24.sins

広間に鎮座したロボットの背部には、見慣れないカートリッジが連なっていた。

カートリッジ式の動力エネルギーなのか、あるいは冷却剤か何かだろうか?

「“sins”の特徴は、外観から一目見て分かる背中の動力カートリッジです。この機体は、『人間の生命エネルギー』を動力源にしていました」

「生命エネルギーって?」

「そのままの意味です。人が生み出す熱、感情、体液に至るまでをエネルギーに変換する特異なシステムが搭載されていました。特に感情の起伏に激しくエネルギーに溢れる十代の男女は有用な動力として扱われたそうです。平均的な駆動時間は、『カートリッジ』一つにつき一時間」

「じゃあ、あれの中身は」

「はい。カートリッジは簡易な生命維持カプセルを兼ねており、意識がある状態の人間をそのまま搭載していました。使用済みになった……内蔵していた人間が死亡したカートリッジは、薬莢のように自動的に機体から排出されます」

「恐ろしいな……」

「戦場の与える強いストレスは『電源』の感情の起伏を激しくし、この機体は想定を上回る戦果を挙げました。本機は終戦までに、記録されているだけで同型の機体が30、カートリッジは1200ほどが生産されています」

「最後は?」

「戦争は消耗戦にもつれ込み、カートリッジを使い果たしたこれらの機体群はパイロットを動力にしながら戦闘を続行、帰還した機体は無かったとのことです。この機体は、半壊状態でデブリに混じって宇宙を漂っていたものを本館のスタッフが修復したものになります。背部のカートリッジはデータから外観を再現しただけのレプリカですが」

ロボットの足元、背部のカートリッジと同じものが一つ置かれていた。

少女がカートリッジについていたパネルを操作すると、ゆっくりとそれが開いていく。

円柱状の棺桶だった。

中には確かに、人が一人ぎりぎり入れる程度のスペースが空いている。

「入ってみますか?記念撮影も受け付けてますよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る