32.桜の樹の下には死体が埋まっている
「目立つ色合いだな」
ピンク色の機体が、何故か正座で鎮座していた。
背には、大きな剣が一本。
「これは“死の花シリーズ”第一弾、“桜花”と呼ばれる機体です。このシリーズは、兵器マニアの方々からとても人気なんですよ」
「どういう機体なんだ?」
「良好な操作性や高レベルな機動性など多々ありますが、やっぱり一番はその潔い武装でしょうか。この機体は、背に背負った高周波ブレード一本以外の武装を一切搭載していません」
「ライフルくらい無いの」
「無いです。マニピュレーターにジェネレーターが連動していないのであっても撃てません」
「なんでそんな真似を……」
「現場からの評判は最悪だったそうですよ。歩く棺桶呼ばわりされていたとか」
「それはそうだろう」
「あ、でも、悪いところばかりでもありません。機体構造が極限まで簡略化されて、殴り合っても壊れないほどの堅牢性を手に入れました」
「ロボットで殴り合わないだろ」
「いえいえ。銀河の長い歴史では、そういう事態も何度も確認されています」
「……殴り合ったの」
「いえ。この機体の大半は、戦場の中心で飽和射撃を受けて爆散しましたが」
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