第26話……う~ん。はたらきたくない!
「──んぅう」
「ご主人様!」
「おねちゃん!」
「ハクアさん!」
気が付くと同時、三人の声が重なり私は目を開ける。
あれ、どうなったんだっけ? え~と、たしか───。
「きゃっ!?」
「あっ、ごめ。それでグートルードは?」
「ご主人様覚えてないんですか?」
えっ! なにその反応!?
「とりあえず皆無事だし、グートルードも倒せましたよハクアさん!」
えぇ! マジか!? てっ、ああなんとなく覚えてる……かも?
「おっ、目が覚めたか?」
「おはよう。皆貴女の事心配してたのよ」
「アレから、どれくらいたったの?」
「まだ三十分位よ」
「まぁとりあえず言っておく事は二つだな! 一つ目は今回の魔族討伐の成果は俺達五人で山分けになった」
鼻息荒く、これで暫くは安泰だ。と嬉しそうにしているレイド。
あれ? でも。
「ほかのにんげんも、さいごは、かせいしたでしょ? はんたいされなかったの?」
「自分達は最後の攻撃まで隠れてたのにレベルの低い、しかも小さな女の子が戦った上前は撥ねられない。って、言ってたわ。それにあんな一回攻撃に参加しただけでレベルまで殆どの人間が上がっちゃね」
「まぁ確かに強かったからな」
「そうね」
「もう一つは回復したらギルド長が、出来れば直接話を聞いてお礼をしたいそうよ」
「それはめんどい」
「……ご主人様」
うっ!? アリシアそんな目で見ないで! だってめんどいじゃん。
「ハクアさん。一つ聞いても良いですか?」
アリシアの視線から逃れる為に、私はそのエレオノの言葉に飛び付く。
「なに?」
「最後、あの魔族になんで急に攻撃が効くようになったんですか?」
「それは私も興味あるわ」
全員が頷きながら私を見る。
「うーん。くわしいせつめいははぶくけど、てつやがらすは、いちどこうおんでねっしたあと、すぐにひやすともろくなるんだよ」
詳しく話してもしょうがないよね? 皆と話して分かったけど、この世界は魔法が幅を利かせてる分、科学技術は低いみたいだからね。一から説明するとか禿げそう。
「ほー、そうなのか」
「そんな事まで知っているなんてやっぱりご主人様は凄いです!」
「でも良くあの状況で思い付いたわね」
「ほんにんが、じぶんのからだはこうてつだ! って、じまんしてたからね」
まあ、本人言ってた通りだったし。だけど関節とかはきっかり曲がる不思議金属とか、ファンタジー仕様にも程がある。
そんなんだからしんぱいしたけど、こっちの法則もちゃんと通じて良かったよ。
まあ、失敗したら死ぬだけだから責められる事もなく、そのままあの世に逃げられたけど。
「あっ、そう言えばご主人様! 私レベルが一気に18になりましたよ!」
何!? あの魔族やっぱりそんなにヤバイ奴だったのか!
「ああ、俺達も一気に25に上がったからな」
「それだけ危険な相手だったってことね」
本当に良く死ななかったな。今回こそ駄目かと思ったし。なんだかんだとよく生きてるな私。
「さっ、話はこれくらいにして今日は休みましょう。後片付けは他の冒険者や村の人がやってくれるらしいしね」
「エレオノはわたしたちといっしょにとまる?」
「いえ、私は父が運び込まれた治療院に行きたいと思います。気を遣って貰ってありがとうございます」
「そっか」
こうして私達は別れて宿屋へと帰ると、疲れの余り宿に帰るなりソッコーで寝込み。二日間程何もせず寝て過ごした。
因みにアリシアが、グルドの腕を内緒で回収してくれたので戴きました【喰吸】スキルの内容はまた後日。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
「……う~ん。はたらきたくない!」
〈…………マスター〉
「…………ご主人様」
……だって働いたら負けだと思うし。
開口一番の私の言葉に、二人揃って何かを言いたげな感じで呼ばれる。
たが私は気にしない! 何故なら私は思い出したからだ!!
元々私は半引きこもり、それがこの世界に来てからというもの生きるのに必死、戦うのに必死なんて私らしくない!
ここ数日怪我の療養の名目でダラダラしていた姿こそ本当の私なのだ!!
〈マスターふざけてないで早くやる事をやって下さい〉
はい! すいませんでした!
あれ、最近私ヘルさんに頭上がらなくなってる?
「ご主人様大丈夫ですか?」
「うん。へいき」
「じゃあ早い内にステータス確認してしまいましょう。まだ時間があるとはいえ、この後にギルド長との面会があるんですから」
そう私達は二日前に魔族のグルドことグートルードとの戦いがあった。
冒険者ギルドのギルド長に化け、冒険者を惑わせ騙し、絶望させて殺す様を主に見せる。とかなんとかかんとか。
まぁそんな訳で、化けるのに邪魔なギルド長を監禁して殺そうとしていた所を私達が助けた。
その事と、まぁグルドとの戦いについて聞きたいそうだ。
面倒くさ!
〈マスター良いですか?〉
「はい。お願いします」
はて? 何故私は敬語なのだろう? 解せぬ。
〈それでは表示します〉
名前:ハクア
レベル:3/10→10/10
性別:女
種族:パラライズミニゴブリン
HP:215→320
MP:110→180
物攻:35→90
物防:35→90+10
魔攻:38→73
魔防:38→73
敏捷:75→145
知恵:190→225
器用:130→170
運 :50→70
武器:なし
副武器:なし
防具:アヌの千早
アクセ:ゼーゲンの腕輪
魔法:
風魔法LV.3→6、空間魔法LV.3(新)
影魔法LV.1(新)
魔法名:鎌鼬
ユニゾン:ボルケーノ、インフェルノ
称号:転生者、同族殺し、同族喰らい
スキル:戦闘系スキル
【マヒ爪攻撃LV.5→LV.7】
【マヒ噛みつきLV.1→LV.4】
【麻痺崩拳LV2→LV.7】【魔闘技LV.2(新)】
技能系スキル
【鑑定士LV.7→LV.MAX】【集中LV.4→LV.6】
【直感LV.1→LV.4】【罠師LV.4】
【跳躍LV.1→LV.5】【会心LV.3→LV.5】
【見切りLV.4→LV.6】【忍び足LV.3(新)】
耐性系スキル
【異常耐性LV.6毒,麻痺(新)】
【痛覚軽減LV.8】→【痛覚無視(新)】
【風耐性LV.3(新)】
ステータスUP系スキル:
【剛力LV.3→LV.6】【堅牢LV.3→LV.6】
スキル補助系
【魔法の片鱗LV.3→LV.7】
【魔法のコツLV.3→LV.7】
【武器のコツLV.6】
【風魔法のコツLV.1→LV.4】
攻撃ダメージUP系
【背後攻撃LV.7→LV.MAX】
【急所攻撃LV.6→LV.MAX】
【ゴブリンキラー】【格闘LV.3→LV.4】
属性スキル
【破壊LV.1→LV.4】
【マヒ附与LV.1→LV.MAX】
【麻痺毒LV.1→LV.MAX】
補助、その他スキル
【喰吸LV.6→LV.7】【言語】【奴隷術】
【主従契約(新)】【魔物調教LV.7】→【魔物契約】
【魔獣調教LV.2(新)】
【危機察知LV.1→LV.3】【ユニゾン魔法(新)】
【念話(新)】【?????】
スキルポイント80
進化可能です
うわ!? 軒並み上がってる。つーかMAXが沢山!? 進化まで出来るよ!! そして地味にレベルの表記変わってる。
〈一気に7に上がりましたからね。それとレベルの表記は【鑑定士】のレベルが上がった事で限界値が分かるようになったようです。それでは新しく増えたスキルを説明します〉
よろしくお願いします!
〈まず【魔闘技】ですが、これはMPを消費しながら魔力で身体強化が出来るものです。レベルが上がる事で出力とMP消費効率が上がるようです。魔法については試してみないと分かりませんね〉
おっ、これは凄いうれしい! これで私は更に動きやすくなる。でもその分MP管理をちゃんとしないとなのか。
〈はい、次に【異常耐性】ですがこれは【毒無効】と【麻痺無効】が統合されています。が、この二つは引き続き無効のようです。その他の睡眠、石化等の耐性がupします〉
良かった。毒や麻痺無効が効かなくなったらどうしようかと思った。
〈【風耐性】はそのままですね。【痛覚無視】は引き続き痛みが軽減します。そしてこれにより傷の状態に関わらず動く事が出来ます〉
【風耐性】は地味に自爆多いから助かるね。……あっ、そのせいで上がったのか。
そして【痛覚無視】例えば骨が折れた状態で痛くて動けない。そんな状況でもこのスキルがあれば痛みを無視して行動出来るという。地味に戦闘主体の世界ではありがたい。
「……ご主人様気を付けて下さいね?」
「はい……」
笑顔で凄まれた。マジすんません。
〈次の【魔獣調教】は今まで魔物のカテゴリーまでだったテイミングが魔獣も可能になります〉
今のところ予定はないけどその内テイム出来るのだろうか? しかし魔獣って多分私よりも強いよな。テイム……。
〈【主従契約】は【奴隷術】と違い、従者にする事で主との間にパスを作り、関係が深くなり絆が深まるほど固有スキル【レゾナンス】の力が増します。【魔物契約】は【主従契約】の魔物版です〉
その他【忍び足】はレベルが上がると足音が無くなり【ユニゾン魔法】と【?????】は残念ながらわからないとの事。
ユニゾンは作りたてらしいからね。むしろ【?????】の方が気になるかな? 嫌な予感がするのは何故だろう?
【鑑定士】を上げればその内分かるのだろうか?
【主従契約】と【魔物契約】は便利だから、後で二人とやろう。でも【レゾナンス】ってなに?
〈そうですね。それはその内わかるのではないでしょうか? 後でアリシアの奴隷契約解除は方法を教えます。【レゾナンス】は主従間により様々なものになるのでやってみないと分かりません〉
良し、後で進化を見て終わりだね。
〈次は私です〉
名前:ヘル
ステータス不明
スキル:【全種族言語理解】【スキル大全】
【俯瞰LV.5→LV.8】
【聞き耳LV.4→LV.6】
【念話】【可視化】【共有空間(新)】
【透視LV.2(新)】
おお二つ増えてる
〈【透視】はそのままですね。【共有空間】は私を介して【念話】のようなものができる感じですね〉
「それで先からご主人様の声が聞こえるんですね」
なんですと!?
「ご主人様の【念話】かと思ってました。ご主人様口に出さないだけで結構喋っていたんですね?」
おうふっ!! なんかばれた少し恥ずかしい。
〈マスターは置いておいて次に行きます〉
辛辣!?
名前:アクア
レベル:3/10→10/10
性別:女
種族:ミニゴブリンプリースト
HP:180→250
MP:205→310
物攻:14→39
物防:14→47
魔攻:51→100
魔防:51→102
敏捷:32→67
知恵:160→230
器用:110→150
運 :40→50
武器:
防具:乙女の法衣
アクセ:無し
魔法:
風魔法LV.4→LV.7、治療魔法LV.3→LV.8
光魔法LV.1→LV.6、強化魔法LV.2→LV.4
魔法名:
シューティングレイ、ウインドブラスト、ウインドカッター
ヒール、ストログ
ユニゾン:
ボルケーノ、インフェルノ
称号:眷属、同族殺し、
スキル:戦闘系スキル
【爪攻撃LV.3】【噛みつきLV.2】
【魔闘技LV.1(新)】
技能系スキル
【野生LV.8】→【直感LV.1(新)】【罠師LV.4】
ステータスUP系スキル:
【剛力LV.2→LV.3】【堅牢LV.3→LV.4】
【魔術LV.2→LV.5】【魔抗LV.2→LV.6】
攻撃ダメージUP系
【背後攻撃LV.4】【ゴブリンキラーLV.5】
スキル補助系
【癒しの天才LV.6→LV.8】
【癒しの技巧LV.6→LV.8】
【杖のコツLV.4→LV.6】【棍棒のコツLV.3】
【風魔法の片鱗LV.1→LV.3】
【風魔法のコツLV.1→LV.3】
補助、その他スキル
【言語LV.8→LV.MAX】【言語理解】
【ユニゾン魔法(新)】【MP消費緩和LV.2(新)】
スキルポイント225
進化可能です
「アクアにも【魔闘技】と【直感】が増えていますね」
〈【MP消費緩和】はレベル×1%MPを消費抑えます〉
うわ! 良いな~! あれ、これ【魔闘技】ってどうなるの?
〈常時消費型のものには適用されないようです。その代わり【MP効率up】という別スキルがあるようです〉
う~ん、私はなるべくどっちも覚えたいな。何気に両方使うだろうし。
「そうですね。ご主人様は近接も遠距離もこなしますもんね」
「わたしいがい、ぜんえい、いないしね」
それも問題点なんだよね。私紙装甲だし……。
〈最後にアリシアです〉
名前:アリシア・アールヴ
レベル:10/20→18/20
位階:1
性別:女
種族:エルフ
クラス:魔術師LV.1→LV.MAX
HP:290→330
MP:300→380
物攻:35→62+6
物防:33→60
魔攻:105→210
魔防:105→205
敏捷:45→69
知恵:220→340
器用:100→148
運 :10→15
武器:支給弓
副武器:銅のナイフ
防具:森人の狩服
アクセ:無し
魔法:
風魔法LV.5→LV.8、土魔法LV.3
火魔法LV.7→火炎魔法LV.1(新)
水魔法LV.2→LV.4、除去魔法
魔法名:
ウインドブラスト、ウインドカッター、ファイアブラスト
ファイアアロー、ウォーターウォール、アースクリエイト
クオリア
ユニゾン:
ボルケーノ、インフェルノ
称号:奴隷、王家の血筋、
スキル:戦闘系スキル
【魔闘技LV.1(新)】
技能系スキル
【薬草調合LV.5】【集中LV.6→LV.8】
【料理LV.6】【野生LV.3→LV.7】
ステータスUP系スキル:
【剛力LV.2→LV.3】【堅牢LV.2→LV.3】
【魔術LV.1→LV.5】【魔坑LV.1→LV.4】
スキル補助系
【魔法の天才LV.5→LV.7】
【魔法の技巧LV.5→LV.7】
【弓のコツLV.1→LV.4】
攻撃ダメージUP系
【魔力覚醒】
補助、その他スキル
【精霊契約】【速攻魔法】
【MP消費緩和LV.4(新)】
【MP効率upLV.3(新)】【魔力操作(新)】
【無詠唱(新)】
「やりました! 新しいスキル増えてクラスもマスターしましたよ! それに私も【魔闘技】あります!」
───と、アリシアが喜んでいるが……。
これ本当に凄くない?
〈凄いですよ〉
ですよね! でもアリシアって20までしかレベル上がらないの? 後位階って何?
〈人種等にはレベルを上限まで上げると、神殿で輪廻と呼ばれるものが出来ます〉
これはモンスターで言う進化に当たり。姿等は変わらないが、ステータスの一部を保持したまま、レベルが1に戻り、新たにレベルを上げる事が出来るらしい。
〈まぁ簡単に言うと強くてニューゲームですね。才能がある者程サイクルが早いようです。位階は輪廻の回数を示すものです〉
強くてニューゲームか。ふむふむ。なるほどなるほど。レベルが低くても位階が多い奴には気を付けておくべきだね?
〈はい、そうですね火魔法は上位の火炎魔法になっていますね〉
何か変わるの?
〈やれる事は余り変わりませんが、炎の威力が大きく変わるようです。後【MP効率up】は5秒間/レベル分MPが少なくなるようです〉
え~と、5秒で10消費ならレベル分減るって事だよね?
〈はいその通りです。【魔力操作】は発動後の魔法を操作する事ことが出来ます。【無詠唱】は魔法名を言わなくても発動するようになります。二つとも魔術師のマスタースキルですね〉
うん、両方ともやっぱり強力だね。つくづくアリシアが仲間で良かった。
「あうぅ、そんな事…。」
でもレベルが上がった今の状態でも、グルドと戦ったら絶対負けるよね。本当に運が良かった。いや、こんな所で戦ってる段階で悪かったのか?
〈それと進化は村を出た後が良いでしょうね。いきなり見た目が変わると怪しまれます〉
それもそうか。
「おねちゃん、じかん」
おおアクアの言葉が流暢に!? って、あ~本当だ。もう結構経ってる。
〈そろそろ行きましょうか、マスター〉
私達は時間が近付いたので冒険者ギルドに向かう。すると冒険者ギルドの前にエレオノが立っていて、私達に気が付くとこちらに走って来た。
「あっ! みなさーん! お体は大丈夫ですか? ここ最近宿から出ていないって聞いて心配しましたよ」
その言葉にアリシアさんが横目でこちらを見てくる。
やめて! そんなジト目で見ないで!?
「へいき。そんなことよりどうしたの?」
「私も一応当事者なので一緒に事情を聞きたいそうです」
「そうなの?」
「エレオノさん。お父様に直接話さなかったんですか?」
「父には一応話をしたんですけど、今回はアリスベルの支部の方が事情を聞きに来ているんですよ!」
「アリスベル?」
「アリスベルはこのフリクス地方にある商業都市です」
いきなり色んな名前出てきてもうわかんない。良し諦めよう!!
〈諦めないで下さい。後でちゃんと常識を教えます〉
ああ、常識の範囲なのね? まぁ何はさて置き。
「じゃあね。がんばって」
「えっ、あの、ちょっと待ってください! どこに行くんですか?」
「いや、だってめんどいし……」
〈……マスター〉
「ワガママ言わないで下さい! 行きますよ!」
そう言って私は引き摺られながらギルドに入って行く。
アリシアさん最近たまに強引! 私の扱いに慣れてきた!?
〈ふざけてないでちゃんとして下さい〉
はい、すいませんでした!
「父の執務室はギルドの奥です」
アリシアとアクアはエレオノに案内されながらギルドの奥の執務室に向かいドアを開ける。
「まったく、何時までこの私を待たせるつもりなんだ!?」
執務室のドアを開けると、髪の薄い眼鏡を掛けた嫌味の塊のようなハゲ手前の男が開口一番そう言ってきた。
「よし……かえろう!」
私は怒鳴り散らす男を無視してドアを閉めるのだった。
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