第42話 異世界での因縁
翌日、指定した場所にマリーと共にヒガシが現れた。
ダニエルや他の警備隊と共に護衛しながら、カルム支部の施設へ収監し、取り調べが早速行われることになった。メインは支部長のディディエだが、立会人兼書記としてマコトも同席する。
「さて、君の名前と年齢、職業を教えてもらえないか」
「はい、元勇者で今はワイバーンハンターをしているヒガシ・コーエンジ、二十五歳です」
「君の家を外から拝見させてもらった。内装や調度品からして、ハンターではあんな暮らしはできない。何か違法な仕事をしているね?」
「……」
ヒガシが黙りこんでしまったので、マコトが促す。
「黙っているなら嫌疑不十分で、釈放させようか? おうちに帰ったら怖いお兄さん達が迎えてくれて、そのまま海へ寒中水泳になると思うけど」
そう言った途端にビクッとして、ポツポツと語りだした。
「い、いや話す。話します! そうすれば元の世界へ帰してくれるのだよな? お前らの言う通りマフィアで麻薬を売っていたんだ」
「組織の名は? 本拠地はどこ?」
「組織の名は『カウルーン』、ボスは異世界人だ」
「ボスの名前は?」
「俺もフルネームは知らねえ。下っ端の売人は直接ボスに会うことはないからな」
「知ってる名前でいい、なんという奴だ? 異世界人なら召喚便覧を探せば出てくるはずだ」
「確か、リャンミーとかいう名前だったと思う」
「リャンミー?」
マコトがペンを止めてヒガシに迫る。
「もしかしたら、異世界でも日本人ではないだろ?」
「ああ、多分。先輩が話しているのを聞いたから」
「マコトさん、取調べは私が行います、落ち着いて」
「あ、ああ、すみません」
「それで、その『カウルーン』は何人くらいの組織だ? 売りさばいていたのは麻薬だけか?」
「俺は下っ端だから、規模まではわからない。十数人はいると思うけどな。俺が扱っていたのは覚せい剤だな」
「俺はハンター仲間から、銃を持っているのを見たと聞いたが」
「え?! バレていたのか。 ああ、組織からいくつかちょろまかして捌いてたんだ。薬だけでは遊ぶ金が足りなくなったからな」
恐らく、それが組織にバレて睨まれて追われる立場になったのだろう。よくある話だ。
「それで、薬は金持ちや娼婦に捌いていたとして、銃はどこへ売っていたんだ?」
「俺のは金持ちへ売っていた。狩りに使うと言ってたが、本当はどうだかな」
「組織は銃をどこへ売っていたのかわかるか?」
「俺もよくわからない。噂じゃ、隣国へ運ぶとか言ってたが」
なんだか、話が大きくなってきた。
マコトはざわりと嫌な仮説が浮かび上がってきた。麻薬によって貴族などの上流階級を中心に国が弱体化したところを、異世界の武器で武装した隣国が攻め入ってきたらあっという間に侵略される、組織は隣国の手先かもしれないし、単に稼げれば何でもいいのかもしれない。
「ディディエさん。話が大きくなってきた。早急に騎士団や軍にも入れないとならない」
マコトと同じ考えになってきたのだろう。ディディエの手が震えて動揺しているのがわかる。尋問できそうにないのでマコトが代わりに尋問をした。
「それで、銃や麻薬はどこから仕入れてたのだ? 異世界人なら元の世界へ戻っては仕入れていたのだろう? しかし、召喚石はほとんど回収しているはずだし、頻繁に使えない。下っ端でも何か知らないか?」
「あ、ああ、いけにえを使って魔力を回復させていると聞いた。俺も捕まったらいけにえにされるだろう。
あと、関係あるかわからないが、リャンミーは体の一部に召喚石を埋め込んでいるらしい」
「なんだって? そんなことができるのか?」
「わ、私は聞いたことがあります」
ディディエが震えながらも、マコトに説明を始めた。
「禁忌なのですが、体と魔石を同化させて埋め込むと魔力が上がると言われています。そのリャンミーとやらも、召喚石を埋めて異世界と行き来しやすくしたのでしょう」
「禁忌に禁忌を重ねて、沢山の犠牲の上に成り立っているのか。反吐が出る話だ。そのリャンミーのこと、他に知らないか?」
「あ、ああ、確か元の世界でも日本と中国を行き来していると聞いた。だから元の世界でもマフィアなのだろうな。なんで召喚されたのかわからないが」
それを聞いてマコトは机をバン!と叩いて立ち上がった。
「そいつ、
興奮のあまり、握りしめていたペンが折れて刺さっていたが、マコトはその痛みも忘れるくらい怒りに震えていた。
「智樹……! お前の仇が
~第四章・了~
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