第10話アリシアが言うならやってみよう
ゴブリンとの初戦闘で疲れきった私達は食事の後直ぐに眠ってしまった。
そんな中、翌朝目覚めるとアリシアが私に頼み事をしてきた。
「ひとつ頼みたい事があるのですが」
「な、に?」
「実は私がゴブリンに襲われた場所に行きたいんです。もう誰も生き残ってはいないでしょうけど……もしかしたら生き残りの方が居るかもしれませんし」
可能性は低いそう思ってもお互いにわざわざ口には出さない。
「最悪でも奴隷商を含めて七人居たのでゴブリンの死体の有無と、私が捕まった時に持っていた調合の道具を確認したいんです」
確かに状況は分からないけど、ゴブリンを何匹かくらい返り討ちにしているかも知れないな。調合の道具も有れば便利だ。
ヘルさんはどう思う?
〈良いのではないでしょうか。本来ゴブリンは一匹なら子供でも追い返せるモンスターです。何匹か返り討ちにしている可能性は高いでしょう〉
ヘルさんのお墨付きもあったし行ってみようかな?
そう決めた私達はアリシアの案内の下、周囲を警戒しつつ襲われた場所に向かう事にした。
「確かこの辺りだった筈、なんですけど」
ゴブリンの巣を迂回して森の中を進み開けた道に出る。
正確な場所は分からないようで大きく迂回した分、警戒を強めながら道を逸れた森の中を進む。
〈ありました。ここから100メートル程進んだ所です〉
「うっ!?」
襲撃現場に着くとそこは酷い有様だった。
一言で言うなら地獄絵図。
馬車の車輪に括り付けられ何本もの矢が刺さった死体が四つ、手足を折られて腹が裂かれている死体がニつ、頭を踏み潰された死体が一つ。
どの死体も楽に死ねなかった事を簡単に想像出来るものばかりだった。
「ギギ!! ギーー!!」
ゴブゑが立ち続けている私達を呼ぶのでそちらに行ってみる───すると、そこにはゴブリンの死体が三つと、ゴブリンソルジャーの死体が一つあった。
私はアリシアに調合の道具と他に何か使える物が無いかの捜索を頼み、ゴブリンの死体の一部を切り取る作業を始める。
「調合の道具は有りました。それと一応奴隷商が持っていた奴隷石がニつと、回復薬が五つありました。後はゴブリンソルジャーが持っていた剣と、ゴブリンの棍棒、ナイフくらいですね。持って行きますか?」
「ぜんぶ、い、る」
「分かりました。道具と回復薬、ナイフは持っていくので剣と棍棒はお願いします」
私はゴブゑに剣と棍棒を一本持ってもらい、残りの棍棒は破壊してゴブリン達の腕を持ち帰った。
時間を掛けながら周囲を警戒して拠点に戻り、早速アリシアには調合を始めてもらい、私はゴブ焼きを作り始める。
「……やっぱり不味い」
いかん泣きそうだ……スゲー不味い。
「食べ終わったんですか?」
長い闘いの末、ギリギリの
因みにゴブゑはまた食料調達に行っている。
「いま、たべおわ、った」
「お疲れ様です。大分喋れるようになって来ましたね? 私の方も回復薬を二つ作って全部で七つになりました。直ぐに行動に移すんですか?」
〈あまり得策ではありませんね。マスター達は魔物なのでレベルアップで傷が治りますが、アリシアは無理なのでせめて回復薬を後三つは用意したいところです〉
「でも、実際にはどうやって倒すつもりなんですか?」
「わなに、はめ、る」
「罠ですか?」
頷きながらおおまかな説明を続ける。
「わたし、たち、は、よわ、いだか、ら、まず、そるじゃ、の、にひきを、たおす、さいご、にほぶを、やる」
〈私もその作戦には賛成です〉
「また落とし穴ですか? それとも何か、別の罠を用意するんですか?」
「その、まえに、ききた、い。まほう、いりょく、どれ、くらい、だ、せる」
「魔法の威力ですか? えっと、多分ご主人様の期待には応えられないと思います」
どういうことだ?
「ゴブリンに襲われた時、私も風魔法で応戦したんですが。一番大きなゴブリン──多分ホブゴブリンですね。には、かすり傷すら負わせられませんでした」
そんなに強いのか。
「ご主人様達とゴブリンを倒してレベルが2になりましたけど、倒せるまでではないと思います。すいません」
〈丁度良いので魔法のエディットについて説明しますか?〉
魔法のエディット?
〈はい、この世界の魔法はマスターが思っているような固有の魔法だけではありません〉
どういう事?
〈例えばですが。風魔法で出来る事自体は風を起こし操ることですが。先程言ったエディットを使う事で、鎌鼬のような現象を起こす攻撃が簡単に出来るようになります。まあ、予め設定されている魔法もありますがね〉
説明を聞いた私達は、実際アリシアの魔法エディットを見ながらやってみる事にした。
えっ、他の人のスキル取得とかエディット? って見えるの?
〈普通は見えません。ですが、ゴブゑとアリシアはマスターの眷属なので魔法管理、スキル取得、クラス管理はいつでも見られるようになってます〉
一応強制的に取得等もさせる事が出来るらしいが、私の場合は互いの合意なので話し合いの方が良いとの事。
「私からもお願いします。私、なんのスキルをとればいいのか分からないので───魔法の管理も苦手ですし……」
アリシアが言うならやってみようかな?
〈ではエディットを表示します〉
▶魔法のエディットを開始しました。
新規作成
魔法名:
属性:火、風、水、土
威力選択0.1.2
効果選択【斬】【爆】【創造】【壁】【貫通】
おお、本当にゲームのエディット画面だ。でも威力は1と2しか無いんだ? 0は意味があるのか? 効果は結構ある。
〈効果は属性を選ぶと選択出来るものが明るくなり、選べないものは暗くなります。今はまだレベルが低いのでこれだけですがレベルが上がれば項目はもっと増えます〉
魔法作成するとどうなるの?
〈一度作成した魔法は魔法名を言うだけで発動します。威力の高い大規模魔法になれば詠唱も必要ですが、それも作成の際に構成されるので安心して下さい〉
また、同じ魔法でも威力を変えれば、発動までの時間や消費MPも変わり、更にレベルが上がれば複数の効果を持たせる事も可能らしい。
〈モンスターの場合は一つの効果を最大にしたものが予め設定されている場合が多いです〉
そうか、モンスターは頭が良くないから、出来ても単品の効果の魔法しか威力上げて使わないのか?
〈その代わり、単純な威力はモンスターの方が上の場合が多いです〉
ニ、三個効果付けたりしたら、戦略の幅がかなり広くなりそうだな。いろいろと効果を組み合わせたり出来そうだ。
〈モンスター以外の種族はそちらが主な使い方です〉
「ほかの、ぞく、せいは、な、にがで、きる」
▶熟練度が一定に達しました【言語LV.6→LV.7】に上がりました。
また上がったよ!!
「えと、火魔法のファイアアロー、土魔法のアースクリエイト、水魔法のウォーターウォールです。えと、全部名前通りなんですけど説明しますか?」
「つちだけ」
「アースクリエイトは、MPを使って地面などの土から武器を作り出し扱う事が出来ます」
「ぶき、だけ?」
「一応剣以外にも、槍とか矢も作れます」
「きょう、どと、じかん、は」
「MP消費を最大にすれば、10秒程で石くらいの固さの物が作れます。作成した物は壊されるまでは持ちます」
うん結構使える。
「ひと、かぜ、さいだいい、りょくで、みてみたい」
「わかりました」
アリシアは目の前の木に向かって魔法を放つ。
「ウインドカッター!」
放たれた魔法は木の表面を5㎝程の深さで傷つける。
「ファイアアロー!」
今度は火で出来た矢が洞窟の壁に少し突き刺さる。
こちらは3㎝程だ普通の矢位の貫通力があるみたいね。
「どうですか?」
「つかえ、る、それぞれ、なんか、いできる」
「どれも最大消費MPは30、最小消費MPは15なので、5回から10回くらいです」
「これだけ、できれば、つ、かえると、おもう」
〈そうですね。アリシアを守るように動きつつ相手を牽制、魔法で弱らせ止めを刺すのが良いかと〉
「その、ほうしんで、あしたか、らいっぴき、ずつ、か、る」
話が終わるとゴブゑが帰ってきたので、食事を食べた私達は明日に備えて寝る事にした。
▶スキル【喰吸】のスキルが発動しました。
【マヒ耐性LV.7→LV.9】に上がりました。
【毒耐性LV.3→LV.5】に上がりました。
【急所攻撃LV.2→LV.3】に上がりました。
【武器のコツLV.2→LV.3】に上がりました。
【風魔法LV.1新】を習得しました。
【格闘LV.1新】を習得しました。
【爪攻撃LV.1新】を習得しました。
▶スキル熟練度が一定に達しました。
スキル【喰吸LV3→LV.4】に上がりました。
ゴブ子の寿命まで12日
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