第31話 ロリコンじゃないです!夫です!

はいどうも!今日もこんにちわ!ナユタです!

ルルイエから無事帰った俺達はいつもの日常に戻っていた。


ネムトは夜になるころには良妻モードからパジャマモードに戻ってましたとさ。星辰が揃わなくなったんだね!仕方ないね!


それと俺達が家から出かけている間に「ガグ建設」の方たちが家を作り変えていたらしく戻ってきたころには洗面所だったところは大きなお風呂場に改築されておりました。ニャルが手配してくれたらしい。


「あいつら腕いっぱいあっから作業速いんだよ。家建てるくらいなら多分2日くらいで終わるんじゃないか?」


とのことです。

ガグさん方ありがとうございました。



◆◆◆◆◆



さて俺は今、朝風呂に入ろうとしている。

せっかく風呂ができたんだからいいじゃん。

朝食もほぼできたし、みんなが起きる時間にもまだ余裕がある。

風呂好きな俺は空いた時間を有効活動するのだ。ふははは。


心の中ではしゃぎながら風呂場を開ける。


「…あー心があったまりますねぇ………あっナユタさんおはy『ガッ』

いたたたたぁ!待って顔が!顔が潰れます!潰れます!」

「なんで!当たり前のように!風呂に入ってんだ!お前はぁ!」


俺の一番風呂には血大好き象の神によって台無しにされましたとさ。


◆◆◆◆◆


いろいろわちゃわちゃした後に俺とチャウグナーが一緒に風呂に入って寛いでいた。

尚、チャウグナーに至っては緩い表情をしながら差し出している俺の左腕をカジカジしている。いつもの朝ドリンク(血)である。


「……ちうちう」

「ヤクルトみたいな飲み方やめい。前はビールみたいに飲んでたろ」

「それはあれです!食事用の時です!これは…そう!モーニングブラッドですから!」

「コーヒーか!」


などと騒いでいる俺達。

すると風呂場の扉を開けて銀髪の女性が入ってくる。


「朝風呂!よし!お風呂用ゆで卵よし!頭の上用タオルよし!突撃!」


そう言ったニャル(銀髪女)は勢いよく走った後、濡れたタイルで脚を滑らせて側転のような回転をしつつ浴槽に飛び込んでくる。

…そうはならんやろ。


『ザッパァーン』と大きな音を立てながら飛び込んでくるニャル。

一応、ルルイエには劣るがうちの風呂もこれでもかというくらい大きい。

飛び込んできたニャルが俺やチャウグナーに当たるということは無かったが…水飛沫はやばかった。


「おい…ニャル…」

「何しているんですかぁ…」


ビシャビシャになったままの俺達はそのままの状態でニャルを睨む。


「……ごめん…」


しょんぼりしているニャルを睨んでいるとさらにお風呂に誰かが入ってきた。それは…


「旦那様ー…朝風呂ー」

「……ふぁ……ん…一緒に…朝お風呂…はいるの…」

「入浴、開始」


眠そうにまぶたをこするアサトとネムト、そして浮き輪、ゴーグル、酸素ボンベ、ウェットスーツを着たベルだった。それどこにあったの?


「おはよアサト、ネムト、ベル……あーベル、お風呂に入るときはマナー違反だからその装備は外せ」

「了解、、マスター」


こうして結局、全員で入ることになったお風呂の中で俺達は横一列に並んで肩まで浸かる。

※不動要塞ツァトグアは不在です。


全員が幸せそうにゆっくりしているこの光景はいつか写真に撮るのもいいかもしれないな。


「いい?みんな、百年数えるまでしっかりお風呂に浸かるんだよ」

「やめーや。単位を間違えるな」


ニャル(銀髪女)の冗談にみんなで笑いながら俺達は朝風呂を続ける。


今朝の我が家も平和です。





◆◆◆◆◆



朝ごはんを終えて俺達はバラバラにしたいことをしていた。

ニャルはプラモ製作…だったがクトゥグアが来たので今はプラモが炎上している。憐れな。


ベルは俺の頭にヘッドホンとしてついている。

最近は相手のファッションにあわせて形を作ることを覚えたようです。


でうちの妻たちは俺の膝の上に頭を置いている。

俗にいう膝枕。左にアサト、右にネムトである。


その状態の二柱の首筋を優しくさする。猫とかにやる感じで。

二柱とも気持ちよさそうにしながら目を細める。


「……ん…」

「…んんー」


うなりながら二柱とも首に手を挟んだり離したりを繰り返す。

甘えたいお年頃かな?


そんな感じでかわいい妻たちと楽しくじゃれていると…


『ピンポーン』


という音が鳴り響く。客だな…行くか―。

妻たちをいったん降ろして俺は玄関へと向かう。

んで玄関扉まで行って、


「はーい、どちら様ですかー」


と呼びかけてみる。…が、返事はない。

……んー誰だろ?


そう思い俺は玄関の扉を開けるとそこにいたのは…、

銀髪のワンピースを着た女の子だった。

その髪は銀髪ではあるがベルのような白銀ではなく少し緑がかったメタリックエメラルドとでもいうような不思議な色合いだった。

……また神様とかかな?


そんなことを考えていた俺に翠銀色の髪の女の子が問いかけてくる。


「…あんたがナユタ?」

「……そうだけど?」

「…そう…あんたが…」


そう言った女の子はなぜか手をぷるぷると震わせながらこちらを睨む。

……あれ?怒ってね?

そう思っていた俺は急に膨れ上がった魔力を感じる。

集まっているのは彼女の拳。

あれ…やばくね?


「死ね!脆弱なる人間が!」

「ちょっまっ…」


いきなりやばい魔力でできた拳を放ってきた彼女に慌てて対応する俺。


よくわからんが激おこなのはわかったので全力で防御にまわる。

障壁を俺の前に100個ぐらい置いて防ぐがそのダメージで障壁の93枚が消し飛ぶ。…あと玄関も消し飛ぶ。……OMG


「ちょっ!?何すんだ!?」

「黙れ人間…お前が私のお姉ちゃんを攫って捕らえていることはわかっている。シャン達に聞いたからな」


何の勘違いかは知らないが誘拐犯扱いです。はい。

しかも情報の提供元があの駄目蟲シャンどもか…あいつら今度会ったら容赦しねぇ…絶対しねぇ。


「いやいや!俺知らないよお前の姉なんて!ほんとだって!」

「黙れ!自我を持たないお姉ちゃんをここで捕らえて自分の目的に利用しようとしてるんだろうが…そうはさせない」

「誤解だ!」


駄目だ…この人(?)話を聞かないタイプだ。

そもそもお姉ちゃんって誰やねん。


そんなこんなで玄関で防御に徹していることしばし。

流石にこの騒ぎに気が付いたリビング組がこちらにやってくる。


「おー派手にやってるわねー」

「ニャル!見てないで助けてくれ!何か知らんがこいつに誘拐犯扱いされてんだよ…自分の姉を攫ったって」

「へー…ってあれ?あいつ…」


そう呟いたニャル(銀髪女)が攻撃の隙間を塗って彼女に近寄る。

そしてじっと見た後に「…あー…なるほど…」と言って魔術を発動。

俺に攻撃している彼女を鎖で縛る。

そして縛った彼女にいつも通りのゆるーい口調で話し出す。


「なーにしてんのよあなたは…」

「……いつの間に」

「普通に近寄ったじゃん!なんで私はいないみたいな扱いなのよ!」

「…お前…まさか…ニャルラトホテプか!」

「はいはい、いつもあなたの後ろに這い寄る混沌ニャル様ですよっと。

てかさっきの質問に答えなさい…こんなところでなんで大暴れしてるのよ

…ヨグソトース」


二人はどうやら知り合いのようだ。

そしてニャルのおかげで彼女が誰だかようやくわかる。

ヨグソトース…外宇宙の副神だったっけ?

なんで俺はそんなのに命狙われてるんだか。


「ほら答えろ~」


促されたヨグソトースは俺のほうを「キッ」とにらむとそのまま興奮したように喋りだす。


「決まってるでしょ!お姉ちゃんを攫って捕まえているこの男を殺してお姉ちゃんを取り戻すのよ!」

「……はぁ…なーに言ってんのよ。別に攫われてないわよ」

「攫われてなきゃお姉ちゃんが誰かについていくわけないでしょ!

あんたお姉ちゃんの世話係として生み出されたのになんでこいつと一緒にいんのよ!」

「確かに私はアザトースの世話係として生み出されたけど…別に護衛ってわけじゃないしな―。ていうかあんなの手出したらあんた以外じゃ誰も相手にならないから護衛いらないし…」


二人が激しい言い争いになっている間に流れた単語で気づく。

あれ?もしかしてヨグソトースの姉って…。


そんなことを考えていたとき、リビングからゆっくりと歩いてきていたアサトがこちらに来る。


「……何かあったの?…ナユタ」

「…いやちょっと殺されそうにな。大丈夫大丈夫」


俺に近寄ってきたアサトを見たヨグソトースが突如驚きながら指をさす。


「…えっ?…あれって?…えっ?」

「…やっぱ知らなかったのね…あれが今のアザトース。あの子はもう自我があるのよ。だから別に攫われてなんてないのよ」

    

彼女が混乱して何とか自体は収まった。

やっぱり…彼女の姉って…アサトだったのか。


◆◆◆◆◆


その後、何とか落ち着いたヨグソトースに事情を説明。

現在テーブルで向かい合ってお茶をしています。


「……なるほど。なんでお姉ちゃんがここに居るのかは分かった。

でも人間とお姉ちゃんが一緒にいるべきじゃない。

人間は私たちのことを身勝手に振り回すだけなんだから」

「……まぁ否定はできないわね。ナユタみたいな人間はレアだし」

「……それって褒めてる?それとも変人って言ってる?」

「両方かしら」


ジト目で見ている俺とみられているニャルで火花を散らしていると、

立ち上がったヨグソトースがアサトに近寄って手を差し出す。


「ほらお姉ちゃん帰ろ?ここは人間の住処だよ」


そう言われたアサトはその手をジーと見た後、今度はヨグソトースをジーっと見つめてそして一言。


「……誰?…」

「………えっ」


その言葉を言われたヨグソトースは若干涙目になる。

その様子を見たニャルは「…あちゃー…」と頭を抱える。


「アサト、彼女はヨグソトースって言ってあなたの妹なのよ」

「…妹…知らない」


特に深い意味のない言葉の暴力がヨグソトースに突き刺さる。

…やめてあげて…ちょっと泣いてるよあの神。


「そりゃそうよ。あなた自我が芽生える前からいた妹の存在なんて知ってるわけないでしょ?」


二人が話している間に俺は崩れ落ちているヨグソトースに近寄る。


「……なによ?」

「…いや…いきなりだから信用できないかもしれないけど…

俺はアサト…アザトースのことを本当に大事な家族だと思っている。

信じてくれないか?」


俺の真剣な呼びかけを聞いたヨグソトースは少し考える素振りをした後に言う。


「人間は信用できない。……だからしばらくこの家に住む。

それでお前を見張って、もしお前がよからぬことにお姉ちゃんを利用しようとしていたならお前を殺してお姉ちゃんを連れて帰ってやる」

「…今はそれでいいよ。

じゃあ…ひとまずよろしくヨグソトース」


俺はよろしくの意味で手を出し握手を促すが…。


「ガルルルッ!」


警戒心マックスの彼女は狼のように威嚇するのだった。

これは前途多難かもな…。


「……ナユタ…その私の妹も…一緒に住むの?…」

「ああ、そういうことになった。仲良くな」

「……ん…わかった…」


そう返事をしたアサトはヨグソトースに近寄る。


「……よろしく…妹…」

「…えっとよろしくね。お姉ちゃん」


ちょっと恥ずかしそうだがアサトとしっかりと握手をするヨグソトース。

姉妹仲は案外大丈夫かもな。


「……あと…ナユタは小さい体のほうが(撫でやすいから)好き…だからここに住むなら子供の姿のほうがいい…」


…あの…妻よ?…なにを言っておられる?

誰もそんなこと言ってはござらんよ?


その言葉を聞いたヨグソトースがワンピースを着たツインテールの幼女の姿になってこちらをジト目で見てくる。


「……このロリコンが…」


ちゃうねん!!!俺はそういう趣味じゃないねん!!!誤解やねん!!!



……こうして新しくこの家に住人が加わった。

名前はヨグソトース。俺をロリコンとして殺そうとしている妻の妹だ。

………解せぬ。



今日も我が家は平和です…尚、玄関は犠牲になりました。

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