第7話

 あのまま結局のところ沙紀と合流する事無く家に帰って来てしまった。


 沙紀から心配したようにメールが来ていたがちょっと急用ができちゃってと誤魔化すので精一杯で、そんな彼女の様子から何か察したのか沙紀はそれ以上突っ込んで来なかったのが救いだった。


 明日はいつもの水曜日で彼と会う。


 一体どんなかおをしてあえば良いのだろう。


 今となっては自覚してしまった、この気持ち。でも届くでもないような、この気持ちはどこに行けば良いのだろう。


 どんなにな悩んでも朝は来てしまう。

 「絢そろそろ出るぞ〜まだ準備ができないのか?」

 悪気のない父親にと急かされ、重い腰を上げた絢だが進む足取りは変わらず重い。


 絢の思いを汲んだのか朝の通勤ラッシュに少しかぶり、学校に着いたのは何時もより少し遅かった。更には教室に向かう道も何時もの倍以上長く感じる。

 重い足を引きずるようにして教室に着いた頃には、もう皆が登校してくる時間まで余り時間がなくなっていた。


 来たはいいが扉に指を掛けたまま開けるかどうか悩んでしまう。


 ーーこのまま今日は来るのが遅くなったから、皆が来てしまう時間まで教室に入るのは止めておこうかな。


 そんな風に巡回してしまう絢の気配を感じたのか中から「園田?」と声が聞こえた。

 その声にピクっと手が震える。

 それでも動かない彼女を不思議に思ったのか、手をかけたままだった扉が内側から開かれた。


 目の前には「園田?」っと不思議そうに彼女を呼ぶ橋津が立っていた。

 彼の思わぬ登場に息を飲む。何時もなら返事するのに喉に何かがつっかえたかのように、返事が出来なかった。

 もし声を出したら何か一緒に出て来てしまいそうだった。


 彼を見る事が出来ずに俯いてしまう絢の頭に彼の視線が刺さっていた。

 なかなか顔が上げられないままも絢はとりあえずCDを取りだす。

 「あ、このCDありがとう。もう人来るよ」

 絢はそれだけ言ってさっさとだけ言って自分の席に着いたのだ。

 とてもじゃないけど、昨日の今日じゃ話せそうにない。

 絢の態度が違うのに驚いたのか、しばし固まってたような橋津も絢が席に座るのを見て自分の席に向かったようだった。



 絢は次の機会までには自分の気持ちとも向き合い、前のように話せるようになりたいと思った。


 沙紀ともお似合いだったのもあるけど、彼女はたぶん絢の気持ちに気づいているだろうから橋津とどうかなるとは限らないが橋津はどうだろうか?


 綺麗な上に明るくて華やかな沙紀を橋津が好きになるかもしれない。他の皆には見せないような柔らかい表情を沙紀に見せていたくらいだし、惹かれてしまうのだろう。


 ただ、もし2人がそうなったら私は果たして応援出来るのだろうか。




 朝のHPが終わっても1限目が始まっても机に伏せたまま顔を上げる事が出来なかった。


 ぎゅっと締め付けられる胸元を握りしめても、握りしめても痛みは逃げないままで。


 涙が出て来ないだけマシなのかもしれないのに、身体から出て行きたがっているが痛みが出口がないまま中から刺すように痛んだ。

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