第420話 全チートっ子モニタリング第2ラウンド

 こうして2年S組の全チートっ子モニタリング第2ラウンドが幕を上げた。


「いつもバナナの皮を踏んずけてしりもちついてるんだし、わたし的にはS級チート『なぜかそこにあるバナナの皮』で間違いないんじゃないかなーって思うけど」


「いや、わざと俺たちの目につく場所でアピールして、誤認させようとしているのかもしれない。万全を期すためにも周囲にそれとなく聞き込みを行って、俺たちが見てないところでどんな感じなのかもチェックしておこう」


 しかし前回と同じことを同じようにやってはなんの意味も意味もないわけで、よりシビアな作戦をより慎重を期しておこなう必要があった。


「じゃあ役割分担だね。私が聞き込みをするから、セーヤくんは対象に直接接触して確認してね」

「オッケー、了解だ。健闘を祈る」


******


「はわっ!」

 可愛い声とともに、ナゼカソコニアルバナナノカワちゃんがいきなり唐突にすってんころりんした。


 それとなく横目で観察していた俺は、即座に助けにはいった。


「あぶない――!」

 ナゼカソコニアルバナナノカワちゃんの下に、しゃがみ込みながらスッと身体を滑り込ませると、俺はその身体をぐっと引き寄せて事なきを得たのだった。


「ううっ……また急にバナナの皮がありました……すみません、私ってばいつもバナナの皮を踏んでこけてしまって……」


「いやまぁそういうチートだからね……」

 こうやって見るとほんとに危ないチートである。


「それとありがとうございました、助けていただいて」

 言ってナゼカソコニアルバナナノカワちゃんがポッと頬を染めながら、俺の腕の中で恥ずかしそうに身をよじった。


 ――というのもだ。

 今の俺たちの状態ときたら、地面に座った俺がナゼカソコニアルバナナノカワちゃんをぎゅっと抱きすくめてしまっていたからだ。


「わ、悪い、すぐに離すから」

 そう言って抱きしめる力を少し緩めながら一緒に立ち上がろうとしたんだけれど、


「いえ、ぜんぜん嫌とかじゃないですから」

「え、あ、そう……?」


 ナゼカソコニアルバナナノカワちゃんってば俺の身体に抱き着くようにして、体重を預けながら身を寄せてくるのだ。

 くるのだよ!


 普段はチート学園の制服の下に隠されているたわわなおっぱいがむぎゅ、むぎゅむぎゅっとそれはもう柔らかく俺の身体に押し当てられるのだよ!!


「えへへ、セーヤくんのにおい……」

 とかなんとか言って鼻をすりつけてくるんだよ……!!!


「しばらくこのままでいよっか」

「うん……」


 とかなっちゃうでしょ!?

 当然でしょ!?


 …………

 ……


「完全に本物だったよ。間違いない」


 俺はケンセーに、ナゼカソコニアルバナナノカワちゃんが間違いなく本物のチートであることを報告をしていた。

 だっていうのに、


「ふん! どーだか!」

 めっちゃプリプリしているケンセー。


「なにそんな怒ってんだよ」

「怒ってなんかいませんー!」


「怒ってるじゃないか」

「怒ってなんかいませんー! セーヤくんが女の子なら見境なく抱き合うようなえろえろ大魔神だからって、怒ったりなんてしませんー!」


「うっ、それはその……なりゆきというか。こけたら危ないから助けるだろ、人として」


「そーですねー、助けたあと5分も10分も抱き合うのも人としてとーぜんだもんねー!」

「うっ、それはその……」


「私が聞き込み調査やってる間に、セーヤくんだけお楽しみしてても私、なんとも思わないし!!」


 はい。

 ケンセーは俺がよろしくやってる間、別行動でナゼカソコニアルバナナノカワちゃんの普段の様子を聞き込みしていたのでした。


「ごめん、ついほら、いい雰囲気ふいんきになっちゃって……」

「ほんとセーヤくんはどうしようもないなぁ……はぁ、まぁいいよ。じゃあ今度は私から報告ね」


「お、その様子だと聞き込みは上手くいったみたいだな」


 ケンセーからは深刻そうな感じは全く受けなかった。

 聞き込みが上手くいったのは間違いないだろう。


「えっとね、本当にいつでもどこでもバナナの皮で滑ってこけてるみたい。だからみんないつでも助けられるように注意してるみたいだよ」


「ってことは今度こそ完全に白ってことで間違いなしだな」

「うん、文句なしにラブコメ系S級チート『なぜかそこにあるバナナの皮』だよ」


「よし、出だしは好調だ。この調子で今度こそ、誰が犯人なのかを突きとめよう」

「おー!」

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