか異世界で報・連・相の大切さを思い知る事になるとは思わなかった。
「白亜さんには教える事が沢山ありそうですね」
本当にね!? 私もそんなに在るとは思わなかったよ! なんも知らねえな私! 常識プリーズ!! 何処のコンビニに売ってますか!
「白亜もそうだが、私達も色々足らない自覚はある。この機会に色々教えてくれ」
「わかりました。正直白亜さんと澪さんの記憶を見て思ったのですが、行き当たりばったりも良い所ですからね。特に白亜さんのお仲間達、アリシアさんもアクアも才能でゴリ押しして魔法を使っているだけですし、他の皆さんも基礎がなっていません。」
いきなり凄いダメ出しが!? 皆ショック受けるてるから止めたげて!
「澪さんも力が扱い切れず小さく纏まり過ぎです。お嬢様はこの世界の戦いに未だに順応出来ていません。そして、特に問題なのが白亜さんでしょう。ミニゴブリンとして生まれ、最弱からのスタートでは戦い方を変えなければいけなかったし、短期間に何度も体の大きさが変わった為に、正直地球の頃よりも身体は丈夫な上に力も付きましたがかなり弱くなりました」
うわ、はっきり言われた。
しかしそれは私自身が感じていた事でもある。死ぬ前は長い間動く事が出来なかったが、今はその時出来ていた事すら出来なくなっている。
なんとかしなきゃとは思ってるんだけどね。
「過去に捨てたとはいえ、この身は神の物なので私は世界に影響の在る事に対して制約が有ります。しかしそれでも、魔法や常識などの知識に付いては私が教えましょう」
「ありがたいけど、戦闘は自分でなんとかしろって事?」
「それは他の方に頼みます」
「他の方? ってそうだよ!? さっきは流したけど一緒に来た方って誰だよ! 他にも神が紛れてたのか!」
「その通りですが?」
だから止めて! そのそれが何かおかしいですか? みたいなの!?
するといきなりこの部屋のドアがバンッ! と、言う音ともに乱暴に開け放たれる。
そこに居たのは、少し明るめのピンクの髪を腰元まで伸ばし、その頭の上にはピコンッ! と、音を立てそうなネコ耳をピンと立たせ、少し眠たげな顔をしている。15~16才の少女だった。
背中の後ろ側からは左右からそれぞれ二本の尻尾が揺れているのが見える。俗に言うネコマタと呼ばれる者だろうか。
服装は黒い法衣の様な服で襟と袖に装飾がなされ、足の両側には腰元まで大胆にスリットが入り、健康的で艶かしい足が覗いている。更にはニーソの様な物まで穿いている辺り分かっている。と、私は言いたい。
そんな突然乱入してきたネコ耳美少女は、私達の視線を無視するかの様に部屋の中を見回すと、耳の辺りに付いていたらしい服には合っていなさそうな鈴がチリンッと鳴る。
私は一応警戒の為に前に進み出ると、ネコ耳美少女の瞳が私を捉える。その瞬間、眠たげだった彼女の瞳が驚いた様に大きく見開き、一瞬その動きを止める。そして何かを堪える様に一度顔を伏せるとネコ耳美少女が私に向かい一直線に突進して来た。
くっ、敵なのか!?
「ご主人様!」
「ハーちゃん!」
皆の声を聞きながら私はネコ耳美少女の襲撃に備え、腰を落として構えると「ご主人様~~~~!」と、ネコ耳美少女に熱烈な抱擁を食らったのだった。
…………アレ?
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