第102話(((ひ、否定できない)))

 休憩を終え階段を降りる途中エレオノが瑠璃に質問する。


「ルリちゃん前衛やる。って、言ってたけど大丈夫なの?」

「今までは対して強く無い奴等だったけど、ボスになれば今までみたいにいかないよ」

「う~ん。多分大丈夫です。コレが有りますから」


 そう言って瑠璃が今まで使っていなかった鉄扇を掲げて見せる。


「コレってその鉄扇の事? そんなので何とかなるの?」

「瑠璃は元の世界で柔術習ってたって言ったよね?」

「言っていましたね?」

「そう言えば瑠璃先輩って凄い有名な武術が使えるとかって噂が?」

「そうそれ、瑠璃の家は水転流って言うオリジナルの柔術だったんだよ。その中には鉄扇を使った物もあって瑠璃は得物の中では鉄扇が一番得意何だよ。多分、今のエレオノでも瑠璃の防御を突破するのは難しいと思うよ」

「へ~、今度模擬戦しよ! ルリちゃん」

「良いですよ」


 う~ん。エレオノもなかなかに能筋な思考だよね? そう言えば、元の世界の経験が有効なら元から使えた技とかってどうなるんだろう?


 〈時間は掛かりますがスキルとして使える様になるらしいです〉


 そっか。


「そう言えばご主人様、私も一つ聞きたかったんですけど、ここのボスはオーク将軍単体で出現するんじゃありませんでしたっけ?」

「あっ、そう言えばそうだったかな」

「あれ? でもさっき白亜先輩。雑魚が出たら私達に相手してくれって言いませんでしたっけ?」

「はい、だから私も気になりました」

「それは……大変遺憾だけど私が関わると普通とは違う事が多々起きるからその警戒ですな……」


(((ひ、否定できない)))


 そんな話をしている間に階段の終わりが見え全員で慎重に降りていく。全員が階段を降り終るとそれを感知したかの様に辺りに明かりが灯る。

 光に照らされたボス部屋は今まで私達が見た中では一番小さく、15メートル程の真四角の部屋だった。

 その中央に今までのオークよりも二回り程大きい、要所を守る鎧を着け腕に小さな楯を装備したモンスターが立ち、その手には長い槍の先に斧が付いている武器を持っていた。


 あれは、ハルバートか。オークの癖になかなか良い趣味の武器を……。


「瑠璃、あれは遠心力で威力が倍増するから気を付けて」

「はい。分かりました」


 瑠璃に注意促しつつ辺りを見回し、モンスターが一匹なのを確かめ相手のステータスを確認する。


【鑑定士】スキル成功

 オーク将軍

 名前:ブブゼラ

 レベル:10

 HP:800/800

 MP:150/150

 物攻:280

 物防:200

 魔攻:100

 魔防:150

 敏捷:80

 知恵:40

 器用:35

 運 :50

 スキル:【本気】【頑強】【突進】【呼声】【凪ぎ払い】【一閃】【疾風突き】【咆哮】【蒼天破斬】【雷鳴突き】


「さらっと名持ちだし……」

「ハクアやっぱり大当たりだね? 【呼声】も有るから仲間呼ぶ気満々だね」

「えと……ご……ご主人のせいじゃありませんよ?」

「……ありがと」


 優しさが痛い!!


「大丈夫だよハーちゃんもう大分慣れましたから」


 瑠璃は一言言うとそのまま無造作にオーク将軍へと歩み寄って行く。

 その行動に気が付いたオーク将軍はハルバートを構え瑠璃へと突進する。その行動に対して瑠璃は慌てる事無く腰へと仕舞った鉄扇を取り出しその場に留まり迎え撃つ。

 オーク将軍は突進したままハルバートを突き出し瑠璃を貫こうとするが、ハルバートの切っ先が瑠璃を貫くかと思われた瞬間、その切っ先を鉄扇で横から弾くと、そのまま一歩踏み込みオーク将軍の喉元へと、突進の威力を利用したカウンターの鉄扇を突き入れる。


「ゴブアァあ!」


 鉄扇を喉元にカウンターで突き込まれた事でオーク将軍は苦悶の声を挙げる──が、ステータスの違いかそれで止まらずにハルバートの斧の部分で攻撃を加えようとしてくる。


「ダークボール」


 しかしその瞬間、それを最初から見越していた様なタイミングで、クーの放ったダークボールがハルバートを持つ腕に向かって行く。それを察知したオーク将軍は瑠璃への攻撃を素早く諦めると、脅威になりそうなダークボールを迎撃する。

 その隙に瑠璃はオーク将軍の後ろへと回った──が、オーク将軍はそれを見逃さず、瑠璃に向かって体を大きく捻り込み全ての力を突きに注ぎ込む槍技【一閃】を繰り出す。

 しかし、相手も流石だが瑠璃も負けてはいない。

 その全力の一撃も慌てず水転流鉄扇術【流扇】で受け流した。


 【流扇】は相手の攻撃を鉄扇で受けその力の全てを自分の好きなベクトルに流す技だ。


 そして、力のベクトルを地面へと変えられた事でハルバートは地面へと突き刺さり、オーク将軍腕はハルバートのしなりに耐え切れず、武器を握る手が吹き飛ばされる。その一瞬を見逃さず瑠璃は鉄扇を拡げ扇の渕の部分で相手を切り裂く、水転流鉄扇術【扇刃】をオーク将軍の腕に向けて放つ。


「ブギャグゴ」


 【扇刃】を食らったオーク将軍の腕は中程まで切り裂かれ堪らず後ずさる。

 そのオーク将軍にいつの間にか近付いて来たクーが【魔法拳】でダークボールを手に纏い殴り掛かる──が、その攻撃は何とか間に合ったオーク将軍の楯で受け止められて仕舞った。

 だがそれでも全ての威力を殺し切る事は出来ず、その巨体は壁に向かって吹き飛んで行く。


 うわっ、ボス相手に一方的何ですけど。


「何か……見てるこっちが可哀想になる位、今の所一方的ですね?」

「まあ、ここからが大変でしょ」


 そう言った私の目の前でHPを半分削られたオーク将軍がスキル【本気】が発動しステータスを上げていた。


【鑑定士】スキル成功

 オーク将軍

 名前:ブブゼラ

 HP:400/800

 MP:100/150

 物攻:280→350

 物防:200→250

 魔攻:100→125

 魔防:150→187

 敏捷:80→100

 知恵:40→20

 器用:35

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る