赤髪の治療師

@pppappp

日本↑↓異世界

第1話 夏休み前、放課後

 キーンコーンカーンコーン


 全国の学校で共通のチャイムが背後の校舎から聞こえてくる。「用がないなら早く帰れ」と、担任に教室から追い出されたので友達との楽しい会話を渋々切り上げて仕方なく下校することにした。

 制服が可愛くて選んだ学校だった。特に夏服。めちゃくちゃ偏差値が低いわけでも、東大京大その他有名大学に何十人も進学しているというバリバリの進学校でもなかったので校風とか特に気にせず選んだ。

 しかし、入ってみたらやたら将来の夢とか、これがしたいからこの学校にきた、という目的意識がはっきりしたひとたちが多い高校だったのである。

 まだ1年のときは、同じように特にすることもない者同士の仲良し女子グループで放課後出かけてスマホの写真ファイルの中身を増やすのがお決まりだった。なのに、6月の修学旅行という一大イベントが過ぎてから、最近はどの子も家庭教師や予備校の予定があると言って付き合いが悪い。周りに影響されて何かしなくちゃ、という気になっているのかもしれない。部活に入っている子はそっち優先だし。

 しかも、担任はすれ違い様に、今一番言われたくないことを言ってくれやがったのだ。不愉快にもなる。


「笹木、進路希望調査まだ出してないだろう。金曜までに持ってこいよ」


 ウザいんだよ。バレバレのカツラのくせに。

 不満をスマホのSNSに吐き出しながら歩く。友達は反対方向だったり、チャリ通だったりで校門を出たら一人なのだ。

 校門から直ぐの交差点で立ち止まる。赤信号。

 スマホから顔を上げると、隣に同じ学年の男子がいるのに気が付いた。二学期から留学するとかどうとかで、ちょっと噂になった男子だった。


 やりたいことがある人はいいですねー。充実してるんでしょうねー。でも、わたしだってやりがいがあることを見つけれたら変われるかもしれないし?楽しいことがない、つまんない周りが悪いせいもあるんじゃない?


 なんて考えていたためなのか。5秒後、信号無視したバイクを避けようとして、横転したトラックがこっちへ突っ込んできたのは。

 まばたきをした自分の瞼がスローモーションで動いているように感じた。足に根っこが生えたみたいに一歩も動けなかった中、辛うじて、あの男子が自分のことを突き飛ばしたことがわかった。しかしそれを脳内できちんと理解する前に、意識がプツンと途切れた。


 せっかく助けてくれようとしたのに、わたし死んじゃった。なんかごめんね。


 笹木蘭羅ささき らら、高校2年生17歳。夏休み前の初夏の出来事である。

  

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