第166話うるせぇ何が運命的だ。はずいわ!
(
言うや否や剣を振りかぶり向かって来る澪。その怒涛の攻撃をハクアは澪の言葉の通り刀で受ける。
ガッ! ガッ! キンッ! ガッ! ガッ!
互いの間で鳴り響く金属音。何度か切り結ぶび、一際強くぶつかり合った反動を利用し互いに距離を取るが、着地と同時に一息に距離を詰め澪が仕掛けてくる。
「まだまだ行くぞ!」
「くっ!」
澪の攻撃は更に激しさを増しながらハクアに襲い掛かる。
ガッ! キンッ! ガッ! キンッ!
四度目の攻撃を受けると同時、鍔迫り合いに持ち込まれる。
「かはっ!」
鍔迫り合いの最中、押し込まれない様に両手で力を込めた瞬間、澪は武器を片手に持ち変えると、空いたもう片方の拳でハクアの腹部に拳をめり込ませた。
「つっ! くっ! ゴホッ!」
しかしハクアも攻撃の瞬間後ろに飛び、何とか衝撃を逃がしダメージを最少に抑える。だがそれでもダメージは大きく、行き場を求めた空気が口から漏れ出し咳き込んでしまう。
そして、その僅かな隙を見逃すような相手では無く、今度は一気にハクアの後ろに回り込むと死角から襲い掛かる。
ガッ! キンッ!
ハクアは何とか攻撃を読み澪の攻撃を受け、鍔迫り合いになるのを嫌い距離を取る。
「どうした白亜。こちらで手にいれた力を見せずに終わるつもりか?」
(……攻防は
「そっちこそ、
「ああ
「ハッ、随分と自信満々だな?
「ああ、勿論だ。それでお前を
「そう上手くいくかな」
「行くさ、この私が失敗する筈が無いからな。それにしても今の私達は何とも運命的だと思わないか」
会話の途中にいきなり襲い掛かる澪、しかしハクアもこの攻撃を読み切っていた。今度は
後ろに下がると同時に刀を空間にしまい、大振りの攻撃で体の正面を空けた澪の懐に、滑る様に移動しながら震脚で踏み込み肘撃を打ち込んだ。
しかし、澪もそれを紙一重で避けると、逆にハクアの顔面に向い裏拳を叩き込む。その攻撃を屈んで回避したハクアは続く動きで足払いをするが、難なく回避され、澪はバク転を繰り返しながら距離を取る。
「全く。話の途中で攻撃を仕掛けてくるとは、相も変わらず躾のなってない奴め」
「うるせぇ何が運命的だ。はずいわ!」
「そう言うなよ。私は今さながらリア王になった気分なんだ。そうだな、配役的に差し詰め……お前はオズワルドと言った所か?」
「人を男に例えるなよ。それに、その配役なら
「いいや。お前は
「はぁ、何時までもお前の馬鹿話に付き合ってる暇は無いし。手早く倒させて貰おうか」
ハクアは【雷装鬼】を発動させ【充電】を始める。それを見た澪も【闘気】を発動させ剣を空間にしまい水転流の構えを取る。
「つれないな。もっと楽しませてくれよ白亜。しかし、何だそのスキルは【闘気】でも【魔闘技】でも無さそうだが?」
「これは種族特有の固有スキルだよ。そっちこそ空間魔法覚えてんのかよ
「白から金とは何処の戦闘民族だ羨ましい。空間魔法はまあ色々あって覚えた」
「そうかよっ!」
ハクアは澪に向い正面から突っこみ顔面に正拳を叩き込む。──が、澪はその拳をいなしながらハクアの手首を掴み、さきのハクアを真似るかの様に震脚を用い肘撃を繰り出す。
しかしその攻撃が当たる寸前、ハクアの顔面まで数㎜の所で、澪の肘が空中で何かに当たりハクアへの攻撃を阻む。
予想外の出来事に澪の動きが僅かに鈍る。その一瞬の硬直にハクアは【魔法拳】のスキルを使い、拳に風を纏わせ澪の顔面を狙う。
しかし、澪も恐るべき反射速度で【結界】を使い、更に両腕をクロスさせガードする。
ハクアの拳が【結界】に当たった瞬間、轟音と共に澪の張った【結界】が崩れ、解放された拳の風で吹き飛んでいく。
「くっ! この程度!」
吹き飛んだ澪が地面に後を残しながら何とか止り前を見ると、澪を吹き飛ばすと同時にハクアが放ったファイアアロー眼前へと迫る。
澪は咄嗟にアースウォールを発動させると、地面から壁が現れると同時に矢が突き刺さり間一髪攻撃を防ぐ。
ファイアアローを放って直ぐ、ハクアは結果を見る事無く澪に向かって走り距離を詰める。
ハクアの目が捉えたのは、ファイアアローをアースウォールで防がれる光景だった。
(ちっ! 防がれたかでも──)
ハクアはアースウォールで視界が防がった事でこちらが見えない筈──そう判断して壁を回り込もうとする。しかしその瞬間ハクアを嫌な予感が襲う。
ハクアはその予感に従い体の周りに展開していた【結界】を、澪が作った壁の方に向けて最大出力で展開する。すると展開すると同時、澪の作った土壁が内側から弾ける様に脹れ上り、石礫となってハクアを襲う。
(あぶね!)
石礫を【結界】で何とか防ぎきったハクアは、速攻が潰された事でもう一度距離を取る。
「全く【結界】を体に纏わせて戦うとは器用な奴め。それにそのスキル接触ダメージまで在るとはな。なかなか有用なスキルだな」
「そりゃどうも」
「こんな感じか?」
そう言葉にした瞬間、澪はハクアと同じ様に【結界】を体に纏わせて構える。
「人の苦労をそうやって簡単に──お前のそう言う所が嫌い何だよ天才め!」
「ふっ、誉め言葉だなっ!!」
今度は澪が先手を取り、ストーンブレットを放つ。
ハクアは弾幕の薄い箇所を見極めると、前方に【結界】を厚く展開し石の雨の中に身を投げ込み一直線に突っ切って行く。そして、今度は直前で飛び上がり、空中で体を捻りながら浴びせる様な回転踵落しを放つ。
本来ならば隙が大きくなりすぎて使用しない攻撃方法だが、こちらに来てからのハクアの戦い方を知らず、先程見たハクアオリジナルのプロテクトアーツを見たばかりの澪は、罠の可能性を拭いきれず攻撃に移る事が出来なかった。
(チッ! 乗って来ないか)
ハクアの方もこの隙に攻撃してくれば、何時でも迎撃出来る準備をしていたが、澪が乗って来なかった事でこのまま踵落しを続行する。
ガギィン! と、ハクアの攻撃が両手をクロスさせ防御した澪の腕に当たると、お互いが体に纏わせていた【結界】同士がぶつかり干渉し、まるで金属がぶつかりあった様な音が戦場に鳴り響く。
しかしハクアの攻撃はそこで止まらず、更に力を込めて澪の張った【結界】を破壊すると、【結界】が壊され体勢を崩した澪に向い、自らの体を【結界】で支え、本来なら有り得ない挙動でもう一回転して更に踵落しを澪に叩き込む。
しかしハクアの放った攻撃は自ら後ろに倒れこむ事で回避される。
澪はそのまま体を縮め、逆立ちの要領で手を頭の下に着け、腕の力で地面から体を押し上げ、弾かれた様に下からハクアに向い、ドロップキックを浴びせる。
回転踵落しを放ち体勢が崩れていたハクアは、未だに地面に足が着いていない空中で、即座に【結界】を足元に張り即席の地面を作り、体勢を整え両腕で澪の攻撃のベクトルを逸らし、何とかドロップキックの軌道をずらす。
軌道をずらされた澪は、それでも慌てず空中で体を捻りながら、空間からダガーを取り出しハクアを切り付ける。
しかしハクアにとってもその攻撃は想定の範囲内。
澪の攻撃を反らし、両腕の自由が確保されると同時に、同じく空間からナイフを取り出し澪の攻撃をナイフで受ける。
互いに体勢が崩れた状況での攻撃の影響で、お互いの体は吹き飛び再び離れて行く。
だが二人は吹き飛びながらも、手に持つ武器を互いに投擲、二人の中間で互いの投げた武器がぶつかり合う。そしてその結果を見届ける事無く、二人は同時に魔法を放ち、魔法の起こす爆発に二人は更に吹き飛ばされた。
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