第27話私は……ダンピールなんです

「よし! みなかったことにしよう」


 開口一番あんな風に言われてやってられるかっての。


「あのハクアさん?」


「エレオノ! きょうわたしはここにいなかった。オーケー?」


「OKじゃありませんご主人様!」


 え~! もういいじゃん帰ろうよ!


「私も我慢しますから頑張って下さい」


 しょうがない。てか、アリシアも我慢するって言っちゃうのね。


 とりあえず私とアクアは、あまり顔を見られないように帽子を深くかぶり直し、はぁ〜と、長い溜息を吐くとドアをもう一度開ける。


「なんなだお前達は失礼にも程がある!!」


 ……いや、それあんただよ。


「……わたしたちはこいといわれたからここにいる。もんくがあるならいますぐかえるよ?」


「このアリスベルギルドの取り纏め役が、わざわざこんな片田舎にまで来て、話を聞いてやろうと言うんだぞ」


 取り纏め役って偉いの?


 〈ある程度の大きさのギルドなら、ギルド長の下に副ギルド長が居るので、更にその二つ位下の役職ですね〉


 ふーん、そう、なるほどなるほど。


 ヘルさんの答えを聞いた私は、今もまだ愚痴愚痴と喋っている男にニヤリと笑いかける。するとその態度に腹を立て私に対する言葉が更に荒くなる。


「貴様、なんだその顔は! 自分の立場が分かっているのか!」


「そっちこそわかってないみたいだね?」


「なんだと!」


「わざわざこんなところまではなしをききにくるなんて、よほどじたいをおもくみてるのに、なんのはなしもきけずかえったら……みんなにどうおもわれるのかな?」


 私の言葉を聞いた男の顔が一瞬苦々しいものになる。


 おやおや分かりやすい。そうだよね。良くないよね? それはあんたの失敗になるもん。少しの会話だけでもプライド高いのが分かるのに、こんな所まで来て失敗はしたくないよね?


「くっ!」


 私の顔を見て、考えを正確に理解したのだろう。


 それが正解である事を示すように青くなるハゲ手前。


 ああ、やっぱり出世欲強いんだね? だってわざわざこんな所まで来るくらいだもんね。


「……貴様」


「あっ、こわい。はなすきなくなったからかえろうかな?」


「ぐっ」


「ギルドちょう? どこかのハゲてまえが、くちをはさんだじてんでかえるからね?」


「くっ、ぐ! 言わせておけば──」


 私の言葉に今度は顔を真っ赤にするハゲ手前。


 あ~、面白い。プライド高い人間馬鹿にするのって面白いよね。


「分かった。ゲイル殿、暫く口を挟まないようお願いします」


「なんだと貴様!」


「これは国に提出すべき報告書を作成する重要な場です。それをいきなりやって来て同席するだけでなく、邪魔までするならしかるべき処置を取らせていただくが?」


「なっ!? くっ!」


 ギルド長の言葉に何も言えなくなるハゲ手前。


 ふっ、ざまあ! そしてナイスだギルド長。これだけでも助けた甲斐が在った。


「私は失礼させて頂く。後程報告書を受け取りに来る。その時に貴様の口から詳しい説明をしてもらおう!」


 そんなセリフを吐きながらハゲ手前は執務室から出ていった。


 そして───。


「ギルドちょう、スッキリした。いいしごとだ」


「ああ、私もだ」


 お互いにいい笑顔で親指を立てる。


「……お父さん」


「……ご主人様」


 なんでそんな目で見るの? 解せん?


 私は思わず首を傾げるのだった。

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「そう……か。そんな事になっていたのか」


 アリシアとエレオノが説明し、私が注釈を加えて話終えると、ギルド長が重苦しく呟いた。


「まずはこの村の治安を守る者として礼を言わせてもらう。そして、ギルド長としてではなく、一人の親として娘を救ってくれた事に礼を言わせて欲しい。有り難う」


 そう言うとギルド長が深々と頭を下げてきた。


「そんな頭を上げて下さい! 私達は当然の事をしただけです!」


 と、アリシアが言うのでその言葉にそれはちがう。と、アリシアの行動を制止する。


「えっ!?」


「それをあたりまえっていってみとめたら、あたまをさげたのがむだになる。だからわたしたちは、ちゃんとしゃじをうけとめるべき」


 ただでさえ魔族に良いようにされてるからね。


「ああ、そう言って貰えると私も助かるよ。それと君達が倒した魔族の魔石とドロップアイテムだが、昨日レイド君とミランダ君にも話を聞いたが、止めをさしたのは君達だから魔石等は君達に。と、言っていたよ」


 そっか、じゃあ貰っておくかな?


「魔石はこちらの買い取りでいいかい?」


 どうかな?


 〈今の私達に魔石は使い道が無いので良いと思います〉


 今後は在るの?


 〈一部の魔道具と呼ばれる物に使われます。分かりやすく言えば電池や動力のように使えます〉


「かいとりでいいよ」


「分かった。では今回は依頼ではなかったとは言え、エルム村の危機を救い魔族の策略を防いでくれた事で、アリスベルから報奨金が出ている」


 おお、マジか。流石商人の国、金を出すポイントがわかってる。


 報奨金は金貨32枚と、銀貨50枚。それに魔石の買い取り金の金貨20枚と銀貨80枚を合わせ、合計で金貨53枚と銀貨30枚になった。


「「き、金貨53枚!」」


 アリシアとエレオノが驚いている。


「そんなにすごいの?」


「エルム村の一番の宿に泊まって毎日豪遊しても十年位は暮らせますよ!」


 あ~、引きこもろうかな?


「……ご主人様? 駄目な事考えていませんよね?」


 なんでわかるの!? て言うかアリシアさん、顔笑ってるのに恐いんですけど!?


「そしてこれが、ドロップアイテムの魔殻の紅玉というアイテムだ」


 これ何に使えるの?


 〈武器の素材としても防具の素材としても使えます〉


 おお~、でもお金はタグに入るから良いけど素材はどうしよう?


 〈マスター。空間魔法を使いましょう〉


 空間魔法?


 〈はい。グルドから奪ったスキルですが、この空間魔法の「ボックス」という魔法でアイテムを保管出来ます〉


 そんな便利なものが!?


 〈「ボックス」は空間魔法のレベルが上がれば、容量も増えるようです。今の段階でも馬車一台分位の量は入ります〉


 よし! じゃあ早速!


「君達はマジックバッグは持っているのかい?」


「何それ?」


 〈「ボックス」のカバンバージョンです。最大でも馬車一台分、ほとんどのものは大きいサイズリュックくらいしか入りません〉


 まぁそれでも十分だと思うけど、こっちの話を聞いた後だと微妙な感はあるな。


「持っていないのか。なら私が昔使っていたこれをあげよう」


「良いんですか? とても高価な物なのに!」


「ああ、私にはもう必要無いからね。その代わり一つだけ頼みがあるんだが」


 やっぱりか~、面倒な事ならボックスあるから良いや。


「お父さん。それは私が言う!」


 いきなりエレオノがギルド長を制止して私に向き合う。


 えっ? 何? 私何かした? エレオノも可愛いから正面から向き合うと結構照れるんだけど!


「ハクアさん!」


「はい!」


 勢いに押されて思わず良い返事を返してしまった。


「私もハクアさん達の仲間にして下さい!」


「……はい?」


「エレオノさん本気なんですか? 私達と一緒に居ると危ないかも知れませんよ?」


 えっ? 私と居るのが? セクハラなんてしないよ!?


 〈……違います〉


「いきなりの事で済まないね。だが、ここ数日エレオノに説得されてね? 出来れば私からもお願いしたいんだ」


 確かにエレオノが仲間になってくれたらうれしいけど。


 でも、う~ん。


(あの、私、あの時近くに居たからハクアさんとグートルードの会話、聞こえてたんです)


 あの時の会話? 何話してたっけ?


 エレオノからギルド長に聞け声ないように小声で耳打ちされるが、その時の会話が思い出せず首を捻る。


「娘、エレオノには誰にも言えない秘密があるんだ。だからこそ何時かはこの村から出て行く事になっても良いようにと、訓練だけはしていたんだ。だが、私も人の親、大事な娘とは離れ難くてね」


 そう口にするギルド長の顔は曇っている。それだけ本心から本当はエレオノを行かせたくないのだろう。


「もう少し訓練してから、と思っていたんだが。エレオノから君達の事を聞いて、君達になら任せても大丈夫だと思ったんだ。だから頼む。娘を共に連れていってくれないか!」


 何がどうなっているのか分からずに混乱する私達。


(私はハクアさんがゴブリンだと知っています。だからこそ私はハクアさん達の仲間になりたいんです)


 そっかあの時そんな話してたんだっけか? でも、なんでそれで私の仲間に?


「私がハクアさん達の仲間になりたい理由は、私のステータスを見てくれれば分かります」


 そう言われた私はエレオノのステータスを見る。


 名前:エレオノ・アノマリス

 レベル:10

 性別:女

 年齢:17

 種族:半吸血鬼(ダンピール)

 クラス:なし


「「は?」」

 

 ステータスを見た私とアリシアの声が重なる。


「私は……ダンピールなんです」


 おう! まじか! まぁ、確かに今更だけど、只のレベル1の人間の女の子が、幾ら脆くなったからってグルドの体を突き刺したり出来ないよね。本当今更だけど!! てか、吸血鬼までいるんかい!


『女神様:大体の生物、幻獣、架空のものは揃えてあります』


 余計な事を! 会うのが楽しみじゃないか!


『女神様:流石私が選んだ人間正直ですね』


「ギルドちょうが?」


「いや、私ではなく妻だよ。エレオノを産んですぐ居なくなって仕舞ったがね」


 これは深く聞かない方が良さげだね?


「やっぱりダンピールなんて仲間に出来ませんか?」


「ご主人様」


「ゴブ」


「エレオノさえいいならいっしょにいこ?」


「良いんですか?」


 私は頷きながら、まえにもエレオノだったらかんげいっていったよ。と、笑って見せた。


「あっ、ありがとうございます!」


 しかし、何故だかアリシアからは、何か言いたいけどなんとも言えない感じの視線を頂戴した。解せぬ?

 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 エレオノを仲間に加えた私達は、一度宿に戻り改めてステータスの確認をしようとしていた。


 とっ、その前にエレオノが仲間になったんだからヘルさんの事も紹介しないとね?


「エレオノもうひとりしょうかいしたいなかまがいる」


「えっ? もう一人ですか?」


 ヘルさん。


 〈はじめましてエレオノ。私の名前はヘル。マスターの使い魔です〉


「えっ? えっ? 頭の中に女の人の声が?」


 エレオノは頭の中で聞こえたヘルさんの声に狼狽える。


 何この子可愛い!


「エレオノさん落ち着いて下さい。実はですね───」


 アリシアがエレオノに説明し終わると───。


「失礼しました! これからよろしくお願いします!」


 と、元気良く挨拶して無事受け入れてくれた。


 良きかな良きかな。


 〈因みにマスター〉


 何ヘルさん?


 〈エレオノのステータスを確認する前に、アリシアとエレオノのクラスを変更しませんか? 二度手間になります〉


 あ~、確かに。よし! 先にクラスの変更しよう。


「アリシア、エレオノふたりのクラス、さきにかえよう」


「あっ、そうですね。私はもうマスターしましたしね」


「そっか、私もクラス変更出来るんだ。えっと、じゃあまたギルドに行くんですか?」


「ダイジョウブ、アクアすこしまってて」


「ゴブ」


 私はそう言って二人の手を取り女神達に呼び掛ける。


 クラリス、今平気?


『クラリス:ええ、大丈夫よ』


「あの、何が?」


「二人とも目瞑って」


 エレオノが理由が分からず私に聞くが、説明するよりも実際見せた方が早いと指示を出し、二人に目を瞑って貰う。


「えっ? あれっ? ここ、何処ですか?」


『クラリス:いらっしゃい、ハクア、アリシア、それとエレオノだったかしら?』


「えっ? あっ、はい、合って……ます」


「エレオノさん。こちらの方は職業神クラリス様です」


「えっ? えっ? ええええぇぇぇ!?」


 混乱するエレオノにまたも説明するアリシア。


 うんうん。可愛ええのぉ。


『クラリス:あの子可愛いわね』


 やっぱそう思う?


「あっ、あの先程は失礼しました! 私はエレオノと言います。よろしくお願いします!」


『クラリス:ええ、よろしく、フフッ』


 めっちゃ緊張してるな~。何故だ?


「当たり前じゃないですか! せめて説明してからにして下さいよハクアさん!!」


『クラリス:それで今日は二人ともクラスを替えに来たのよね』


「「はい」」


「あっ、でもまだスキル交換してませんでした」


『クラリス:大丈夫よ私が直接すればポイントがちゃんとあるならそのまま出来るわ。それでなんのクラスに就きたいのかしら?』


「えと、私は森呪使いドルイドに」


『クラリス:ああ、貴女は精霊使い目指してたのよね』


「はい」


「あの、ハクアさん私はどうしましょう?」


「なりたいクラスはないの?」


「えっと、一応前衛職をメインにしようかと思ってます。───けど、個人的には……その、魔法剣士に憧れて……ます……」


 自分の憧れを口にするのは気恥しいのか、尻すぼみになって照れるエレオノ。尊い。


「うん、マルチにこなせるからいいんじゃないかな?」


「ありがとうございます! じゃあクラリス様。私は戦士になりたいです」


『クラリス:分かったわ。戦士に森呪使いね? そう言えば、一度マスターしたクラスなら自分で変更する事も出来るわ。だから魔法剣士も選択としては良いと思う』


「あ、ありがとうございます!」


『クラリス:フフッ、素直ないい子ね。はい、クラスの変更は出来たわ。それでハクアはどうしたの?』


 いや、本人目の前にして言うのもなんだけど、吸血鬼ってモンスター枠じゃなくて人界の枠なんだと思ってさ。


『クラリス:そう言うことね。先にいえば、吸血鬼はモンスターの枠よ勿論ダンピールもね。けど、上位の魔族や魔人は、クラスを取得している場合もあるわ。向こうには向こうで邪神とか居るもの』


 そしてクラリス曰くダンピールも入るけれど、人界にも魔族は居るらしい。


 それは昔、この世界が作られたばかりの頃、モンスターに襲われ子供を産んで仕舞った子達の子孫。


 今では人狼や猫人、鳥人なんて呼ばれてる一部の種族は、昔はモンスター扱いされて討伐もされていたのだとか。


『クラリス:でも今では大分減ったのよ? まぁ、これもあなた達転生者が受け入れていたお陰もあるけどね』


 ああ、ケモミミは正義だよね!


『クラリス:ええそんな感じよ。それじゃあアリシア、エレオノまたクラスを替えたい時はいらっしゃい』


「「はい」」


 じゃあまたねクラリス。


『クラリス:ええ、また』


 そして私が目を開けるとエレオノが、前にハクアさんとアリシアさんがやってたのってこれなんですね。と、尋ねてきたので、コクリと頷き肯定する。


「ええ、すいません。驚かせてしまって」


「いえ、お陰で女神様に会えるなんて、貴重な体験出来ましたから」


 〈それではステータスを映しますね。まずはアリシアからです〉


 名前:アリシア・アールヴ

 レベル:18/20

 位階:1

 性別:女

 種族:エルフ

 クラス:森呪使いLV.1

 HP:330→350

 MP:380

 物攻:62→55

 物防:60→80

 魔攻:210→220

 魔防:205→215

 敏捷:69

 知恵:340

 器用:148

 運 :15

 武器:支給弓

 副武器:銅のナイフ

 防具:森人の狩服

 アクセ:無し

 魔法:

 風魔法LV.8、土魔法LV.3、火炎魔法LV.1

 水魔法LV.4、除去魔法、呪魔法LV.1(新)

 範囲回復魔法(新)

 魔法名:

 ウインドブラスト、ウインドカッター、ファイアブラスト

 ファイアアロー、ウォーターウォール、アースクリエイト

 クオリア、生命の風(新)

 ユニゾン:

 ボルケーノ、インフェルノ

 称号:奴隷、王家の血筋、強敵打破ジャイアントキリング、魔族殺し

 スキル:戦闘系スキル

【魔闘技LV.1】

 技能系スキル

【薬草調合LV.5】【集中LV.8】

【料理LV.6】【野生LV.7】

 ステータスUP系スキル:

【剛力LV.3】【堅牢LV.3】【魔術LV.5】

【魔坑LV.4】

 スキル補助系

【魔法の天才LV.7】【魔法の技巧LV.7】

【弓のコツLV.4】

 攻撃ダメージUP系

【魔力覚醒】

 補助、その他スキル

【精霊契約】【速攻魔法】【MP消費緩和LV.4】

【MP効率upLV.3】【魔力操作】【無詠唱】


「やりましたご主人様。スキルが二つ増えましたよ」


「アリシアさん王族の方なんですか? 凄いです! しかもこんなに沢山スキルがあるんですね」


「私もこの称号はよくわからないんですよ」


 〈今回増えたのは森呪使いの魔法ですね。呪魔法は、毒や、麻痺等のステータス異常を起こさせる魔法ですね〉


 範囲回復の生命の風は、アクアの治療魔法よりも回復力は低いが、タグでパーティー登録したメンバー全員を回復出来るらしい。


 うん、アクアといい感じに住み分け出来てるね。


 〈では次にエレオノのステータスを確認します〉


「よっ、よろしくお願いします」


 名前:エレオノ・アノマリス

 レベル:10/20

 位階:1

 性別:女

 年齢:17

 種族:半吸血鬼(ダンピール)

 クラス:戦士LV.1

 HP:400

 MP:100

 物攻:115

 物防:85

 魔攻:40

 魔防:60

 敏捷:110

 知恵:130

 器用:115

  運 :55

 武器:なし

 副武器:なし

 防具:戦士のインナー

 アクセ:無

 魔法:なし

 武技:

 三段突き、パワースイング、連撃、ブラッドソード

 称号:英雄の資質、半吸血鬼

 強敵打破ジャイアントキリング、魔族殺し

 スキル:戦闘系スキル

【魔闘技LV.1】

 技能系スキル

【直感LV.1】【受け流しLV.2】【見切りLV.3】

 ステータスUP系スキル:

【剛力LV.4】【堅牢LV.3】

【魔術LV.1】【魔坑LV.2】

 スキル補助系

【剣の天才LV.3】【剣の技巧LV.5】

 攻撃ダメージUP系

【剣技攻撃力up】

 補助、その他スキル

【MP消費効率upLV.2】【背水】【多勢無勢】

【学習】【日光無効】


 あれっ? また私凄いの拾った。


 〈はい、また大物ですね〉


「あの~? 間違い無いんですか。……私が英雄の資質なんて?」


 〈間違いありません〉


「私も同じこと聞いたな~」


 アリシアが遠い目してる。さもありなん。


 〈とりあえずスキルの説明を【受け流し】は攻撃を受け流す際の成功率に関わるものですね。剣の天才、技巧は攻撃力や武技の威力に関わるようです〉


 武技? これはなんだろう? 初めて見たよね。


「あれっ? 皆さん武技知らないんですか?」


 私が武技と言う単語に首を捻っていると、エレオノが驚きながら聞いてくる。


 〈武技とは武器を扱うことで会得できる体術のようなものです。魔法と同じくMPを消費して扱います。マスターの【麻痺崩拳】も本来は武技に入ります〉


 あれっ? じゃあなんで攻撃系スキルだったの?


 〈マスターの場合、種族の特性として手にいれているので〉


 なるほどね。


 〈【剣技攻撃力up】は剣技を使用した際に攻撃力がupします〉


 剣技?


 〈剣技はそのまま剣の技です。短剣等なら短剣技となり、全てを含めて武技と呼びます〉


 なる。素手なら格闘系の武技覚えるから私の【麻痺崩拳】も本来は武技なのか!


 〈【背水】は自分のHPが少ないほど攻撃力が上がり【多勢無勢】は敵の数が自分のパーティーよりも多いとき攻撃力が上がります【学習】は全ての熟練度が上がりやすくなりますね〉


「私こんなにスキルあったんですね?」


 〈称号のお陰もありますが、そうですね〉


 まぁ、とりあえずこんなものかな?


 〈はい、では確認も終わったのでこのまま出掛けましょう〉


 ヘルさんに言われた通り、私達はこの間の戦闘で駄目になった装備品を買いに向かっていた。その途中───。


「あの、本当に私の装備まで買って貰って良いんですか?」


 エレオノは無理を言って着いて来た。と、いう認識のようで自分の装備も揃えると言う事にずっと恐縮している。


「そんなに気にしないでくださいエレオノさん。ご主人様が良いって言うなら大丈夫ですよ」


「あっ、アリシアさん。私の事は呼び捨てで良いですよ。敬語とかも要らないですし」


「私は元々この喋り方なので、じゃあエレオノも敬語は使わなくて良いですよ? あんまり慣れていないんでしょ?」


「あぅ、分かりますか?」


「ええ、まぁ」


「うぅ」


 うん。可愛ええ。


「エレオノもなかまなんだから、しゃべりやすいほうでいい。わたしにもけいごはいらない」


「えっ? そうなんですか?」


 えっ? 私そんな敬語喋らせるキャラなの?


「えっと、じゃあ……ハクア? これからもよろしく!」


「それでいい、こっちこそよろしく」


 話をしているとこの間の店が見えて来た。


「ご主人様は武器を見ていて下さい! 私はエレオノと防具の服を見てきます」


「さいしょは、あんまりねだんはきにしなくていいから」


 アリシア達にそう言って、私とアクアは武器を見に行く。


 この間も思ったけど、実際見ると色んな武器が有って楽しいよね! 実際本物の武器だと思って見ると凄く楽しい。


 さて、私の武器はなんにしよう?


 そう、それが一番の問題だった。


 私は崩拳とか爪、噛みつきがスキルだから、明らかに近接武器の籠手とかがいいんだろうけど、私も武技覚えたい。だからナイフ両手に持って双剣技とかないかな?


 〈双剣技もありますが、その場合双短剣技になります〉


 あるんだ。よし! じゃあそれに決めた!


「ご主人様決まったんですか?」


「うん、アリシアたちは?」


「はい、この間買った物のもっと良いやつが有りました」


 見た目あんまり変わらないけど何が違うんだろう?


 〈見た目が同じでも素材が違えば桁と効果が違います〉


「私とアリシアは今の所、二人と違ってこの服の上に軽装の防具着けるだけだから簡単だったよ」


「そっか、ふたりはぶきどうする?」


 私はナイフ二本で、アクアも杖新調したからね。まぁ、やっぱり棍棒眺めてたけど……。そんなに棍棒が良いのかな?


「私はやっぱりナイフと、弓を新しくしようと思います。なるべくMPを節約する場面もありますから」


「えと、私は片手剣が欲しいです」


「たては?」


「私バックラー苦手なんだよね」


「でもこれからはぜんえいやってもらうから、できればつけてほしいかな?」


「う~ん、そう……だよね。うん。分かった頑張る」


 と、言うわけで私達は全員分の武器と防具、アクセサリを買いました。


 お金は少しおまけして貰って、全部で金貨15枚、銀貨50枚でアリシアとエレオノが青い顔してた。さもありなん。


「そろそろいこうか?」


 次の日、私達は全ての用意を済ませてエルム村から出発する所だった。


 そんな私達を見送る為、エレオノの父、ギルド長が現れ、エレオノとの別れの挨拶をしていた。


「気を付けるんだぞ。エレオノ」


「うん、お父さんも……無理しちゃ駄目だよ?」


「ああ、……ハクア君娘をよろしく頼む」


「りょーかい」


「行ってきます。お父さん」


 エレオノがギルド長に手を振りながら私達と歩いていく。そんなエレオノに私は、さみしくないかと、聞いてみる。


「全然! って、言ったら嘘になるけど、でも、おんなじ位ワクワクもしてる!」


「そっか、あらためてよろしくエレオノ」


「はい!」


 そのエレオノの元気な返事を聞きながら、私達は次の冒険に出発したのだった。


 ───まぁ、進化するから休める所に行ったら、直ぐにストップするけどね?


 〈色々と台無しです。マスター〉

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