ロンド

土芥 枝葉

ロンド

ロンド【イタリア rondo】

音楽形式の一。 ABACABA のように反復主題部( A )と挿入部( B ・ C )の交替からなる。古典派ではソナタ・交響曲などの終楽章に,ロマン派はピアノ小曲に好んで用いられた。回旋曲。


――松村明編(2006)『大辞林』第三版, 三省堂.


 *


 豆腐屋のラッパの音で浅い眠りから覚醒した。風情のある目覚めではあったが、隣では太った女がいびきをかき、無様な寝相を晒していた。そちらは決して趣があるとは言えない。

 上体を起こして置き時計を見た。午後四時になろうとしている。

 オレは必然性を感じるほどニコチンを欲し、すぐ側のテーブルに手を伸ばしてタバコとライターを乱暴に掴んだ。カチカチというライターの音で友子も目を覚ましたのか、身体の奥底から獣のようなうなり声を発しながら全身を伸ばしている。オレはムキになって煙を吸い込み、ため息と共に吹き出した。友子は再び眠りの世界へと戻っていったようだ。

 しまりのない寝顔にかつて感じた可愛らしさは微塵もない。元々肉付きの良い方ではあったが、付き合い始めてからは目に見えて太り続けている。おまけに、髪は似合わないドレッドヘア。ショートカットが好きというオレの好みは知っているはずだが、歌やダンスをするわけでもないのに、ある日突然ドレッドをかけてきた。オレは何とも言えない気持ちをごまかすように苦笑するしかなかった。

 友子はオレの嫁ではないし、ましてやオレの所有物でもない。自分の好きな格好をすれば良いし、好きなものを好きなだけ食べれば良い。オレだって同じように好き勝手やっている。しかし、相手に好きでいて欲しいと思うのなら、好かれるための努力だって必要ではないだろうか。時には相手に合わせることも必要ではないだろうか。友子はオレに愛されたいと思っていないのだろうか。

 もちろん、オレは愛されるための努力は惜しまない。今現在、その情熱は友子ではなく別の女性に向けられていたが。


 バイト先のレストランに好みの女の子がいる。名を雪枝といい、オレとは別の大学に通う二年生で同い年だ。バイト先では彼女の方が少し先輩で、よくオレに話しかけてくれるし、仕事についても気にかけてくれる。

 最近、雪枝は肩まであった髪をショートカットにして、服のチョイスはきれいめでシンプルなものに、メイクもナチュラルになった。それとなく話したオレの好みに限りなく近い。そんなことがあるとこちらも意識してしまうわけで、昨日の帰り際、二人きりになったエレベーターの中で、思わず雪枝にキスをしてしまった。彼女はまんざらでもない様子だったが、友子のことを気にしているようだった。

 雪枝の気持ちを確信し、そのまま最後までいってしまいたかったが、良心の呵責とやらに引き留められた。友子と別れることに未練などこれっぽっちもなかったはずなのに。


 雪枝の柔らかい唇を思い出し興奮したが、友子の寝顔を見るとすぐに萎えてしまった。それについてオレは落胆することも、自分を恥じることもなかった。水が高いところから低いところに流れるように、至極当然のことだと思った。オレはもはや友子を愛してなどいないのだ。

 問題は別れる方法だった。友子がすんなり応じてくれるとは思えない。過去に二度ほど別れ話を持ち出したが、いずれも未遂に終わっている。

 他に好きな人ができたなどと正直に言おうものなら、友子は雪枝を殺してしまうかもしれない。決して誇張ではなく、オレの知っている友子はそのような性格だった。

 そのせいで雪枝には電話番号もSNSも教えていなかった。友子はしょっちゅうオレのスマホをチェックしているようなので、あまりにもリスクが大きい。

 正直なところ、オレは焦っていた。雪枝だっていつまでも待ってくれるとは限らない。このチャンスを逃してしまったら、彼女ほど良い女とはもう縁がないかもしれないのだ。


 根元まで吸い終えたタバコをもみ消していると、友子がンゴ、といびきを詰まらせた。プツリと心の糸が切れたのが自分でもわかった。

「友子、起きろ」

 苛立ちを隠さず揺り起こすと、友子は薄目のまま鼻の穴を広げ、歯茎をむき出しにして長いあくびをした。目を覆いたくなるような光景だった。オレは現実から逃避するように立ち上がってパンツを履き、流しへ行って水を一杯飲んだ。まずい水だった。

 部屋に戻ると友子は裸のままタバコをくゆらせ、鼻から煙を吹き出しながらスマホを弄っていた。観てもいないのにテレビもつけている。もういちいち気にしないことにした。もうすぐオレ達は他人同士になるのだから。

 自分を正当化するつもりなどない。いくら罵られても構わない。このまま自分の気持ちに嘘をつきながら生きていくよりはずっといい。恐らく、それは友子にとっても。

 つまらないドラマの再放送が始まる頃、タバコを吸い終わった友子は服を着てオレの隣に腰掛けた。いつもならこの後夕食を買いに出かけることになる。

 オレは世界を終わらせるような勢いでテレビを消した。立ち上がろうとした友子を座らせ、そちらに向き直る。

「なあ」

 その後の言葉を続けることができなかった。具体的な作戦を考えないままヤケ気味に切り出したので無理もない。まごまごしている内に友子はこちらの意図を悟ったらしく、またか、とでも言わんばかりに大きなため息をついた。パンドラの箱から出てきたような、深く暗いため息だった。

「なに、別れたいの?」

 愛想の悪い駅員のような口調で、さも面倒臭そうに言われた。友子はオレが強く出られないことを分かっているみたいだった。

「他に好きな女がいるんでしょ?」

 友子はできる限り感情を抑えながら喋っているように感じられた。気づかれていたのは想定外だったが、堰が切れたら大暴れするかもしれないので、彼女が努めて冷静でいてくれるのは歓迎すべきことだった。

 対するオレは、何もかも見透かされているような気がして、だんだん惨めな気持ちになっていった。友子の目を真っ直ぐ見ることさえできない。ちんけな男だ。

「その女と付き合いたいならそうすれば……ムカツク」

 友子は立ち上がるとひったくるようにバッグを掴み、ぶつぶつと呟きながら玄関へと向かった。ほとんど聞き取れなかったが、もしかしたらそれは呪詛の言霊かもしれなかった。そうして適当にスニーカーを履くと、何も言わずに出て行ってしまった。ドアは比較的普通に閉じられた。

 身動き一つとれずにいたオレは、ヘビに睨まれたカエルがどんな気持ちになるのか、身をもって実感していた。

 少しして我に返り、大きく深呼吸してからタバコに火をつけた。

 前向きに考えよう。友子が戻ってくることはないだろう。オレが嘘をついてまで付き合い続けるよりは、友子のことを本当に愛してくれる男と付き合う方が彼女のためだ。喧嘩別れみたいになってしまったのは残念だったが、一番の目的は達成されたわけだし、これ以上こじれることもなさそうだった。今のオレに必要なのは友子ではなく雪枝なのだ。


 すぐにでも雪枝に連絡を取りたかったが、彼女とは連絡先を交換していなかったので、結局次のバイトの日、友子と別れた翌日の夕方までお預けとなった。

 仕事の合間、手が空いた隙をついて雪枝に近づいた。獲物に忍び寄る野生動物のごとく、チャンスを見逃さないように、一時間以上タイミングを見計らっていた。同僚の目には不審に映ったかもしれない。

「雪枝、今日終わった後空いてる? 飯食いに行かない?」

 友子と付き合っている内は、オレと雪枝が接するチャンスはバイト中しかなかった。それは雪枝もわかっていたはずだ。たった今オレが発した言葉は、その前提を覆すものだった。彼女は少し間をおいてその意味を理解したらしく、笑みを浮かべて「もちろん、大丈夫だよ」と答えた。

 気のせいかもしれないが、奥へ向かう雪枝の足取りは軽やかに見えた。

 オレたちは未来へ向かって確実に前進している。たとえその先に別れが待っているとしても、自分の信じた道を行くだけだ。


 バイトが終わった後、雪枝と二人で近くの居酒屋に入った。オレたちはこぢんまりとした個室に通され、掘りごたつの中で足を絡め合わせるように、限りなく恋人に近い雰囲気で向かい合った。やがてビールと雪枝の頼んだカシスオレンジが来て、口づけをするように、そっと乾杯した。グラスの触れあう音が輝かしい未来を暗示しているようにさえ感じられた。

 一口飲んでグラスを置くと、神妙な空気が部屋に舞い降りた。雪枝は分かり切った事実を確認したいように見えたし、オレは二人の仲を確固たるものにしたかった。はやる気持ちを抑え、まずは友子とのことを話す。

「彼女と……別れたんだ」

 オレはあたかも苦しい選択をしたかのように装った。友子に対する愛着や名残惜しさなど微塵もなかったにもかかわらず。

「彼女さんは納得してたの?」

 雪枝はそっと尋ねた。オレと友子に配慮したような声だ。猿芝居が功を奏したみたいだった。

「完全には納得してくれなかったけど、オレの気持ちを尊重してくれたみたい」

 恐らく事実とは異なるが、目の前の大事に比べれば些細なことだ。雪枝は「そっか」と安心したように呟き、若干の愁いを含んだ笑みを浮かべ、目を伏せた。自分がその原因になったかもしれないという後ろめたさがあるのだろう。

「オレの中で、雪枝の存在がどんどん大きくなって、これ以上嘘をつくことができなくなったんだ。自分にも、友子にも」

 そう言って雪枝の手を握ると、彼女は顔をほころばせた。

「雪枝が好きだ。オレと付き合ってほしい」

「……はい」

 雪枝は少しだけ間をおいて頷いた。それから顔を上げて、天使のような顔で微笑んだ。その瞬間、目の前に光が満ちて、オレは友子のことなどすっかり忘れてしまったのだった。


 雪枝と過ごす日々は、文字どおり天にも昇る心地だった。二人であちこちに出かけ、綺麗な景色を見て、おいしい物を食べ、お互いを余すことなく求め合った。あっという間に季節は過ぎて、まもなく冬が訪れようとしていた。

 なるべく一緒に休めるようにバイトのシフトも調整したが、他のメンバーとの兼ね合いもあるので全て思いどおりにはならなかった。そうして、今日は雪枝だけシフトに入り、オレは自宅で彼女を待っていた。

 少し酒を飲んでうとうとしていると、インターホンが鳴った。雪枝が帰ってきたのだろう。飛び上がるように起きて玄関に向かう。

 そういえば雪枝に合い鍵を渡していなかった。作ろう作ろうと思いながらいつも忘れてしまう。ほとんどうちに入り浸っているようなものだから、早いところ渡しておこう。そんなことを考えながら玄関のチェーンを外し、鍵を開けた。

「お帰り……」

 ゆっくりドアが開いて、雪枝が可愛らしく顔を覗かせる。頭の中ではそんないつもの光景を思い浮かべていたが、現実はかなり異なっていた。鍵を開けた瞬間、ドアは勢いよく開き、雪枝が猛然とタックルしてきた。胸に激しい衝撃を感じ、何が起こったのか、とっさには理解できない。雪枝は見慣れないニット帽を被って、オレに密着していた。いや、雪枝はこんなに太っていない。それに、こんな香水はつけていない。この匂い――。

 オレがその正体を悟ったのと同時に、目の前の女は顔を上げた。そこには目をぎらつかせ、邪悪な笑みを浮かべる友子がいた。

 彼女が体を離すと、自分の胸から何か棒状のものが飛び出ていることに気がついた。それが包丁の柄で、自分が胸を刺されたと理解した頃には、すでに体から力が抜け、崩れ落ちていた。感じたことのない痛みと苦しみが全身を駆けめぐる。みるみる内に服は血に染まり、目が霞んできた。友子はぐふふっ、ぐふふっ、と汚らしく笑っている。

 雪枝が心配になったが、もうどうすることもできない。遠のく意識の中で、オレは友子に憤ることもなく、後ろめたい気持ちになることもなく、ただ、彼女を恐れていた。

 やがて、完全な暗闇と静寂が訪れた。


 *


 飛び起きた。心臓がバクバクと脈打っている。

 オレは生きていて、自宅のベッドの上にいた。外から豆腐屋のラッパが聞こえてドキリとした。さらに次の瞬間、横を向いて背筋が凍りついた。隣に友子が寝ていたのだ。

 ……オレは夢を見ていたのだろうか。友子と別れ、雪枝と付き合い、幸せな時間を過ごしたのは夢だったというのだろうか。

 それにしてもリアルな夢だった。友子に刺された胸が痛むような気がしてさすったが、当然血は流れておらず、傷もなかった。

 生きているのはありがたいことだったが、雪枝とのことまで夢だったと思うとがっかりせずにはいられなかった。深呼吸して落ち着きを取り戻し、ひとまず一服する。

 時計は午後四時前。状況は何から何まで先程見た夢の冒頭と一致していた。念のためスマホを確認すると、日付は友子と別れ話をした(はずの)日で、雪枝のメッセージも通話履歴も存在せず、彼女の連絡先すら登録されていなかった。やはり夢だったか。オレは改めて落胆した。

 そうすると、面倒なことに、もう一度友子と別れ話をしなければならない。夢の中では何とか別れられたが、現実ではどうなることやら。タバコをもみ消し友子を起こそうとしたが、先程刺された夢がフラッシュバックし、反射的に手を引っ込めた。

 気後れしているからあんな夢を見るんだ。そんな風に自分を鼓舞し、意を決して友子を揺り起こした。

 別れ話は案外簡単に済んだ。夢と違って友子は怒ることもなく、「ふーん」と軽蔑したような目でオレを見ただけだった。やがて彼女は「分かった」とおとなしく部屋を出て行った。思いの外すんなり終わったので拍子抜けしたほどだった。

 何はともあれ、これでオレは自由を手に入れた。誰に遠慮することもなく、雪枝にアタックできる。


 雪枝との関係も、ほとんど夢と同じように展開した。交際自体は順調に進んだものの、オレは不吉な夢のことをずっと気にかけていた。

 ――いつか友子が殺しに来るかもしれない。

 自ら気をつけるのはもちろん、雪枝にも身の回りに注意を払うよう、口を酸っぱくして言い聞かせた。誰かが自宅を訪ねてきたときには覗き窓から確認することを徹底し、怪しいときは応対しないこともあった。その甲斐あって刺されるようなこともなく、雪枝との日々は穏やかに流れていった。


 やがて、社会人となったオレたちは籍を入れることに決めた。

 その土曜日は二人で式場の下見に行ったり、雪枝がウェディングドレスを試着したりと忙しく、日が暮れる頃にはくたくたになったが、雪枝の嬉しそうな顔を見ていると疲れもどこかに吹き飛んでしまう気がした。そうして、せっかくだからと外泊することにして、夜景が見える少し良い部屋をとったのだった。

 雪枝の後でシャワーを浴びた。とうとう自分たちも結婚するのかと思うと幾分不思議な気持ちになった。あのとき雪枝を選んだことで今がある。そして、こんなにも満たされている。あのまま友子と付き合っていても結婚することはなかっただろう。まかり間違って友子と結婚することになったとしても、こんなに愛おしい気持ちにはなれなかったはずだ。オレの選択は正しかったのだ、恐らくは。

 バスルームを出ると、薄暗い部屋の中、雪枝はベッドで横になっているように見えた。疲れて寝てしまったのかもしれない。せっかく良い部屋なので、気分を変えて愛し合いたいと思っていたが、確かにオレも疲れていた。

 水を飲み、もう寝るかとベッドに近寄ると、すぐに異変に気がついた。雪枝の髪が増えている気がしたのだ。彼女はずっとショートカットにしているが、ベッドの上にはロングヘアかと思えるほどの髪の毛が見える。それに、何か金属のような臭いも漂っている。様子がおかしい。慌てて灯りをつけ、驚いて声をあげた。

 ベッドに横たわっている女性は、恐らく雪枝だった。バスローブを着て仰向けに寝ていたが、固いもので何度も打たれたのか、顔がめちゃくちゃに潰されていて、もはや雪枝であるのか判別さえできなかった。髪の毛だと思ったのは夥しい量の血だった。

 オレは驚愕し、戦慄し、憤慨した。友子だ。あいつがやったに違いない。そう確信して、自分にも危険が迫っていることに気がついた。そう思うのが早いか、背後から荒い息づかいが聞こえた。ゆっくり振り返ると、そこには返り血を浴び、気色の悪い笑みを浮かべた友子が立っていた。彼女は右手に持った何かを振りかぶった。


 *


 気がつくと天井を見つめていた。心臓が壊れたように脈打っている。全身に脂汗をかいているようで気持ちが悪い。

 そこは大学時代に借りていたアパートの部屋で、隣には友子が寝ていて、ラッパの音が聞こえてきた。時計は午後四時前だ。

 また夢を見ていたというのか。雪枝と長い時間を過ごしたはずなのに、全て夢だったというのか。おもちゃを取り上げられた子供のように耐え難い喪失感を感じ、悔しくてたまらなかった。おまけに、最後はまた、この女にぶち壊しにされた。自分が見た夢なので八つ当たりには違いないが、最悪の気分だった。

 今見ているこの光景でさえ、夢ではないのだろうか――。

 もう混乱して、何が何だか分からなくなってきた。

 オレの気配に気がついたのか、友子が目を覚ました。オレはまだこの女と付き合っているのか。そう思うと情けなくなってきた。

 友子は上体を起こすと気味の悪い笑みを浮かべた。夢の中で雪枝を殺し、オレに襲いかかってきた、あの顔だった。

 次の瞬間、オレは両手で友子の首を締め上げていた。こいつが生きている限り、オレと雪枝の邪魔をしやがる。こいつを殺さなければならない。くたばれ、と念じながら、渾身の力を両手に込める。友子は抵抗しつつも、まだニヤニヤと笑っていた。それが気に入らなくて、首を絞める両手にますます力がこもった。

 やがて友子は動かなくなった。手を離すと、生命を失った肉の塊は布団の上にどさりと倒れた。オレはようやく冷静になり、自分のしたことに焦り始めた。いくら何でも殺すのはまずかった。友子からは解放されてもオレは殺人犯だ。もう雪枝と結ばれることもない。何て馬鹿なことをしたんだ。友子の死体に背を向けて頭を抱え込む。ちくしょう、なんでこんなことに……。

 背後で音がした。友子が蘇生したとでもいうのだろうか。オレは恐ろしくて振り返ることができない。

 腰が抜けて動けないでいると、後ろで何かが動く気配があり、それが段々近づいてくるのが分かった。やがて、首筋に生暖かい鼻息がかかった。


 *


 ……また夢だったのだろうか。オレは自宅アパートの天井を見つめていた。体は冷え切って、まるで死人にでもなったような気がした。外からラッパの音が聞こえてくる。

 そうか、これもきっと夢なのだろう。オレはいつまでこんなことを繰り返すのだろう。

 友子を殺してしまったが、あれもきっと夢のはずだ。現に、左手から息づかいが聞こえてくる。そう思って横になったまま左を向くと、友子は一切の感情を含まない魚のような目をして、こちらを凝視していた。

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ロンド 土芥 枝葉 @1430352

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