第482話 降臨する黄金の覇王

「何かないのか、俺にできる手立ては何かないのかよ――?」


 なにか、なにか――!

 俺にできること、なにか――!!


 今できることを必死に考え続けている内に――ふと。

 俺は、俺の中に《神滅覇王しんめつはおう》が――果てなき果てを見続けた一人の男の存在があることに気がついた。


 チート学園に来て以来、全くその存在を感じられなくなっていた《神滅覇王しんめつはおう》。


「……そうか。意識世界が壊れて現実世界に戻りはじめたから、それで俺本来の力じゃなくて使えなかった――あの異世界固有の力だった《神滅覇王しんめつはおう》も、俺に戻ってきたんだ」


 最強の《神滅覇王しんめつはおう》の力が、今俺の手の中にある――。


「――《神滅覇王しんめつはおう》なら、《神滅覇王しんめつはおう》ならなんとかできるんじゃ――!」


 もちろん《神滅覇王しんめつはおう》は戦闘特化の――戦うためのチートだ。

 冷静に考えれば、それで消えゆくケンセーをどうこうできるはずもない。

 きっと俺は何もできないだろう。


「――それでも1%でも0.1%でも、0.000001%でも可能性があるのなら! このまま何もしないでなんて、俺はそんな風にはいられないんだよ!」


 意味のない、馬鹿なことをしたなって後から好きなだけ笑えばいいんだ。

 だけど――!


「やらないで後から悔いることだけは! やらなかったことを後悔することだけは――! 俺は絶対にしたくないんだよ!」


 不可能を可能にしてみせるのが《神滅覇王しんめつはおう》という最強のSS級チートなんだろ――!


 決意に満ちる俺の心の中に、果てなき未来さきを見続けた一人の男の物語――《愚者の聖句》が浮かび上がった。


 《神滅覇王しんめつはおう》の力を顕現させるためのその黄金の祝詞のりとを、俺は高らかにうたいはじめる――!


「『は、神の御座みざ簒奪おかすもの――』」


 《愚者の聖句》の第一節を唱えた瞬間、俺の中に黄金の力があふれだした――!


「『は、竜のみかどこうべを垂らせしもの――』」


 力の源は一つの神器だ。

 まずは顕現せよ――!

 《神滅覇王しんめつはおう》が誇る最強の『固有神聖』《天照アマテラス》!


「『は、夜天やてんまたたく星をとすもの――』」


 それは世界をあまねく照らす黄金光のみなもとであり――!


「『は、神をも滅す覇の道をきて――』」


 生み出されしは、立ちふさがる数多あまたの困難を薙ぎはらい、ねじ伏せてきた最強不敗の絶対神話――!


「『ただの一度も振り向かず、愚かなまでに、更なる未来さき強欲ほっし続ける――』」


 《天照アマテラス》が力強く脈動をはじめ、俺の中に膨大な黄金の力が満ち満ちてゆく――!


の者の行く手をはばむ者あらず――』」


 《神滅覇王しんめつはおう》、俺に力を貸してくれ――!

 大事な女の子を助ける力を――!


「『ただ覇をもって道なき千里みちを駆け続ける――』」


 ケンセーを失いたくないんだ!

 そんな俺の激情とも言える感情に共鳴するように、崩壊する世界の隅々すみずみまでを黄金の光が明々あかあかと照らし出してゆく――!


「『その気高き道程みちのりをして、畏敬を込めて人は呼ぶ――』


 激流のような猛烈な黄金の輝きと共に――!


「『その名、たっとき、《神滅覇王しんめつはおう》――!』」


 神をも滅する最強の覇王が、崩壊する世界へと降臨した――!!

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