第34話どんな人生を歩くかはコロが決めるべき
「コロナの為?」
私はコロの父親の言葉にオウム返しで問い掛ける。
「そうだ、コロナはワシの娘ではないんだ」
えっ!? あれ? 真面目な展開なの? 可愛い娘を何処にもやりたくないみたいなんじゃないの?
〈流石にそれは無いかと〉
「勿論コロナはこの事は知らんがな」
「それと依頼の破棄がどう繋がるの?」
「慌てるな。コロナはワシの兄の子供でな、義姉はエルフで美しい女性だった。知っとると思うが、ドワーフとエルフは種族的に嫌いあっとる者が多い。あの二人は本当に仲の良い夫婦だったがな」
うわ、語りだしたし。
「コロの両親は?」
「お前の想像通りだ。コロが赤子の頃に死んでいる」
「そう」
本当に最悪な程、想像通りだね。
「何があったの?」
「兄夫婦はこの村に住んでいたんだが、鉱山に採掘しに行ってそのまま──な、それでまだ赤子だったコロナをワシが預かったんだ」
ここまでに依頼を破棄させたい理由は無いな。
「ワシも鍛冶しか知らんでな、コロナが子供の頃はワシの息子どもと同じように鍛冶を教えていたんだが──」
一年前、そろそろコロナにも剣を作らせてみても良いかと、コロの父が教えながら剣を作らせてみた。
───その結果。
「コロナの才能はワシが思っていた以上だった。コロナが初めて作ってみせたのは魔剣だったんだ」
魔剣。確かに凄いけどなにか問題なの?
〈この世界で魔剣と言えば秘宝級に当たります。彼女程の若さで初めて打った物が魔剣と知れれば、下手をしたら命を狙われるか、それでなくとも一生を国の為に利用される可能性もあります〉
なるほどね。
「依頼の破棄はコロナを守る為?」
「あぁ、だがそれだけじゃない。ワシの妻は同じドワーフでな、良くできた妻でコロナの事も自分の娘のように扱ってくれる」
コロ自身、家族の事を語る時、幸せそうな顔をしていたからそれは事実だろう。
「それは息子達もそうなんだが、ワシら夫婦には魔法の適性があまり無い。ワシの作る武器がダンジョン級や秘宝級と呼ばれているのも、魔剣を打てるからではなく付与枠が他に比べて多いからなんだ」
付与枠って?
〈この世界のアイテムの等級は前に教えましたよね〉
うん。
通常の武器はそこかしこにある鉄など特別な物を使わない物を指し、これらは普通の鉄や木等の武器。
次に魔法級の物は魔法を付与されている武器を指し、魔法素材で作られた物を言う。ここに分類される物は効果の低い魔法がほとんどらしい。
製作級は鍛冶師が作った一点物の事を指し、特別な素材は使わないが優れた物を指し、腕の良い職人が作った物は魔法級と同じかそれ以上の物が多い。
ダンジョン級はダンジョン内で手に入れる事が出来るレベルの物を指し、このレベルになると付与が出来るスキルやクラスにあれば、素材を使い武器等に追加の効果等を付与する事が出来るらしい。
あのそろそろ覚えきれないんですけど。
〈ゲームの取り扱い説明書だと思って下さい〉
なるほど! って、無理変わらない!
〈続けて行きます〉
スルーが華麗過ぎる!
秘宝級は更にその上で、相当数の付与や高威力の魔法を封じ込め使う事が出来、人が作れる限界の等級がここと言われている。
幻級の特別な素材を使い、高い魔力を持った才能溢れる者がようやく作れる物で、コロの父親の場合は魔力は無くとも鍛冶師としての才能で、最高級の素材を使い付与数の多い物を作れたのだろうとヘルさんは言う。
〈因みに幻想級の武器は女神や神、邪神等が与えたり、それに匹敵する力を持ったドラゴンや、魔神等が持っていた物に力が宿ったりした物の事を指します〉
なるほどね。強い物ほど強力な効果や魔法、付与枠が多い物が多いんだね? と言うことはコロってかなり凄い?
〈凄いですね〉
「そんな訳でコロナに流れているエルフの血が、魔剣を作る下地になっているとコロナには知られたくないんだ」
つまりコロと自分達に血の繋がりが無いとバレたくない。と、そう言う訳か?
「それはコロの為? それとも……自分達の為?」
「コロナの為に決まっているだろうが!」
「コロを悲しませたくない? それは分かるけど、それは本当にコロの為になるのか?」
「この、分かった口を!」
「あんたは本当のコロの親だろ」
「──っ!!」
私の断言に息を詰めるコロの父。だが、私もここで止まる気は無い。
「だからこそコロを悲しませたくないのは分かる。でも……さ、やっぱりコロの人生を決めるのはコロ自身なんだよ」
生きやすいように、悲しまないように、邪魔になる物を取り除くのも良いかも知れない。親として危ない道を選ばせたくないと言う気持ちも分からなくはない。
だけど──どんな人生を歩くかはコロが決めるべきだと私は思う。
「それに、コロならあんた達家族の気持ちはちゃんと分かってくれると思うよ? もし本当の事を知って悲しむ事になっても、互いに大切だと思える家族が居る。その時は支えてあげれば良い。だってあんた達は本当に本物の家族なんだからさ?」
───私とは違ってね。
しかし疲れた! 超頑張った! しかもキャラじゃない事言い過ぎてなんか体が痒いんですけど!? シリアス終わりたい。もう持たないです。ぐすん。
〈ここまで来たら最後まで続けて下さい〉
「そんな事は! そんな事はお前なんぞに言われなくても! クソっ!!」
「とりあえず話は終わり。明日朝にもう一度来てその時どうするか決めて、少なくとも私達はコロの依頼を受ける」
「──っ!? ……分かった」
そう言い残しコロ父は帰って行った。
あぁ、超疲れた~。とりあえず私も帰ろう。
久々の長文に精神力を消耗しきった私は、早く帰って休む為にコロの家に帰って行った。
「ご主人様大丈夫でしたか!」
「う、うん」
「アリシア勢い良すぎ。ハクア驚いてるよ」
「あっ、す、すいません。それで話はどうなったんですか?」
「その前にコロは?」
「コロさんなら今さっき夕飯の買い出しに行きました」
「そうなの?」
「私達も手伝うって言ったんだけどお客さんだからって言われちゃった」
「そっか」
「おねちゃん話は?」
「うん、その事なんだけど」
私はさっきコロ父と話して来た事を全て皆に話した。
「そうだったんですか」
「コロが本当の子供じゃないって事も驚いたけど、コロが私達に嘘をついてたなんて全然気が付かなかった」
「おねちゃん凄い」
ん~、こうやって賞賛されると照れるな。
「それで……どうするんですか?」
「どうもしないよ。とりあえず明日、コロ父がどう答えを出して、コロがどうするかによる」
「まぁ、確かにそうだね」
まぁ、それに気になる事もまだあるしね。でもまさかだよね? そんな事は無いと信じたいんだけどな~。
「ただいま〜。あっ!? おかえりハクア。えっとお父さんとの話はどうなったのかな?」
「一応帰ったけど、また明日話しに来るって」
「ごめんねハクア」
「気にしてないよ」
「そっか、よしじゃあご飯にしよう。ボクが腕によりをかけて作るかな」
「それは私も手伝わせて下さい!」
「う、うん、わ、分かったかな?」
コロはアリシアの勢いに押され二人で料理を作り始めた。
「私達は大人しく待ってるだけか~」
「そうでもないよ」
「えっ、どう言う事ハクア?」
「因みにさ、エレオノって武技を使う時、使う武技の名前口に出してたよね?」
「ハクアは武技無いから解らないかもだけど、それって当たり前だよ? アリシアの【無詠唱】みたいに、武技は【言霧】ってスキルがいるんだよ」
「【言霧】?」
「そう、言葉を発しないのに発動させる高等技術のスキルだよ。Bランク以上の冒険者の秘匿技術って言われてる位だし」
へぇー、そんな名前なんだ?
「でも要は【無詠唱】の武技版だよね」
「それは……そうだけど……」
「なら上手く行けばエレオノも出来るようになるかもよ?」
「えっ!? 本当に!」
「うん。私の推測が当たっていれば、その内楽に発動できるようになるかも?」
「教えてハクア! どうすれば良いの?」
と、エレオノに問い詰められていると──。
「どうしたんですかエレオノ」
「あっ、アリシアっと、ごめんハクア興奮し過ぎた」
「えっ、興奮ってなんですかご主人様」
アリシアさん意味が違うと思います。
「皆ご飯が出来たから早く食べよう」
良いタイミングで来たコロに感謝しつつ食事を始める。そしてその間にエレオノに話していた事を皆にも話す。
これで上手くいけば全員の戦力upだね。
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