第59話私には何も見えないんだけど!?
何とかカーチスカを倒した私達は傷を治しハクアの元に向かおうとしていた。
──その時、助けに来てくれた冒険者の集団の中に居た一人の女の子に呼び止められた私。その子は私の傷を治してくれた子だったが、私はその子にいきなり隠し持っていたナイフでお腹を刺されて仕舞う。
「えっ? いっ、つぅ!」
お腹は刺されたがナイフを引き抜かれたお陰で、スキル【再生】の効果が発動し徐々に傷口が塞がって行く。
でも、痛い物は痛い!!
痛みで声は出せないがまだ何かしてくる可能性が有るので女の子の事を睨み付ける。
「貴女何を──」
私が刺された事でアリシアが女の子に向かって吠える──だが。
「動かないでね?」
なっ! 身体が動かない。
女の子が一言言う。するとただそれだけで私の身体は指一本動かせなくなる。
周りを見るとどうやら私だけでは無く、この場に居る全員が同じ様に身体が動かない様だ。
「これは、魔力の糸?」
「あら、貴女なかなか優秀ね? この極細の糸が見えるだなんて」
糸? えっ? 何の事? 私には何も見えないんだけど!?
「まさか……貴女は人形使いですか?」
「フフッ、えぇ、そうよ」
人形使い! そうか、だから。
「人形使いって、あの魔力で色んな物を操るとかってやつか?」
私がアリシアの言葉に納得していると、冒険者の男がアリシアに質問する。
「えぇ、そうです。人形使いは魔力を使い色々な物を操ります。彼女は魔力を糸の様にして私達の身体を止めているんです」
アリシア、そんな事まで分かるの!? やっぱりアリシアは凄い。私と違って色々知ってるし、ハクアの考えとかもすぐに理解するし、私もまだまだ頑張らないと。
場違いな感想を抱きながらも必死に脱出を試みるが、身体は自分の物で無くなったかの様に全く動いてくれない。
「無駄よ。私の本気の糸は貴女達程度には解けないわ」
「貴女は……何者何ですか?」
「私はカーチスカよ。本物の……ね」
「なっ!」
その言葉に私は驚き声を上げてしまう。
「じゃあ私達の倒したのは貴女の人形だったんですね?」
「その通りよ。私の人形の中で一番の物だったのに! やっぱり自分で指示を出さないと駄目ね? あんなに簡単に壊されてしまうなんて」
あれが人形!? じゃあ私達はただの人形相手に全員で戦ってギリギリで勝てただけなの!? そんな、嘘……でしょ……。
本物のカーチスカの言葉に全員が押し黙る。しかし、アリシアだけはそれを気にせず会話を続ける。
「確か、ガダル……さんでしたか? 彼の指示はとりあえず殺すなでしたよね? 私達は大人しく貴女に従います。他の方達は見逃してくれませんか?」
なっ!? 大人しくって! 戦う前に諦めるつもりなのアリシア!?
〈今の私達は先程の人形との戦いで消耗しています。今この捕まって居る状況で戦っても勝機は無いでしょう。エレオノも傷は治っていますがHPはもうあまり無いでしょう〉
うっ! 確かにそうだけど!
「貴女何か妙なのが居るわね」
カーチスカは私の方を向き手を翳す。
「消せない? でも、封印は出来るわね」
〈あっ、くっ! すみ……ま……せん……。みなさ……どう……か、無事で──〉
ヘルさん! ヘルさん!
「くっ! よくもっ!」
「エレオノ落ち着いて下さい!」
「でもっ!!」
「大丈夫です! ですよね?」
アリシアはカーチスカの方を向き確認を取る。するとカーチスカは「私が解放すればもとに戻るわ」と素っ気なく言い放つ。
「そこのエルフはなかなか冷静ね」
「……そうでも無いですよ?」
「ふふっ、吠えるだけの奴よりは良いわ。面白いから貴女の願い、叶えてあげる」
そう言ってカーチスカは私達以外の冒険者を全て解放する。しかし──。
「歯向かわれても面倒だからね」
「やめ──」
カーチスカが冒険者達に手を向けた瞬間、掌から莫大な威力を伴った風が吹き荒れ解放された冒険者が、次々に吹き飛ばされる。
吹き飛ばされた者達は高所から地面へと落下し四肢が折れ、血を流しながら倒れ伏し誰も起き上がらない。
私はこの惨状を作り出した張本人を睨み付ける。
「あら? 怖い顔、安心しなさい約束通り誰も死んでは居ないわよ」
こうして私達は手も足も出せずカーチスカに捕らえられて仕舞った。
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