第464話 問題そこなの!?

「そんでもって10000倍された『20世紀最後の暴君』の力も、ある程度見せてもらったからな。進化して『真なる龍眼』となった今、これだけ見せられたらもう十分だ。勝てると踏んで慢心したなケンセー。色々と手の内を明かしすぎだぜ?」


「ぬぐぐぐ――っ!」


「それでだ。かかってこなくていいのか、ケンセー。今のケンセーは悠長に話している余裕なんて無いんじゃないかって、俺は思うんだけどな?」


「な……何の話よ」

 ケンセーの目が一瞬、ほんのわずか泳ぎかけて踏みとどまった。

 だが『真なる龍眼』の前ではそれだけで完全にアウトなんだよ。


「すっとぼける必要はないさ。『真なる龍眼』のおかげで10000倍ブーストがケンセーの身体に、かなり大きな負荷を与えてるってことは把握済みだ。そろそろ制御できる限界が近いよな。もって後10分ってところか?」


「――っ!」

 俺のその一言でケンセーの顔色が一気に変わった。


「敢えて余裕ぶって振舞うことで身体にかかる負荷の大きさを隠そうとしてるみたいだけど――、悪いが『真なる龍眼』はちょっとやそっとじゃ欺けない」


 ケンセーの中では、既に力の流れが乱れ始めていた。

 そりゃあそうだ。

 ケンセーという1つの器に、10000個分のチートエネルギーを無理やり詰め込んでいるのだから。


「……きから……っかり……」

「え? なんだって?」


 ケンセーの小声に反射的に問いかけたことで、俺の中に戻ってきたディスペル系S級チート『え? なんだって?』が発動した。

 因果を断絶してもう一度このやり取りを繰り返させる――まぁ今のはただ単に聞こえなかったから聞き返しただけだから無駄撃ちしただけだけど。


「さっきから『龍眼』、リューガンって! セーヤくんはいつも他の女の子のことばっかり言うんだ――!」

「問題そこなの!? いやあの、それはさすがにうがった見方のような……」


 邪推されてしまうのは、ひとえに俺が積み上げてきた女の子ときゃっきゃうふふしまくってきた過去の行いのせいとは言え、しかし不満のポイントはそこじゃないんじゃないかな……かな?


「違うもん! そこだけが問題なんだもんっ! 私はセーヤくんの一番になりたいだけなのにっ! 他のなんにもいらないのにっ! なのに! なのに――っ!」


「ケンセー……ごめんな。気持ちは嬉しいけど、やっぱり俺はそれには応えられない」

 俺は現実世界に戻らないといけないんだ。


「謝らないでよね……迷惑かけてるセーヤくんに謝られちゃったら、私すごく惨めじゃん……ミジンコじゃん……。でもそっか……そういうことなら、全部わかっちゃってるなら。いいよセーヤくん。確かにもう身体が限界に近いからね。ここでケリをつけてげあげる」


 その言葉で。

 戦っている時でさえ、どこかあどけなさを感じさせたケンセーのくりくりお目目めめが、ギラリとした獰猛どうもうな狩人の目へと変わりはじめる――!


 徒手空拳武器なしのルールでは最強と名高い戦闘系A級チート『20世紀最後の暴君』の真の力が今、目覚めようとしていた――!

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