第二章:脱出大作戦! フロムフォレスト(副題:葛藤)
042:一難去って、また朝が来る
「というわけで、今日からお世話になるテッサッス! 色々やらかしちゃったけど仲良くしてくれると助かるッス!」
お、おう。
お通夜の様な雰囲気のままよりは何倍もマシだが、君えっらいフレンドリーだね。
「おぉ。もう知っているみたいだけどトールだ。よろしく頼む」
でも正直助かったよ。特別にトール君ポイントを進呈しよう。
十点貯めれば何かいい事をこっそりとしてあげるよ。
……うん、なにか考えとくよ。覚えておけば。
「ウッス! 隊長やむっつりポニー共々よろしくッス!」
「おい、誰がむっつりポニーだ」
いや的確だと思うぞ。
君さっきからずっとずっとじーーーーーって俺の方睨んでんだもん。
もういっその事むっつりの称号受け入れて少しはこっちに歩み寄ってくれ。
「……ヴィレッタだ。しばらくの間世話になる」
しばらく。
しばらく。
……まぁ今はそれでいいや。
はいどうも。とりあえず出来るだけ仲良くしていこう。
なに、もう何日かこうして一緒に火を囲んで同じ物食べたり飲んだりしてれば慣れてくるさ。
色々裏に抱えている物があったとはいえ、ゲイリーとアシュリーも一応は仲良くやれてたわけだし。
うん、上っ面だけでも仲良くできるってのは大事だよ?
後々なにか起こす?
……また身体張って止めるかぁ。
大丈夫大丈夫、そのうちなんとかなるって俺は信じてる。
ゲイリーは、どうやらあっさり拘束された事を悔やんでいるみたいだけど、俺個人としてはアシュリーを信じ始めてたって事で高ポイントだよ。
うん、ゲイリーにもトール君ポイント。
で、テッサとヴィレッタのとりあえずの寝床なんだけど――
「アシュリーの所、三人入る?」
さすがにアオイもゲイリーも完全に無防備な寝ている所に入れるのは反対だろうし、ある意味で命の危険性がない自分なら……いや、でも男だしなぁ。
「さすがに無理よ。最低でも一人は別になるわね」
だよなぁ。
「ゲイリー、今日は俺の所で一緒に寝よ――うぉうっ?!」
ゲイリーさんや、なんで突然肩を跳ねさせた?
「あ、いや、空いた所に二人を泊めようと思ったんだけど……その、大丈夫?」
「ぁ……あぁ……その、あぁ、問題ない。大丈夫だ」
待て、本気で大丈夫か?
もうちょっと説得とかで揉めると思って、正直自分やアオイ、ゲイリーの三人がこの拠点、アシュリー達は当面の間は上流の拠点かその近くで生活するってスタイルに持っていこうと思っていたのだが……。
間を取るための探りで踏み込んだらOK出てしまったというか、そんな感じだ。
正直に言おう。失敗したと思っている。
いるのだが、今更提案するのもなんか違う。
それに、ゲイリーにも何か考えがあるのかもしれないし……。
(ちまちま探りいれて軌道修正する方向でいいか)
実際、今回のトラブルで最大の被害者と言っていいんだ。しばらく彼に肩入れした所で文句は出ないだろう。
……あぁ、でもアシュリーも出来るだけフォローじゃないけど、ゲイリーと話し合う場は作らないと。
新入り二人の事もある程度はちゃんと把握しないと悪いし……。あぁ、面倒な事になったなぁちくしょう。
……やっぱり、ちょっとアシュリーこき使っても許されるのでは?
ノーペナルティってわけにもいかんし……。
面倒くせぇ。泣ける。
「それじゃあ明日の朝も早いですし早い所寝ちゃいましょうよぉ♪ トールさんも今日は体力そうとう削っちゃっていますしぃ」
「賛成ッス! トール君、さっきから眠そうですし、明日に備えてゆっくりするッスよ!」
テッサちゃん、トール君ポインツ追加。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
夜明けと共に動くのはもはや完全に日課である。
まぁ、一番目が覚めるのが遅いのは俺なんだが。
血圧が低いのか、寝起きの瞬間は俺にとって一日の中で最悪の時間だ。
特に今日は――
「やっぱり寒いな……」
昨日斬られる前に服脱いどきゃよかった。
背中が思いっきり破れている上に、血がびっしりこびり付いて相当汚れてしまったのだ。
一応回復してから、例のタニシモドキの泥抜き用に作ったバケツに水貯めてばしゃばしゃ洗ってみたのだがそう簡単に落ちるわけがなく……。
出来るだけ落ち葉大量に被って寝たのだが寒い物は寒い。日が昇ってしばらくすればもうちょい落ちつくんだろうが……。とりあえず使ってなかったブレザーだけでも羽織っておこう。
ズボンもパンツも大分汚れているが、さすがにこっちはどうしようもない。
ズボンは紺色のスラックスだったため、そこまで目立つ訳ではないは……これまでとは違う匂いがこびり付いているなぁ。
正直、一緒にゲイリーがいてくれなかったらマジで凍えていたかも。
「ありがとな、ゲイリー」
ホント、パンツ一丁で血の臭いがする男抱きしめて寝てくれるとか本当にありがたいわ。
「ふぁ……ぁ……ん~~、ゲイリーがいてくれなかったら、今頃マジで死んでたかもしんない」
自己再生も一定以上の外傷にしか効果がないようだし、低体温症とかには役に立たんだろう。
あれ? すぐに対策打たないと俺、死ぬ?
「いや、役に立ててよかった。身体、大丈夫か?」
「ん……贅沢言えば、気温が上がるまでは落ち葉どっさり被って寝ていたいけど……んんぅ……」
ゲイリーってば、服来てるからっていうのもあるけど結構体温高い方なのか暖かくて、背中から抱きしめてくれたおかげで寝心地最高でした。
「うばあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁ……眠い。散歩も兼ねて飯取りいくか」
「あぁ、そうしよう。アオイが今火を起こしているから、ちょうどいい時間に戻ってこれるだろう」
ほむ。
「三人組は?」
「アシュリーともう一人、ヴィレッタとかいう女は水を組みに行っている。もう一人は、使えそうな木を探して来ると言っていたな」
「……言っていた?」
「一度こっちに様子を見に来ていたぞ。キチンと報告するあたり、あの金髪の女はこちらと上手くやっていこうとする意志を感じるな」
「おぉ」
こういっちゃなんだけど、あの子良い子だな。昨晩もそうだけど、個人的に好感度すごく高い。
ああいう明るい子が一人いるとすごく助かる。
アオイ? ちょっと経歴が……。
いや、テッサちゃんも一応どっこいどっこいのハズなんだけどね。
なんだろう、似ているようでタイプがちょっと違う。
それなりに取り繕えるけど、疑われても基本イイヤってタイプと、上手く取り繕えるタイプの違いか?
………………。
あれ? 後者の方がヤバイ?
「まぁいいや。ゲイリー、道中の護衛頼むわ」
「あぁ、任せてくれ」
すでにシェルターの外へと這い出て用意しているゲイリーの背中には、完成したばかりの弓と矢筒が背負われていた。
完全装備という奴だ。
「もう、二度と君の足は引っ張らないさ。トール」
…………。
あのさ。
昨日からずっとおんなじ事繰り返してるけど、大丈夫?
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