いつも嫌われる不器用な人たち

内山悠

いつも嫌われる不器用な人たち

 過去の人生で色んな人に会ってきた。私が会ってきたのは順風満帆な人たちばかりではない。集団の中で孤立して、居場所を失っていく人を沢山見てきた。

 

 最初は丁寧に接してくれた先輩に邪険にされた人。いつも陰で笑いものになっていた人。誰かのサンドバックになっていた人。皆さんの中には、彼らをあざ笑っていた人もいれば、彼らの一人だったひともいるかもしれない。


 「小中高といつもクラスに馴染めませんでした」、「会社の人間関係に悩んでいます」。こんなことを言う人たちに会ってきた。彼らは、自分勝手で乱暴な、ジャイアンのような乱暴者だったかと言えばそうではない。


 どちらかというと、彼らは真面目で優しく、(偏見だが)メガネをかけていて、髪の毛はサラサラだった。さっきの例えで言えば、のび太のような人が多かった気がする。便宜上、彼らのことをのび太と呼ぼうと思う。


 のび太は物腰柔らかで、最初は集団に歓迎されることが多い。「いい人が入ってきた」、「頭が良さそうだね」なんて褒められたりする。のび太は積極的に先輩や上司に話しかけ、のび太の名前は周りの人に広まっていく。この時点で、のび太は「明るい期待の新人」になる。


 しかし、のび太には二つの欠点がある。一つは、能力が非常に低いということ。のび太は頭が悪く、運動もできず、そして、人間関係の綾(あや)を理解するのが少し苦手だったりする。

 もう一つの欠点は、のび太は「非常に調子に乗りやすい」ということだ。


 最初はのび太を受け入れていた人たちも、のび太の様子を見て、「あれ?」と思うようになる。パっとしない、動きが遅い、ミスが多い……段々とのび太の能力の低さが露呈するようになる。


 ここで、のび太が最初の印象通り「いい人」のままであったら、のび太は「不器用だが悪くない人」として、集団で生き残ることができたかもしれない。しかし、のび太の致命的な欠点が邪魔をする。


 最初の話に戻そう。みんなに歓迎され、集団で有名人になったのび太はどうなっているだろうか。悲しいかな、調子に乗ってしまっているのだ。


 のび太は先輩や同僚に横柄な態度を取ったり、飲み会でバカ騒ぎしたり始めている。酒に酔ったのび太は、致命的な一言を言ったりする。


 多くの場合、のび太は悪意から失礼なことを言うのではない。むしろ、「場を盛り上げてやろう」、「みんなを楽しませよう」という全員から、イジってはいけない人を茶化したり、非常識な言葉を発してしまう。


 飲み会の翌日、のび太は周りの態度を見て、何かしでかしてしまったことを悟る。何とか挽回しようと試みる。しかしそれは多くの場合、叶わない。のび太の生来の能力の低さが、のび太の評価をさらに引き下げる。


「無能だがいい人」、「嫌な奴だが有能」であれば、集団の中で生き残ることができる。しかし、「無能で嫌な奴」の存在を許す集団などありはしない。

 

 のび太は遠くない内に追放される。あるいは、自分には居場所がもうないことを理解し、自ら集団を去る。もしくは、鬱になって引きこもる。


 のび太は人生でそれを何回も繰り返す。周りから嫌われ、あざ笑われながら。

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