第38話ボクは鍛冶師としてハクアに最高の武器を作る

 ヒャッハー! 来たぜボス部屋!!


 〈マスター、なんですかその奇妙なノリは?〉


 奇妙なとか言われましたよ!?


 〈そんな事よりちゃんと聞いて下さいマスター〉


 そんな事とか言われた……あっ、はい。ごめんなさい。


 〈ここのボスはスカルライダーと言うボスだったのですが、今、女神様からメッセージが届きました〉


 メッセージ?


 〈はい、今から再生します〉


『女神様:ハクア真面目な話ですからちゃんと聞いて下さい。貴女も祭りの始まりについては聞いていますね? 今回は不死の王ノーライフキングの封印が何時もより外れている為、モンスターがより強化されています』


 なんですと!?


『その階にバジリスクが居たのもその為です。そして地下10Fのボスもスカルライダーよりも強力な、ガシャドクロになっているので気を付けなさい。じゃあここまで忠告したんだから簡単に死なないで下さいね? ボス戦楽しみにしてます』


 野郎、と言うかスカルライダーからガシャドクロってどういう変化? なんで海外のスカルから日本の妖怪に変わる訳さ!?


『女神様:正直モンスターの種類が十万超えていたのには驚きました……』


 種類で十万とかって何やってんの!? 人類滅ぼす気か!!


『女神様:そんな気は無かったんですけど気が付いたら、ね? あ、ありますよね。よくありますよね。こういう事って……』


 ね? じゃないでしょ!? どうしてそうなったよ!


『女神様:記憶にありません』


 政治家か!!


『女神様:とりあえず忠告はしたので気を付けて下さいね』


 うわ、逃げやがった。


「ご主人様どうしますか?」


「行くしか無い」


「「ですよね~」」


「ゴブ!」


「皆どうしたのかな?」


 あぁ、コロには聞こえてないんだっけ?


 〈聞こえるようにしますか?〉


 とりあえず保留で。


「コロ。今の鉱山内は不死の王ノーライフキングの封印が何時もより外れてるから敵が強いらしい」


「そのせいでバジリスクもここに居たって事かな?」


「うん」


 話が早くて助かるな~。


「えっと、ハクア達はそれでもボクに協力してくれるのかな?」


「当たり前」


「……うん。そっか、ありがとう」


「よっし、そうと決まれば早速行こう!」


 エレオノはようやく活躍出来る場面に来た為、待ち切れない様子で先を急かす。それに苦笑しながら大まかな方針だけ決めていく。


「とりあえず全員【魔闘技】発動。その後はコロとエレオノが前衛、アリシアとアクアが後衛、私が遊撃で適当に動く」


「「「了解」」」


「前衛二人は攻撃より回避優先ね」


「分かったよ」


「了解かな」


「アリシアは魔法を使いながら弓での攻撃も適宜に」


「分かりました」


「アクアは回復の生命線だからMPに気を付けて」


「ゴブ」


「よし、行こう」


 そして私達は初めてのボス戦に挑む為ボス部屋の扉を開いた。


「ご主人様!」


 アリシアが叫び私に報せる。扉を開いた先には見上げる程の巨大な骸骨が、伽藍堂の眼窩に紅い光を宿しこちらを眺めていた。


 瞳が無いのに目が合うとはこれ如何に!?


 〈最近、現実逃避が多くないですか?〉


 直視したくない現実が多くて……。


「来るよハクア!」


 エレオノの声に全員回避運動を取る。


 回避と同時に、ズダーン! と、巨大な音と共にガシャドクロの手が全てを押し潰さんと、私達の居た所に落ちてくる。


【鑑定士】スキル成功

 ガシャドクロ

 レベル:20

 HP:1500/1500

 MP:780/800

 物攻:400

 物防:350

 魔攻:100

 魔防:250

 敏捷:80

 知恵:50

 器用:40

 運 :50

 スキル:【本気】【頑強】【豪腕】【破壊】【呼び起こし】【押し潰し】【薙ぎ払い】【咆哮】【炸裂】【スカルソード】


 ヘルさんコロにもステータスの表示お願い。


 〈良いのですか?〉


 うん


「コロ、今からガシャドクロのステータスを見せるけど、焦らずに対処して、私のスキルだから」


「う、うん分かったかな!」


 ヘルさんのお陰でコロにも表示見えてる筈。


「【炸裂】【スカルソード】はどんなスキルなのか分からないから、変な動きを始めたら注意! 【呼び起こし】は多分スケルトン系を呼び寄せるから気を付けて」


 言い終わるやいなや、待っていたかの如くガシャドクロが【薙ぎ払い】を仕掛けてくる。


 エレオノはそれを助走をつけた跳躍で飛び越えガシャドクロへと肉薄する。


「ハッ!」


 【言霧】を使いながら、四段突きを放ちガシャドクロの骨が固い音を響かせる。


 やっぱり固い、物理ダメージはあんまり通らなそうだな。それなら──。


「鎌鼬」


 物理がダメなら魔法でどうだ!


 ズザザ! と、今までに無い音をだしながら、私の鎌鼬は五度程切りつけただけで霧散する。


 マジか! 硬すぎて鎌鼬が消えちゃった!?


「破壊の一撃」


 私達の攻撃に続けて、コロの特大威力の攻撃が当たり轟音が鳴り響く。だが、ガシャドクロにダメージを受けた様子はやはり見られない。


 ガシャドクロ

 HP:1250/1500

 MP:750/800


 う~む、十回攻撃当たって250しか減らないとかやっぱり物理はキツそう。


「ハクア。私手が凄く痺れてるんだけど!」


「……ボクもかな」


「実は私も……」


 もうね。ビリビリ来てるの。


 〈予想出来たでしょうに〉


 すいません。


「フレイムブラスト」


「ゲイルブラスト」


 アリシアとアクアが互いの属性のブラストを放ち、それが互いにぶつかり混ざり合い蒼炎の炎となる。


 それぞれの魔法が一段階上がり二人で放てるようになったユニゾン魔法。インフェルノがガシャドクロを襲う。


 強大な炎となった蒼炎がガシャドクロに当たり、爆音を鳴り響かせながら蒼炎の炎で包み込む。


「やった……かな?」


 コロさん、それやれてないフラグ!?


「グオオオオオォォォ!」


 ガシャドクロが咆哮を放ち、その声を聞いた私達の体は自由を奪われる。


 その間にガシャドクロは【呼び起こし】を使ったのか、周りにスケルトンが次々に現れ、総勢十五体のスケルトンが産み出されてしまった。


 え〜、ちょっと頑張りすぎじゃないですか?


 ガシャドクロ

 HP:850/1500

 MP:300/800


【鑑定士】スキル成功

 スケルトン

 レベル:10

 HP:200/200

 MP:50/50

 物攻:150

 物防:100

 魔攻:50

 魔防:55

 敏捷:40

 知恵:10

 器用:20

 運 :5

 スキル:【斬りかかり】【連続切り】


 よし、ガシャドクロの方は魔法が効きそうだからアクアとアリシアに頼もう。


「エレオノ、コロの二人は周りのスケルトンお願い」


「了解」


「OKかな」


「アリシア、アクアは魔法でガシャドクロを、私はガシャドクロの注意を引きながら動くからよろしく」


「分かりました」


「ゴブ!」


 私の指示により皆が動き出したのを確認し、私はガシャドクロの動きに集中する。


 大丈夫これくらいのステータス差はネトゲで何度も経験済み。


 出来る。やれる。イケる。


 私は自分で自分に自己暗示を掛けながら再びガシャドクロに肉薄する。


「グオオオ!!」


 ガシャドクロが声をあげながら【押し潰し】を何度も私に放つ。


 私は攻撃の度に揺れる地面に苦戦しながら、なんとかギリギリの所で避け続ける。


 もぐら叩きかな!?


 〈余裕ありますね〉


 実は無いんだけどね。うわっと!?


 元の大きさの違いと、標的が私一人になった事で回避がキツくなってきた。


「フレイムランス」


 そこへアリシアが絶妙なタイミングで魔法を放ち、私を援護してくれる──が、その攻撃で今度はアリシアに標的が移りそうになってしまう。


「ホーリーレイ、ゴブ」


 しかしアクアがガシャドクロの視線がアリシアを捉えると同時に、死角から新しい光魔法、ホーリーレイを唱える。


 シューティングレイよりもスピードは下がるものの、威力が上がったホーリーレイは、死霊系のモンスターであるガシャドクロにもかなりのダメージを与えた。


「グオオオ」


 ガシャドクロが吠えながらアクアに突進する。


 それを見た私は、アクアに体当りするように飛び込み、間一髪なんとか突進を避け、回避と同時にウインドブラストを頭上に三つ作りだす。


 それを全て重ね合わせる事で、威力を増した一つの玉に圧縮しガシャドクロに向かって放つ。


 その一撃は狙い通りガシャドクロの肩の繋目辺りの骨に当たり、ガラガラと派手な音を立てながら左腕を崩壊させた。


 よっしゃ! 支えの部分を壊せば部位破壊出来るとは思ったけど上手く行った。


 しかし私は自分の作戦が上手く行った事で気が緩み、上から【押し潰し】が来るまで気が付かなかった。


「ご主人様」


 アリシアの声に我に返りアリシアとアイコンタクトを取ると、そのままアクアと共に背中から仰向けに倒れる。


「アースクエイク」


 アリシアの声が響き、私達の真横の土が盛り上がりガシャドクロの攻撃を間一髪受け止め、なんとか攻撃されずに済んだ。


 アブナ!? 間一髪。


「「ハクア、アクア」」


「大丈夫、無事」


「ご主人様から離れなさい!」


 その言葉と共にアリシアがフレイムブラストをガシャドクロの腕に放つ。


「グオオオ」


 苦しむような悲鳴と共に腕が引かれ、私達はその隙に脱出した。


 ▶ハクアのレベルが5に上がりました。

 HPが440に上がりました。

 MPが250に上がりました。

 物攻が140に上がりました。

 物防が140に上がりました。

 魔攻が100上がりました。

 魔防が115に上がりました。

 敏捷が200に上がりました。

 知恵が280に上がりました。

 器用が220に上がりました。

【鬼気LV.1新】習得しました。

【魔拳LV.2→LV3】になりしました。

【魔闘技LV.3→LV.4】になりました。

【見切りLV6→LV.7】になりました。

 スキルポイントを10獲得しました。


 ▶アクアのレベルが5に上がりました。


 ▶アリシアのレベルが20に上がりました。

 輪廻が可能です。


 ▶エレオノのレベルが13に上がりました。


 ▶コロナのレベルが12に上がりました。

 

 うおっと、行きなりレベルアップの音がきた。


「ハクアこっちは片付いたよ」


「間に合ったかな?」


「今良いところ」


 私はアクアを後ろに下がらせながら二人に応え、そのついでに周りを見るとスケルトンは全て倒されていた。


 どうやらレベルアップはこのお陰だったようだ。


 ガシャドクロ

 HP:300/1500

 MP:220/800

 状態:部位欠損


 よし、あと一踏ん張り。


 そう考えていると──。


「グオオオオオォォォ」


 またも【咆哮】を使い私達の動きを止めに来るガシャドクロ、そして私達の目の前でその白い骨を赤く染め上げて行く。


「グオオオ」


 ヤバイ。


「何か来る逃げて」


 そう思った私は全員に警告をして逃げようとするも、元々腕の長さだけでこちらに攻撃を仕掛けていただけあって、間合いの外に行くには時間が足りない。


 前衛に居た私達三人に向けて赤く染まったガシャドクロは、その腕を伸ばし轟音を響かせた。


 何が? そう思った瞬間、私達に向かって襲い掛かる破片を見て、それがガシャドクロの指が破裂した物だと強制的に認識させられる。


 クソ【炸裂】は、こういう事か!?


 私は自分の前にウインドウォールを展開し、飛んで来る骨の破片を下から上に押し流すように調整して、エレオノとコロへの被弾を少なくする。


 そして私自身にオリジナルの防御魔法風守流転かぜもりるてんを使う。


 この魔法は自身の周りに風の膜を張り、そこに何かが当たると風が集まり、当たった物を受け流す軌道に誘導する魔法だ。


 勿論あまりに強い物は逸らしきれないけど、ある程度は受け流す事が出来、最悪でも軌道をずらし急所に当たる事は避ける事が可能だ。


 しかし、ガシャドクロの破片はこの二つを以てしても私の防御を貫いてきた。


 エレオノとコロもそれぞれのバックラーと斧を盾にしても、そのまま吹き飛ばされてしまう程の威力を誇っている。


 ヤバイ!


 ハクア

 HP:110/440

 MP:100/250


 エレオノ

 HP:150/475

 MP:50/130


 コロナ

 HP:200/550

 MP:30/120


 なんとか耐えたが想像よりもヤバかった。ウインドウォールと風守流転が無かったら死んでたな。う~ん、私の防御だと良いのがくれば一撃で終わりそう。


 〈マスター。先程獲得した【鬼気】はマスターのステータスを十秒間二倍にするスキルです〉


 マジでか!? タイムリーだな。まっ、それじゃあ早速。


 〈待ってください。その代わりにスキル終了時に動けなくなります〉


 うわっと、マジか!?


 〈はい、だから大事な場面で使って下さい〉


 了解。


 その隙にもガシャドクロは動き、何かをし始める。


 それを見て何故か猛烈に嫌な予感を覚え、皆に行動を止めさせる為大声を上げる。


「皆、止めて!」


「分かりました」


「了解」


「ゴブ」


「分かったかな」


 ガシャドクロを止める為動き出す私達、しかし何もしていないのにスケルトンが地面から次々と産み出される。


 なっ!? 自動のリポップだと!?


「くっ、フレイムブラスト」


「ゲイルスラッシュ」


 ガシャドクロに向けたアリシアとアクア二人の攻撃は、全てスケルトンに進路を妨害され、自らの身体で受け止められてしまいガシャドクロに届かない。


 私は【魔眼】を使いガシャドクロを見ると、私が落とした腕の骨を掴み上げ、その骨に異常な程、魔力を集中しているのが分かった。


 な、何、あれ? ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ、クソ間に合わない。


「全員防御するから集まって! アリシア、コロ、次の一撃堪える為なら、MP全部使っても構わない! アースクエイクで壁を作って」


「わ、分かりました」


「了解かな」


「アクア強化魔法お願い! そしたら最後尾に移ってなんとしても堪えきって」


「ストログ、ディフェンダ、アジリおねちゃん無理ダメ」


「わかってる! エレオノ」


「私はどうするの?」


「攻撃に合わせてレゾナンス撃つよ」


「う、うん分かった」


 ヘルさんお願い。


 〈レゾナンスを撃つにはお互いの手をつなぎ合わせ、同時に固有のレゾナンス名を叫びます。エレオノとのレゾナンスはアイシクルクロスです〉


 アイシクルクロスは剣の生成に時間が掛かるらしく、攻撃のタイミングに合わせ穿て、と命じれば攻撃出来るようだ。


 分かったありがとう。アリシアとコロに下がるように言っておいて。


 〈分かりました〉


「エレオノ行くよ」


「うん」


 私達はヘルさんの言う通り手をつなぎ合わせ。「「アイシクルクロス」」そう叫ぶと、私達の頭上に氷が現れ数十本にもなる氷の剣が産み出されていく。


 しかしガシャドクロの動きも止まらず、掴んでいた腕の骨が、今では剣のような形になり、一目見ただけでヤバイと分かる程異様さを増していた。


 そして不意にその骨剣を上段から振りかぶり──。


 ヤバイ!


「エレオノ」


「「穿てっ!!」」


 私達の攻撃が一瞬早く向こうよりも先に始まるが、ガシャドクロは振り上げた腕を目にも止まらぬ速さで振り下ろし、圧倒的な破壊の力を生み出した。


 地面に叩き付けた骨剣の衝撃波が、周囲のスケルトンを破壊しつつ波となって私達の攻撃と激突する。


 氷の剣が次々に衝撃波に当たっては砕かれ散っていく、それでも衝撃波の波は止まらずこちらに向かってくる。


「「「きゃぁあ!」」」


 衝撃波の波はアースクエイクで作った壁にぶち当たり私達を吹き飛ばす。


 くっ、ヤバイどうなった?


 〈全員なんとか生きています〉


「クッ、大樹の……癒し……」


「アクティブヒール……」


 アリシアとアクアが全体回復の魔法を掛けてくる。


 この二つは即効性は無いが暫くの間HPを回復し続けるものだ。


 ガシャドクロ

 HP:300/1500

 MP:0/800

 状態:部位欠損


 クソ、剣は使いきりじゃないのか!


 どうやら【スカルソード】は武器化する為のスキルで、あの攻撃は素の攻撃力らしい。


 あと、300……大きいのを当てれば行けるかも知れないけど、インフェルノでも叩き斬られる可能性がある。そうなったらこちらの負けは確実。なら……小さい攻撃で削り切る!


「ハクア! ボクに一分欲しいかな」


「理由は」


「さっきのレベルアップで【魔剣錬成】使えるようになったかな! だからボクは鍛冶師としてハクアに最高の武器を作る。だからそれで──」


「分かった。私が決める」


「それじゃ、それまでの間、私が注意を引きながら動くよ」


 エレオノが言い。


「私も近付きながら弓と魔法で応戦します」


 と、アリシアが。


「アクアも、光撃つ」


 アクアが言った。


「皆、お願い」


「「「了解」」」


 返事と共に皆が行き、私はコロの護衛の為に残る。


「【魔剣錬成】」


 コロが両手を前に出してそう言うと、掌の前に黒い球体が現れる。


「素材、効果、特性、形状、硬さ、軟かさ、弾性、錬成開始」


 コロが呟く度に魔力が流れ込み球体が魔力を帯びていく。


「工程トレース」


 40秒が過ぎ黒い球体は徐々にその形を変えていく。


 その間にもガシャドクロと皆の戦いは続く。


 皆頑張ってあと少し──。


「「「きゃぁあ!」」」


 だが、私の願いも虚しく剣での【薙ぎ払い】を受け全員が吹き飛ばされてしまう。


 ヤバイ皆のHPが持たない。


「形成完了! ハクア! これが今のボクの最高の一本かな!」


 コロが最後の言葉を放つと共に私は走り出す。


「受け取って!」


 私はコロが投げてきた大きめの剣を受け取り、そのままガシャドクロ目指して突っ込んでいく。


 ガシャドクロ

 HP:200/1500

 MP:0/800

 状態:部位欠損


 皆の頑張りでガシャドクロのHPはさらに減っていた。


 皆本当にありがとう。ここからは私がやる!


「【鬼気】開放」


 そう叫んだ瞬間、私の体の内側から抑え切れないほどの力が溢れる。


 そして私はその力を惜しむ事無く使い、ガシャドクロとの最後の攻防に移る。


「ハァァァア!」


 私は骨に当たり弾かれるのも構わずに切りつける。


 それに対しガシャドクロは剣を払い、打ち下ろし私の命を刈り取ろうと狙ってくる。


 【鬼気】の力でなんとかそれを避け、私は攻撃し続ける。


 〈後5秒残り120です〉


 このままじゃ時間が足らない。そう思った瞬間ガシャドクロがいきなり【咆哮】を放つ。


 ──それに一瞬動きが止まる。


 ──止まってしまう私。


 ──ッ! しまった!?


 うち下ろされる一撃にすくみそうになる体を奮い立たせ構わず前に進む。


 ──そう、私が避けなくても皆が剣をなんとかしてくれる。


 皆が魔法を、自分の武技を放ち、剣の軌道をずらし、軌道がずれた剣は私の真横に振り下ろされ地面に叩き付けられた。


 私はその剣の背に乗り、そこを頼りに一気にガシャドクロの頭へと駆け登る。


 〈後2秒です〉


 私は【鬼気】【魔闘技】を全開にし、刀を構えた状態で【疫崩拳】を放つ。


 出来るかどうかは賭けだったけど、出来て何より。


 攻撃が当たる瞬間、私は残りの魔力を全て剣に注ぎ込みガシャドクロの眉間へと突き入れた。


「クギァダダァァアヤ!!?!…………」


 剣を突き立てられた頭蓋骨は、そこを起点に放射状にヒビが拡がり次第にガラガラと音を立て崩れていく。


「はっ、はっ」


 〈お疲れ様ですマスター達の勝利です〉


 ▶ハクアのレベルが7に上がりました。

 HPが500に上がりまし──。


 そんな、システムの音を聞きながら私は意識を失った。


 何回目だよ!

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