第78話「マスコット枠が……ゴブ」

「精霊……ですか? この子が?」


 〈はい、そうです〉


 コボルト達をドゴォ! して倒した私達がお宝ゲットだぜ! して開けた宝箱の中から更に精霊ゲッチュ……何だコレ?


 〈マスターの説明の仕方の問題かと……〉


 何と!?


「貴女は精霊何ですか?」


 〈キュルー?〉


 あれ? 何これ可愛い?


 宝箱から飛び出して来た精霊はアニメやゲームとかで出てくるカーバンクルの様な姿で狐? を小さくしたような感じ。しいて言えばパズルゲームのじゃなく、最後のファンタジーの召喚獣的な感じだった。


『シルフィン:危ない表現止めてくれません!?』


 大丈夫! 国民的な物だから。


「どうしましょうご主人様?」


 精霊は私達の言葉が分からないのか首を傾げて私達を見ている。


 〈アリシアになついて要るようですし【精霊契約】をしてはどうですか?〉


 はっ! そのスキルが有るから精霊術師に成って貰ったんだった。


 〈……マスター〉


「【精霊契約】良いんじゃない?」

「誤魔化したゴブ」


 なんの事かなアクアさん?


「分かりました。やってみます」


 〈【精霊契約】のやり方は分かりますか?〉


「大丈夫です。ご主人様の【奴隷術】と同じですよね?」


 〈はい、同じです〉


「分かりました」

 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 ご主人様とヘルさんから【精霊契約】を勧められた私は目の前で首を傾げているこの子を改めて見る。


 動物の様だけど不思議な雰囲気と力を感じさせる。


 それに何より可愛いです! クリクリな瞳、もふっとしている毛や尻尾、小動物な行動、精霊ってこんなに可愛いんですか!! だとしたらスキル持ってて良かったです! と、いけないいけない、早くやらないとですね。


 私は目の前の子に向いスキルを発動する。すると──。


 ▶カーバンクルに精霊契約を使用しますか?

 はい←

 いいえ


 ▶【精霊契約】をカーバンクルに使用しました。


 ▶カーバンクルが貴方をマスターと認めました。

 スキル成功です。


 ▶名前を付ける事で契約完了です。カーバンクルに名前を付けて下さい。


 えぇ! 名前! そんなのいきなり言われても……。


「どうしたのアリシア?」


 いつの間にか近付いて来たエレオノ達が話し掛けてくる。


「えっと、この子の名前を付けるそうなんですけど、いきなり言われても……と」

「そうなんだ。アリシアの好きに付ければ良いよ」


 ご主人様はそう言って下さるけど正直何も思い付きませんよ!

 えっと、カーバンクル……カー君? カーちゃん? これは良く分からないけど違いますね。ダメな気がします。カーバンクル、……はっ! クルちゃんとか可愛いです! でもそんなんで良いんでしょうか?


 私が多少混乱しつつ悩んでいると耳をペロッと舐められ、思わず「ひゃうっ!」と声を上げて仕舞う。


 いきなり耳を舐められて変な声出ましたよ!? 耳は弱いのに恥ずかしいです。


 〈キュル~〉スリスリ。


 私が困っていると思ったのかカーバンクルが足にすり寄って来て見上げてくる。


 そうだ。うん、コレなら良いかも知れません。


 私は足元にいるカーバンクルを両手で持ち上げて顔の前まで持ってきて目を合わせる。


「あなたの名前はキュールです」


 ▶カーバンクルの名前をキュールに決定しました。

 契約完了です。


「キュルー!」パタパタッ!


 キュールと言う名前を気に入ってくれたのか、取れるんじゃ無いかと心配になるほど尻尾を振っている。そして、キュールはそのまま私の首元に巻き付き、頬にすり寄って来る。


 本当に可愛いですねこの子は!

 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 アリシアが名前を付けた精霊キュールはアリシアの首に巻き付き頬を刷り寄せていた。


 ちょっと羨ましい。しかしアリシアも喜んではいるけど冷静だ。その辺はすこし見習いたい所だね。


「そういえば、その精霊何か出来るの? ペット枠?」

「「……ハクア」」


 冗談冗談。


 〈精霊には幾つかの種類が有ります。一つは契約した大型の精霊を呼出し大型魔法を行使して貰う物、これは広域の破壊魔法等に分類される物です。

 二つ目は契約した精霊に魔力を与え、その代わりに精霊の力を借りて攻撃魔法を行使をする物です。これは有名な物だと四大精霊等が入り、彼らの力を借りてそれぞれの属性の強力な魔法や強化などが出来ます。

 そして最後が今アリシアの契約した様な動的精霊です。この精霊は幾つかのパターンが有り、キュールの様に主人の側にずっと居る者、呼出しに応じて行動し用事が終ると帰る者が居ます。

 彼等はレベルが存在し主人と共に強くなり、共に成長します。前者との違いは、前者が主人の命令や行動に従うだけなのに対し、動的精霊は自らの考えで行動し戦ってくれます〉


 ふむ、つまり召喚獣とユニットモンスターの違いみたいな?


 〈……大体合ってます〉


 あっ、何か不服そう。


「じゃあ、キュールは私と一緒に戦ってくれるんですね」


 〈キュー!〉


「良いな可愛い」

「ボクも羨ましいかな」

「マスコット枠が……ゴブ」


 アクアさんその枠狙いだったの!?


 〈今キュールのステータスを出します〉


「有るんですか?」


 私もちょっとびっくり。


 名前:キュール

 進化:0

 レベル:2/20

 種族:精霊(カーバンクル)

 HP:200

 MP:300

 物攻:15

 物防:25

 魔攻:15

 魔防:30

 敏捷:50

 知恵:45

 器用:30

 運 :80

 固有技:

【ルビーの護り】、【ルビーの癒し】

 スキル:戦闘系スキル

【噛みつき】【体当り】

 補助、その他スキル

【危機察知LV.3】【MP自動回復LV.1】

【ルビーの加護】


「……私より優秀な気配がする!!」

「そ、そんな事有りませんよご主人様!」


 アリシアさん。ちょっとわたしの目を合わせる見て言ってみ?


「このルビーの何とかって何なのかな?」


 〈【ルビーの護り】は結界を張る事が出来るスキルですね。【ルビーの癒し】は対象者のHPを回復する事の出来るスキルです。両方ともキュールのレベルが上がれば強化され強度と回復力が上がるようです。

【ルビーの加護】は常に発動するスキルで、契約者の結界の強度を上げる効果が有るスキルです〉


 うん、超優秀だね。


「アリシアの装甲が厚くなるのは安心できる」

「ご主人様ありがとうございます」

「確かにね。私達より墜ちやすいもんね」

「うん、後衛を狙うのは定石かな」


 さて、不意に遭遇した精霊は仲間に出来たし、残りのお宝ゲットしてさっさと下に行くかな。


 私達は宝箱の中身を全て取り出し何時もの処理をして攻略を再開するのだった。


 ▶【喰吸】のスキルが発動しました。

【暗視LV.4→LV.6】に上がりました。

【嗅覚LV.3→LV.7】に上がりました。

【土魔法LV.1→LV.2】に上がりました。


「……キャラと役割りが被ってる。あんなのに負けないゴブ!」


 アクアは誰にも聞こえ無い様に呟き、気合いをいれた。

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