カイザーの足音
友軍のSOSを受けたマティアスは友軍の支援に向かっていた。
今回も機体のメンテナンスが終わり次第アルーンが先にエンペラーで、出ていくようだ。
「よし、先に出るぞ」
先に出て行ったエンペラーであったが、今回は友軍の危機に間に合わなかったようだ。
「これは……ひどいな」
見渡す限りに友軍の残骸であった、
その残骸を調べていると、アルーンがあることに気づいた。
「これはまさか!? いや、そんなはずはない……」
一つの可能性に行き着いたアルーンだが、それを振り払うように頭を振った。
あとからケネスとリズがきた。
「アルーンどうした? これは……!?」
あまりにも綺麗すぎる切れ味に、ケネスもその一つの可能性に行き着いたのであろう、アルーンと見合わせた。
「どう思う?」アルーンがケネスに聞く。
「どう思うもないだろう、間違いなくカイザーの仕業だ……」
顔面を蒼白にしながらケネスが呟く。
「カイザーってなに?」
リズが聞く。
「カイザーってのはこのエンペラーの対をなす機体だ、帝国は凍結を解いたのか!?」
「おそらく凍結を解いたのだろう、元々は停戦と共に凍結された代物だ、停戦が終わった今凍結を解いてもおかしくはないだろう」
「帝国は一年前の悲劇を忘れたのか!?」
気が動転したかのようなケネス。
「わからない、だが何かしらの理由があって凍結を解いたのだろう」
「また暴走したらどうする!?」
「その時は、今度こそ俺が止めるまでさ」
アルーンから覚悟をした声がした。
「また暴走って、一年前にそのカイザーってのは何をしたの!?」
リズが聞く。
「リズ、君は知らなくていいことだ」
「知らなくていいことだって、そうやっていつもあたしを蚊帳の外にして!」
リズが怒った。
「リズ…君にも関係はあることだ、なんせ君のお兄さんが」「よせ!ケネス!」
「あたしの兄様が関係あるの!? どういうことよ!?」
「ここでこれ以上この話を続けるのはよそう、続きは艦に戻ってからだ」
そうアルーンがいうが、
「艦に戻ったら絶対に話してもらうわよ」
リズは念を押した。
艦に戻ったアルーン達は、さっそくリズの質問責めにあった。
「あたしの兄様が関わってるってどういうこと!?」
「君のお兄さんが関わってるって言ったのは、カイザーに乗っていたのは、君のお兄さんだからだ」ケネスが観念したように呟いた。
「え!? じゃあ兄様は生きてるっていうの!?」
「わからない」アルーンがいう。
「わからないってどういうことよ!?」
リズがまくし立てる。
「一年前にカイザーが暴走して以来、君のお兄さんを見たものはいないんだよ、それで俺たちは死んだと思っていた訳なんだ」
ビーービーー何かが襲来したサイレンが響き渡る。
「話は後だ、敵を迎撃するぞ」
準備ができていたエンペラーを筆頭にネイオンが出撃していく、
その瞬間内功バリアが引き裂かれエンペラーの次に出ていこうとしたネイオンがやられた!
「くそっ! これじゃ出撃するまで時間がかかる! それまでアルーンに任せるしかない」
アルーンが乗るエンペラーは攻撃してきたネイオンを見ていた。
「あれは……間違いない、カイザーだ……!」
内功バリアが引き裂かれた今、ブリッジは無防備である、そこを攻撃しようとしたカイザーに対し
「やらせん!」
大型シールドをカイザーとマティアスとの間に飛ばした。
大型シールドがカイザーの攻撃を防いでいる間に、
アルーンは青龍十六掌の一手、飛翔雲龍を放った。
その一手を、安々と剣で受けたカイザー。
「随分とやるようになったな」
カイザーのパイロットが呟いてくる。
「お前は……まさか……!?」
アルーンが相手の呟きにぼうっとしていると、相手は撤退をしようとしていた。
はっとなり、両腕を上げ、青龍十六掌の新たな一手、双龍躍動を放つと、相手はそれすらも軽々と避け、去っていった。
「あの身のこなし、間違いない……あいつ……なのか……?」
アルーンは知らず知らずのうちに呟いていた。
艦に戻ったアルーンは蒼白な表情のケネスと話した。
「戻ってきたんだな……カイザーが……」
「あぁ、それとおそらくユーリもな……」
「冗談だろ? ユーリも帰ってきたならなんで帝国の側についてるんだよ!?」
必死の表情をして問うケネス
「わからない、しかし何か理由があるには違いない」
近くにいたリズが泣き出した。
「本当に兄様は生きていたのね」
「あぁ、理由はわからないが、今は帝国についているようだ」
「兄様……」
リズは泣きに泣いていた。
数日後マティアスに通信が届いた。
内容はこうだった。
エンペラーのパイロットと話しがしたい。
座標XX,YYで会おう
とだけ伝えられ、通信は切られたようだ。
「アルーン、どうするんだ?」
ケネスが聞いてきた。
「どうもこうも会ってみるしかないだろう」
そう言ってアルーンは通信で言われた座標に向かったのであった。
「来たかアルーン」
言われた座標についた途端、通信が送られてきた。
「本当にお前なんだなユーリ」
「あぁ」
「生きていたんだな」
「あぁ、一度は死んだがな」
「一体何があったんだ!? ユーリ!」
「俺はあのカイザーの暴走のときに一度死んだんだ、その後帝国にサルベージされ、サイボーグとして命を救われたのだ」
「なんだと!? それは本当か!?」
アルーンが驚愕している。
「本当さ、これを見るがいい!!」
そういって胸をさらけ出したユーリであった、その胸には人工的に作られたであろう心臓が。
「王国は……? リズは元気なのか……?」
そう聞くユーリであるが、アルーンが答えようとした矢先に
「うっ……俺には時間が!?」
「ユーリ!?どういうことだ!?」
「俺は……帝国に操られ……うわああああ」
そこで通信は途切れた、するとカイザーの目が光り、エンペラーに襲いかかってきた。
「ユーリ!!!」
そう叫ぶが相手には届かない、無慈悲なまでに攻撃してくるカイザーがそこにはいた。
大型シールドで攻撃を防ぐアルーン、そして隙を見つけて青龍十六掌の一手、
飛翔雲龍を放つが、弾かれてしまった。
相手の攻撃に防戦一方のアルーン、隙を見つけては一手一手を放つが、全て受け流されていた。
「このままではまずいな」
打開策を考えていると、リズがネイオンに乗ってやってきた。
「兄様~~~~!!!」
リズが叫ぶ、するとカイザーの動きが止まった。
今だ!内功を込めた一撃、双龍躍動をカイザーに叩き込んだ。
ぐらりとよろめいたカイザー。
そこにリズのネイオンが近付こうとするが、
「くるな!」「くるな!リズ!」
二人からくるなといわれ、立ち止まるしかなかったリズ。
するとカイザーがリズのネイオンを攻撃しようとしたので、
再度アルーンは青龍十六掌の一手で攻撃するしかなかった。
するとカイザーは弾き飛ばされ、撤退した。
「リズ、大丈夫か」
「どうしてあなたと兄様が戦わなきゃいけないの!?」
「あいつは自分でも言っていた通り、帝国に操られてるんだ」
「なにか方法はないの!?」
リズは泣きながら問う。
「わからない、ケネスならなんとかする方法を知ってるかもしれない」
とにかく今は二人は艦へ戻るしかなかった。
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