第516話 開催! マナシロ・セーヤ握手会!!

 理由というのは他でもない。

 さっきサーシャは『《神滅覇王しんめつはおう》まん』は特に若い女の子たちに人気だって言っていたからな。


 つまり握手会に来るのがうら若き乙女たちであることは、これは確定的に明らかなのだ!


 であれば!

 たくさんの女の子と握手しては、ちやほやきゃっきゃされるパラダイスのようなイベントになることはこれまた必至!


 そんな夢のような素敵イベントにあるじとして参加することを、断る選択肢なぞあろうものか!


 しかも参加するとサーシャは大感謝してくれるし、ウヅキたちはみんなして褒めてくれるときたもんだ。


 いやー楽しみだわー、握手会マジ楽しみだわー。


 あ、気に入った可愛い子にはスペシャルサービスでハグも付けちゃおっかなー?

 こっそり住んでるところも聞いちゃったり?


 いやー、サーシャが呼びに来るのがいまかいまかと待ち遠しいよ。


 あ、そうだ。

 万が一にも使い忘れないように、笑顔で会話を弾ませる握手会系S級チート『神対応』を今からもう発動しておこうっと。


 俺、本気で頑張っちゃうぞ~~、にゅふふふっ。


 …………

 ……


 こうして待望の「トラヴィス商会プレゼンツ! 『《神滅覇王しんめつはおう》マナシロ・セーヤまん』購入特別企画、マナシロ・セーヤ握手会」が始まった。


 握手会の開催場所はサクライ家から歩いて数分のところにある、『《神滅覇王しんめつはおう》まん』製造工場と直結した販売施設の入り口脇だ。

 そこに簡素なテントが設営され、仕切りも兼ねた机を前に俺は握手を始めた――んだけど。



【CASE:1:元気なガキンチョ】


「やべぇ、《神滅覇王しんめつはおう》マナシロ・セーヤに握手してもらっちまったよ! やべー、まじやべー! 帰ってとーちゃんかーちゃん、村のみんなに自慢しないと! あざーっす!」


「あ、うん、お父さんとお母さんと村の皆さんによろしくね」



【CASE:2:お使いに来たよくできたちびっこ兄弟】


「「セーヤさま、がんばってくださいね。おーえんしています!」」


「おー、ありがとうちびっこたち。俺も頑張るから、お前らも頑張れよー」



【CASE:3:真面目そうな青年】


「あなたが《神滅覇王しんめつはおう》マナシロ・セーヤ? かわら版やまんじゅうの絵とはあまり似てないような……?」


「あ、はい。よく言われます。でも俺が本物なんです、すみません」



【CASE:4:離れた村から、たまたままんじゅうを買いに来た農夫】


「オラ、大公様をこんな近くで見たのは初めてだべ。しかも偉そうでなくていい感じの大公様だべ。お話したことはオラの一生の思い出だべ、なんまんだぶなんまんだぶ……」


「喜んでくれるのは嬉しいけど、俺にお祈りされても多分効果はないんじゃないかなぁ……」



【CASE:5:身重の妻のためにまんじゅうを買いに来たディリンデン市民】


「僕、近々子供が生まれるんです。男の子なら大公様にあやかって名前はセーヤと名付けるつもりなんです」


「それはよかったね、おめでとう。でも子供の名前は別のにしたほうがいいと思うんだ」


「と、いいますと?」


「今日、同じような話をいくつも聞いたからさ。このままだとこの辺りの子供はセーヤだらけになるよ……」


「そうだったのですね……では失礼ながら『まなしー』と名付けさせていただきます」


「!?」

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