私、突っ走ることにする。

先輩と別れた後自室に入った私は、とりあえずいただいた連絡先をスマホに登録した。

なぜか先輩のことを考えていると少し顔が熱くなる。


うーん、これが噂に聞く恋なのかな………

でも助けられて惚れるとか短絡的すぎるし………

また思考が支離滅裂に、少し落ち着こう。


思い返すと、助けられてからは私の先輩に対する感じ方や接し方が他の男の人とは違う気がする。

先輩の何気ない仕草にちょこちょこ目がいったり、先輩に『落ち着いて見える』って言われて喜んだり。


それに、私が玄関を閉める前に見た先輩の肩は濡れていた。

何で肩が濡れていたのか?

決まっている、私が濡れないように傘を傾けてくれたからだ。


さらに、たぶん先輩の家はこっちの方じゃない。

こっち方向ならあの道には入らないはずだから。

それを嘘ついて私が申し訳なく思わないようにしたのだろう。


とことん優しい人だ。

他の男の人とは違うし、こんな人にはもう二度と会えないかもしれない。

この人以外に付き合っても良いって、一緒に居ても良いって思える人は他にいないかもしれない。


私、もしかしなくても先輩のこと、好きなんだ。


男嫌いだったはずの私がこんなことを考える日が来るとは思わなかったけど、自覚した以上止まる気はない。

今まで全く必要なかったこの容姿を最大限に活かして、今まで苦手にしていた会話もうまくできるようにして、全力で先輩を振り向かせてみせる。


この日、男嫌いの私が消えて、初恋に燃えあがる私が生まれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る