オタクでシスコン の兄はモテるが自覚がない
米 八矢
第零章 オタクにこの世は生きにくい
この世には二種類の人間が存在する。
その二種類の人間は長く対立している。
ある一方は厳しい差別を受けてきた。
その二種類とは―――オタクか否か。
オタクとは、二次元を愛し、二次元に愛された者たちの事である。ある時は画面の中の女の子たちを嫁と呼び、ある時は嫁のために金を使う。自分達がオタクであることを誇りに思っている。
我が故郷日本は、オタク文化が発展している。それこそ、世界に誇れるほどである。
素晴しいストーリー、可愛いキャラ、泣ける音楽。
その全てが愛すべきものだ。
だが、偏見はある。
ある一部のオタク達の狂気じみた行動によって、オタクはダメな物という認識が広まった。
特にラ〇ライバーに対する偏見は突出したものとなった。
俺はなんとも思わないぞ。
だって数年間、日本の経済を支えたアニメだもん。
かよ〇ん可愛いし。お米好きだし。沼津は良い所だし。
コホンッ
それは置いておいて。
この物語はオタクに対する偏見の強い時代の中を、強く生きる少年の物語である。
「ちょっと、たく兄!暗い部屋でアニメ見ながらぶつぶつ言わないの!!そんなんだからオタクは、軽蔑されるんだよ」
「おはよう、我が妹よ。だがな、人の部屋にノックもなしに入るのはあまり良い事ではない。次からは気を付けたまえ」
俺こと、
「いや、さっきから何度も何度もノックしてるし…」
「なぬっ!!そうか、それはすまなかった。して、何用だ?」
「もう朝だから、早く起きてご飯食べてよ」
「分かった。すぐに行こう」
睡魔を訴えてくる脳に無理やり命令し、だるい体を起こす。
少し立ち眩みがしたが原因が分かっているのでいるので気にしない。原因は一つしかない。
ズバリ、昨日『とある兄貴の
しかも、その兄貴は頭に十万三千個の妄言を記憶しているというチート人間。そんな兄貴と冴えない少年が悪から街を守る、というものだ。
情けない欠伸をしつつ、一階のリビングに降りる。
「ふぁぁぁ~優鈴葉、ご飯なに?」
我が家に両親はほとんどいないので、家事は妹がしている。
「普通のパンに、普通のジャム。それにコーンスープだよ」
「普通だな。まぁいいけど」
俺はどちらかといえば、米派だ。しかし、作ってくれている人に文句を言うわけにもいかないので黙って食す。
「ねぇたく兄、今日は学校行くの?」
「なんだよその質問。まるで、俺が学校行ってないみたいに聞こえるだろ」
「いや聞こえるも何も、行ってないじゃん」
「行ってる。留年しない程度にな」
「そういうのを、行ってないって世間体では言うの」
「さよか」
ふてくされたよう顔の妹。
(可愛いな…)
「たく兄は家で居るとき何してるの?」
「ギクッ」
「え、何その効果音…完全に隠し事してるじゃん。ていうか、効果音自分でつけるんだ…」
「そ、そこらの一般男子高校生がする事と大差ないぞぉ」
「それだけで既に怪しいから」
「そ、そんな事よりも!悪いが今日は、ロクでもない教師とアカデミックレコードを見る予定だ。銀髪少女は最高だな」
「えーいいなぁ。私もそれ見たいんだよね。今日はサボってたく兄と一緒に見ようかな…」
今の発言で、もしかしてと思った方もいるかもしれないが、妹も重度のオタクである。それはもう安芸〇也ばりのオタクだ。
「ふむ、いい心がけだ。アニメなら最終回放映後二十四時間以内、ラノベなら発売から三日以内、ゲームなら一週間以内にネタバレなしで情報を伝えれるのが、俺の師匠からのありがたいお言葉だ」
少し胸を張り、ドヤ顔して見せる。
それに対して優鈴葉は―
「なんだかなぁーだよねぇ」
「どこまでもフラットだな」
オタクでよかったと思える瞬間は多々ある。
そのなかでも格別に嬉しいのは、ネタをネタで返してもらえた時だ。通じ合った気持ちになり、なんとも言えない高揚感で胸がいっぱいになる。
その後は二人で大笑いし、おかしとジュースをアニメを肴に食っては飲んだ。
そして二人は盛大に学校をサボったのであった。
先ほど語ったことを訂正しよう。この物語は、オタクな兄妹がイチャイチャする話である。
多分。分かんないけど。
「たく兄…最後くらいはちゃんとしようよ…」
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