□1日目 予報
何百万年も前、現在の人類の祖先はアフリカに誕生した。彼らは数が増えるにつれて次第に大陸の外側へと分散し、それぞれ独自の生活を送り、独自の文化を持った。このため、もともと一つの集団だった人類の中に外見や思想にさまざまな違いが出てきた。ある一族は北欧に行き、寒冷な気候から色素が薄くなっていった。またある一族はアジアを生活の地とし、独自の宗教を生み出した。
その中に、どこにも住みつかずに世界中を転々として生きる一族がいた。彼らは決して一つの場所に留まらず、ある時は他の一族のところに宿を借りたが、たいていは厳しい野宿の生活だった。
そんな生活をしているうちに、彼らは自分たちには他が持たないある能力があるということに気づいた。
雨を降らせる。植物を育てる。地面を平らにして歩きやすいようにする。
最初はそういう単純な力だった。しかし、鍛練を重ねるうちに、彼らの能力のバリエーションはだんだん増えていき、応用も効くようになっていった。
上空の気温を操れば、氷を降らせたり、雷を落とすこともできる。植物を素早く育てて自在に操ることができる。地面を隆起させて敵に攻撃することができる-。
力の幅が広がるにつれて、その内容は攻撃性を増していった。
力を手に入れた者はそれだけでは満足できない。彼らもその例にもれず、能力を駆使して他の族に戦いを挑むようになった。結果はもちろん、百戦全勝。もともと定住地を持たなかった彼らは、どんどん支配する地域を増やしていく。勝てば勝つほど欲望は膨れ上がり、能力もそれを裏切らず、彼らはついに世界最大の大陸の半分を制覇するまでになった。
どこまでも続く大陸に飽きた彼らは大陸の外、海に浮かぶ島国に目をつけた。それは小さな国だったが、豊かな金・銀と高度な技術があり、とても繁栄していた。しかし武力はさほど評判になっておらず、彼らはその国くらいはすぐに落ちると踏んでいた。
そして。
その国の力を軽く見ていた彼らは足元をすくわれた。
その国はとても団結力があり、国中でまとまって彼らに対抗してきた。油断していた彼らは反撃できず、老人から赤子まで、一族のおよそ半分が亡くなった。
その国の人達はとても心が広かった。戦いに破れたことで住む場所を奪われた生き残った者たちに、その国にとどまって暮らすよう勧めた。生き残った者たちはそれに感謝し、その国の隅に家を建てた。その周辺に暮らしていた人々は彼らを受け入れた。
彼らは戦いでの敗北を教訓にし、その力を皆のために使うようになった。寒いときには火を灯して暖をとった。日照りが続いたら雨を降らせた。台風が来たら暴風雨を抑えた。
助け合いの生活が続き、数十年も経つと、周囲の人々は彼らの出自のことを忘れていった。しかし彼らは決して戦いのことを忘れず、子孫にもずっと伝えていった。
その後、彼らはその能力から、人々に"
時代が進むにつれて、"守人"の一族も他の人々との混血が進んでいった。血が薄まるたびに能力も少しずつ失われていき、現在の"守人"の力はかなり制限されている。
* * *
「はあ〜・・・・・・!」
自分の部屋に戻った深夜は思いっきりベッドにダイブした。
「どうしよう・・・。これはきっと、大変な問題なのに。今代だけで解決しないといけないなんて」
つぶやいて、起き上がった。
「電話・・・、」
とりあえず美波に電話しようと思って、スマホを手にとった。と、
ルルルルル〜♪
タイミングよく美波から電話がきた。
「もしもし、美波? どうだった、お父さん」
『何にも言ってくれなかった。もう自分は"水守"じゃないんだからって。深夜は?』
やっぱり、とため息をつく。
「こっちも。そんな、これは今代だけで解決できる問題じゃない気がするんだけどなぁ・・・」
『ほんとだよ。ルールにこだわってる場合じゃない気がする。直感だけど・・・』
美波は声を曇らせた。
と、そのときだった。
「深夜! ちょっと降りてきてニュース見て! 早く!」
暁音の焦った声が聞こえた。
「ごめん、母さんが呼んでる。一旦切るよ」
『わかった。じゃ、またね』
通話を切る。暁音があれほど慌てた声を出すのは珍しい。何があったのだろうか。
急いで階段を降りると、暁音がテレビに釘付けになっていた。
『-繰り返しお伝えします。気象庁によると、今日を含めて一週間後の10月9日月曜日、地球にこれまで知られていなかった惑星「アグノスト」が衝突し、このまま地球にいれば人類は滅亡するだろうとのことです』
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