12.ロールシャッハ

画質の荒い、どうも戦場のものらしい映像がモニターに流れていた。

映像の真ん中には、モノトーンのロボットが立っている。

「こちらは、安全処理を施した映像記録のみが残されています」

「安全処理?」

「はい。“ロールシャッハ”は、視認されることで効果を発揮する兵器です。こちらの映像は処理済みなので問題ありませんが、本来は映像記録でも効果を発揮する代物です。大変貴重なものですので、ゆっくりとご覧ください」

映像の中のロボットのモノトーンが、溶けた……ように見えた。

水性の絵の具が水に濡れた時のように黒色部分が白い装甲に溶けだし、混ざり合わずにうねうねと流動し始める。

「この状態の“ロールシャッハ”を見た人間は一種の催眠状態に陥り、その個人の『最も見たくないもの』――トラウマを強制的に想起させられます。この兵器は戦場の中心で絶大な威力を発揮し、多量のPTSDを発症させました」

映像がぶつん、と途切れ、また最初から流れ始める。

「この白黒の模様の中に、ある者は自分のせいで犠牲になった戦友を、ある者は自らの空爆で黒焦げになった小児を、ある者は射殺した敵兵の死骸の山を、ある者は――」

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