第117話クレーム来てたんだ!!

 あれ? ここ何処?


 私は気が付くと何もない真っ暗な空間に居た。


 ふむ。寝てる間に死んだか? 寿命来た?


 《シルフィン:死んで何ていないから大丈夫ですよ》


 あっ、駄女神だ! いきなり呼び出すなよ。混乱するから。


『シルフィン:至って正常運転でしたが』


 それで何の用? 意味も無く呼んだんじゃ無いでしょ?


『シルフィン:ここに呼んだのは貴女の不調の原因を取り除く為ですよ』


 やっぱり勇者?


『シルフィン:ええ、本来なら【喰吸】のスキルはギフトに対して使うと一時的に封じる効果が有るんですよ』


 そうなの? てっきり出来ない事を無理矢理したからだと思った。


『シルフィン:ハッキリと言うと、幾つかのスキルは私達女神が関わっていない物が有るんですよ。何故か最初から在ったり、何時の間にか増えていたり。【喰吸】もそんな私達が把握出来ていないブラックボックスの内の一つなんです』


 そうなんだ? 因みに他には?


『シルフィン:教えませんよ♪ って、そこ! 舌打ちしない! まあそんな訳で、そんな訳の分からない物は本来危ないから取得出来ないようにスキル一覧から除外してあった筈何ですが……』


 何故か私の取得項目にあった……と?


『シルフィン:ええ、どうせ貴女は止めろと言ったらむしろ喜んで取るでしょ』


 失礼な! 取るけどさ、それで? 何でそんな対勇者用スキルみたいのが私を不調にするの?


『シルフィン:それは……勇者側のシステムに邪神の力が入り込んだ為ですね。まあ詳しい所は省きますが、要は異物のせいでエラーが起きてるんですよ』


 なるほどね。つーか、邪神に簡単につけ込まれる勇者システムって……。


『シルフィン:そうなんですけどね。まあ今回は、此方の都合で迷惑掛かっている部分が大きいので、今回私が【喰吸】のスキルを解析して貴女専用のスキルに作り替えました』


 おお! 肩入れや手出しはしないんじゃ無かったの?


『シルフィン:最近あの世界は私達の手を離れて来ている部分が多いので何が起こるか分かりません。人間の領域では特に聖国や王都がそうです。今回の勇者召喚は何から何までおかしいですからね。そんな訳で肩入れ……と言うよりは、魔族から二度人々を救った報酬ですね』


 そんなシステムが!?


『シルフィン:一応勇者にも有りますよ。高位の魔族を倒したりすると、レアなスキルを授けたり武器や防具を与えたりと』


 へ~。


『シルフィン:まあいつも通りチートと言う訳でも何でも無く。貴女専用のにチューンアップしただけですがね』


 それでも良いよ。ありがとう。


『シルフィン:今回チューンアップした事で変わったのは、まず【喰吸】のシステム画面を増やしました。詳細は後で説明します。次に勇者のギフトに対する耐性。これでもう具合が悪くなる事は有りませんよ。そして取得スキルの選別。

 今までスキルが複数ある場合はランダムでしたが、吸収後さっき言ったシステム画面を開く事で、どのスキルの経験値を取得するか選べる様になりました。これにより複数回に別けて経験値を取得する事で、自分が獲たいスキルを取得しやすくなりましたよ。

 もう一つは、今までは倒した者にしかスキルを使用出来なかったのを、生きている相手からでも使える様にしました。注意点は二つ、生きている相手からスキルを取得する場合は、今まで通りランダムになると言う事。更に倒した場合よりも取得経験値が減少すると言う事。

 そして利点としては、生きている相手から奪った経験値分、相手のスキルレベルが下がる様になります。

 最後に勇者のギフトを吸収する事で貴女のステータスが上がる様になりました。簡単に言えば、ギフトを吸収するとヘルの【自己強化】と同じ様に強化ポイントが増え、それを1ポイント1でステータスをHP、MPは1ポイントで2上げられます。貴女は自由に割り振り出来た方が面白く育ちそうですからね』


 おお! 確かに前よりもスキルが私向きに成ってる。これで経験値とかもっと上がったら言う事無いんだけどな?


『シルフィン:却下で♪』


 ですよね。でもありがと大分楽しめそう。


 《シルフィン:ええ、私達も楽しみに見ています。いつものメンバーは全員協力してくれましたからね》


 マジか! 私のスキルの為だけに!? 後で礼言っといて。


『シルフィン:いえ、貴女の為だけでは有りませんよ。今回勇者が各地で大量に召喚された為、いろいろとアップデートしたんですよ。貴女のはその中の一つです。まあかなりのリソースは割きましたけど』


 何アップデートしたの?


『シルフィン:今回は前から要望の多かったので、気力と言う物を新しくステータスに追加しました。今まで武技は、MPを消費して使っていましたが、今回から気力を消費して発動する様になります。これにより、魔法職が魔法を使う為に武技を使いづらい。と、言うクレームを回避出来る様になったんですよ!』


 クレーム来てたんだ!!


『シルフィン:正直かなり……酒場とかでも事ある毎に魔法使いの事を考えて無いとかグチグチと……で、でも、そんなクレームとももうおさらば! ああ、因みに貴女の【鬼気】も気力を消費して使うようになりました。レベルが上がると消費が少なくなります』


 その方が分かりやすいか。


『シルフィン:それと、これもクレームが多かった案件なんですけど、ステータスを調べた時、防具とアクセサリのup分が加算されて表示される様になりました』


 それは助かるかも。自分は良いけど、人間相手の時は特に。


『シルフィン:ですよね。まあ前に話した理由の通り、武器に関しては今まで通り表示しませんがね……』


 武器は自分のステータスに耐えられるかどうか。ってだけだから要らないでしょ。


『シルフィン:はい。それと、全員に礼が言いたいなら直接言えば良いですよ』


 直接?


 私がそう言うと何もない空間にいきなり扉が現れ、そこからティリスを初めとする、何時ものメンバーが扉をくぐりやって来る。そして……もう一人台車に乗せられ土下座をする、見たことの無い奴が一緒に登場して来た。


 ……ふう、皆私のスキルの事ありがとね♪


『ティリス:いえいえそんな。お礼なんて良いですよハクアさん♪』

『ほぼ全員:この二人コレをそのまま無かった事にする気だ!?』


 はぁ~、で? コレは何?


『ティリス:えっとですね。彼女は私の後輩で今回カリグを担当した召喚神の──』

『エリコッタ:え、エリコッタ……です』


 そう名乗った女神は未だに土下座をしている。


 いや、顔上げろよ。


『エリコッタ:い、いえまだ先輩方から許可が出ていないのです!』


 その言葉に辺りを見回すと全員がティリスを見る。


『ティリス:ちゃんと反省しようねエリちゃん』


 もう顔あげて良いよ。


『エリコッタ:い、いえそんな訳には……』

『ティリス:ハクアさんが良いって言ってるんだけど?』

『エリコッタ:はっ、はいです!』


 ティリスの言葉に慌てて立ち上がったエリコッタと目が合う私。


 ふむ、髪型は長めのショートボブにパーマが軽く掛かった様な翠色の髪。顔立ちも微妙に幼く、全体的に庇護欲を誘う感じの小動物みたいだな。


『ティリス:エリちゃん言う事は?』

『エリコッタ:はう。は、ハクア様この度は誠に申し訳ありませんでしたです!』


 様……だと!? えっと、とりあえず様は止めて。それと……勇者ってあんたが選ぶの?


『エリコッタ:で、ではハクアさんで……えっと、基本的にはノータッチ何ですが、女神によりある程度選別されるです』


 どんな基準?


『エリコッタ:勇者召喚は召喚者の力量や運。それに召喚時に力を借りる神により変わります。私の場合は特殊なギフトを授かる方が多いです』


 そんなんだったんだ?


『シルフィン:勇者召喚担当の女神は五人程居ますから』


 多いな!


『シルフィン:それぐらい居ないと回らないですから。それに、十人位なら何とか一人で対応出来ますがそれより増えると何人かの女神に力を借りますしね』

『エリコッタ:ですので、今回あの勇者柏木 政人が呼ばれたのは私のせいでも在るです』


 とりあえず、弾かなかった理由は?


『エリコッタ:元の世界では特に悪さもしていなかったので、まさかあんな風になるとは……それに、言い訳の様になりますが女神はあくまで選別する訳では無く、女神毎に授けられる力が違うだけなので余程で無いと介入はしません』

『シルフィン:ええ、あまり知られていませんが召喚神の役割はギフトを授ける事と、召喚者の魔力を使い道を繋げる事ですからね。大体の基準が授けられるギフトと波長の合う者です。余程の事が無ければ細かく何て選びませんよ』


 ふーん……洗脳とかはされて無かったよね。


『エリコッタ:それは無いです』


 そっか、ありがと。


『ティリス:もう良いんですか? 何ならお仕置きしていっても良いですよ?』


 コラコラ止めとけ。エリコッタが『ひうっ』とか言って震えてるから。ありがとねティリス。


『ティリス:ど、どういたしまして! ほら、エリちゃんも』


『エリコッタ:ありがとうございますです! あの、私からも迷惑を掛けたお詫びに──』


 そう言って、エリコッタはゼーゲンの腕輪を手に取り強化してくれる。


 ▶召喚神エリコッタの力がゼーゲンの腕輪に注がれゼーゲンの腕輪+3に強化されました。


 ありがと。って言うかコレ今どんな感じ何だろう?


『シルフィン:バランスは崩れてはいない様ですね。だからそこ! 舌打ちするなって言って言ってるでしょうに!』


 まあ良いや。えっと……。


 名前:ゼーゲンの腕輪+3

 HP:100

 MP:100

 物攻:30

 物防:30

 魔攻:30

 魔防:30

 その他:各属性耐性が10%上がる

 備考:ステイタス神ティリス、職業神クラリス、輪廻神イシス、鍛冶神ブリギット、召喚神エリコッタの加護を受けた腕輪


 おお! 何時の間にか結構上がってる!


『シルフィン:まあ、今の貴女ならもっと良い物が買えるでしょうが、それでも結構な装備では有りますよ』


 そっかなら良いや。


『エリコッタ:あっ、ハクアさんこれからは私もこちらにお世話になるです』


 そうなの?


『エリコッタ:はい。神城 結衣がそちらに居るのでそのサポートも兼ねてです』


 でも勇者は後二人居るでしょ?


『エリコッタ:それなんですけど、カリグの方で女神が関与出来ない様にしている様なんです。だからハクアさんの方に居る神城 結衣のサポートだけで良いんです』


 ……そっか。よろしくねエリコッタ。


『エリコッタ:はいです!』


 しかし、女神を拒絶する教会とは如何に……。


『シルフィン:それはそうと、そろそろ起きた方が良さそうですね。アリシアが心配して見に来てます』


 マジか! じゃあそろそろ行くよ。ありがとね。


『シルフィン:ええ、これからも頑張りなさい』


 うーい。


 そして私は目を覚ました。

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