第450話 マザコンをこじらせたおっぱいマイスター
「ねぇセーヤくん、お話はもうこれくらいでいいんじゃないかな? これ以上の情報は引き出せないと思うよ? 私も教えても問題ないことは全部話しちゃったし? 私、できればセーヤくんには嘘をつきたくないんだよね」
「……やれやれ、俺の意図もするっとまるっとお見通しかよ」
防御と回避に徹しながら、コミュニケーションによってケンセーの強さの源と、可能ならば弱点を探ろうという俺の意図は、ケンセーに完全に気付かれていたらしい。
「それはもう、私とセーヤくんは同居する幼馴染な従兄妹ですから」
「あくまでそういう設定な?」
俺は爺ちゃんと婆ちゃんが死んで以来ずっと天涯孤独だっつーの。
「でもでも私が勝ったらその『設定』が本当になるんだよ? セーヤくんがずっと欲しかった『家族』ができるんだよ?」
「別に俺は『家族』が欲しいなんて思っちゃ――」
「ううん、セーヤくんは『家族』が欲しいって思ってるよ」
「……根拠でもあるのかよ?」
「だってセーヤくんが異常に巨乳にこだわるのって、お母さんがいなくてお母さんのおっぱいを知らないからでしょ?」
「な、なななにを急に言ってるのかな君は!?」
「やーい! せーやくんのマザコン!」
「俺はマザコンじゃねーよ!」
と思う……んだけど……?
実のところ母親がいないからマザーにコンプレックスする気持ちはよくわからないんだよな。
「あはは、隠さなくたっていいよ。男の子は本能的におっぱいが好きでマザコンなんだから。セーヤくんはお母さんがいなかったせいで、特にそこがこじれにこじれちゃって、おっぱい大好き巨乳マイスターになっちゃっただけなんだし」
「マザコンがこじれたとか言うなや……」
悲しくなるだろ。
「もう、悲しそうな顔しないでよ? 褒めてるんだよ?」
「褒めてねーよ!」
「むしろどこまでもおっぱいにこだわってるところとか、純真で可愛いと思うし」
「おっぱいが好きなことで、女の子から純真と言われる日が来るとは思わなかったな……」
すごい理論すぎて、万が一にでも学会で発表したら白い目で見られることは間違いない。
それもこれも、ケンセーが俺をどこまでも好いてくれている前提があるからこその話なわけで。
その気持ちは純粋に嬉しいんだけど――、
「だからもうちょっと待っててね、私のセーヤくん。すぐに屈服させてあげるから。そしたらこれからも毎朝、私がセーヤくんを起こしにいってあげるからねっ!」
――やっぱちょっとヤンデレ入ってるんだよなぁ。
うなりを上げて迫るケンセーの強烈なミドルキックを、
「魅力的だが、その提案は遠慮しておくっ!」
俺はバックステップで際どい所で回避した――がしかし、背中が体育館の壁に軽く触れてしまったのが感じられる。
まずいな、壁際に追い詰められたぞ……!
「はい、セーヤくん。これで逃げ場はなくなったね」
「ははっ、まったく。強いじゃないかケンセー。普段のケンセーとは大違いだ」
「今の私は言ってみれば《全チートフル装備》だからね。セーヤくんがやったのとはちょっと違うけど。さてさてセーヤくんは、『剣聖』だけで一体どうやって《全チートフル装備》を攻略するのかな?」
ついに壁際に追い込まれ、必死に突破口を見出そうとしている俺とは正反対に、ケンセーは余裕
そんなケンセーに、
「ケンセー、一つだけ言っておくぞ」
「えっと、なにかな?」
「《全チートフル装備》して他のチートたちの力を使うのは良いにしても、間違ってもチートっ子たちを傷つけたり壊したりはしないでくれよ? いくらケンセーでもその時、俺は絶対にケンセーを許さないからな。絶対にな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます